(前回の記事はこちら

前回は生産性を上げるアプローチの一つ、「同じ時間で大きい成果を出す」ために、シンプル、スピード、サプライズの順に顧客、相手起点で提供価値を生み出していくという内容でした。今回から『イクボスのマネジメント心得』と題し、3回に分けてお話していきたいと思います。ちなみにこの心得は①オーダーメイドなマネジメント、②チームワークの向上、③ボス自身の覚悟の3つとなります。今日は①の「オーダーメイドなマネジメント」についてフォーカスしてお話します。

『モチベーションダウンさせるプロ』という上司

世の中には本当に多くの『モチベーションダウンさせるプロ』という上司が存在します。もしかすると競合企業からのスパイなのではなかろうかというくらい、いい仕事をします(涙)。

モチベーションダウンさせるプロにはいろんな行動があると思います。いくつか代表例を挙げてみると、「自己中心的、私利私欲」「言ってることとやっていることが違う」、「自分の過去の成功体験を押し付ける(時代が違う)」「指示が細かすぎる(マイクロマネジメント)」、「部下は厳しくしなければ育たないと思っている」「自分の好き嫌いで判断する」などなど、きっとアンケート取ったら、膨大な量のコメントが来ることだと思います。少し脱線すると、360度をサーベイやったら、一発アウトのレッドカードが出るような上司があまりにも多いのは、日本の組織構造の問題だとも思っています。終身雇用、年功序列が強い組織であればあるほど、一度上げた役職を落とすことが出来ませんが、それではモチベーション高い組織なんて作れませんし、外に飛び出していける優秀な人材から辞めてしまうのも当然の事だと思っています。

話を元に戻すと、「モチベーションダウンさせるプロ」の上司の共通特徴として、自分起点というものがあります。前回の提供価値のところでもお話しましたが、顧客や相手を起点にマーケティング発想で考えるのではなく、自己都合を押し付ける形でのアプローチになることが多いです。

メンバーの状況が分かってないとマネジメントが出来ない時代

この連載でも既に書かせて頂いておりますが、どの会社も組織構成が大きく変革してきています。シンプルに言うと、昔はみんな新卒で入社して、一律に上(偉くなること)を目指すというゲームのルールだったとすると、今はキャリアのゴールは一つではありません。転職、独立する人もいれば、マネジメントタイプじゃなくて、スペシャリストタイプの方も多くいます。子供を産んで復職して、仕事は好きだけど長く働けない、働きたくないって人もいます。それも、今は子育てに時間を割きたいけれど、5年後はバリバリやっていきたいと考えているかもしれないし、その逆があるかもしれない。さらに言うと、今日は旦那さんが保育園のお迎え行ってくれるから夜まで集中して働きたいけど、明日は早く帰りたいということもあります。

何が言いたいかというと、メンバーの状況が分かってないとマネジメントが出来ない時代になってきたという事です。これからの時代、メンバーはいろいろな制約を抱えています。同じ雇用形態、性別、年齢、職種、経験だったとしても、抱える制約が違えば、理想の働き方やモチベーションの源泉も違ってきます。その人たちに対して、一律トップダウンの指示、命令ではなかなか付いてこないでしょう。メンバーがどんな人で、今どういう状態かを常に把握していないといいマネジメントが出来ません。

メンバーの過去、現在、未来を知る

つまり、メンバーのことを知ることがいいマネジメントのスタート地点になるのです。それも過去、現在、未来で知ることがベストです。この点において、リクルートでは昔から取り組んでいます。半期ごとにある上司と部下のミッションすり合わせのミーティングでも必ず「今の仕事でどういうことしたい?」、「自分のキャリアどうしていきたい?」といったWILLについて、必ず上司部下で話しますし、新しいグループになった際はグループ全員で、生い立ちから話すような人生プレゼンや自分の喜怒哀楽ポイントなども共有します。このように「メンバーを知る」ということが出来れば、メンバーごとにフィットした指導、要望、コミュニケーションが出来てくるのではないかと思います。

また、日常においては、私は雑談が大事だと思っています。ヒューレット・パッカードの創業者の一人、デイブ・パッカードが実践した「マネジメント・バイ・ウォーキング・アラウンド(MBWA)」という考え方が私は好きで意図的にやってきましたが、雑談がいいマネジメントのきっかけになることは多いです。雑談を目的が無く、非生産的なものだと思う方も多いのですが、私はメンバーの仕事の状況を把握するのにも、人間関係を作るうえでも、相手に配慮するためにもとても大事だと思います。あと、意外に大事なのが、メンバーのことを理解して、意思を持って「邪魔をしない」ということ。これもメンバーのことが分かってないと出来ません。

まとめ

今回はイクボスのマネジメント心得①として、「オーダーメイドなマネジメント」についてお話しました。オーダーメイドで対応するためには、メンバー個々人のことがわかっていなければいけませんし、そのためにメンバーの過去現在未来を知る努力が必要です。逆に言えば、それが分かって、支援していけば、きっとモチベーション高く、パフォーマンスを発揮してくれるのではないでしょうか。

記事制作:
株式会社ミライフ 代表取締役社長 佐藤 雄佑

佐藤 雄佑
新卒でベルシステム24入社。マーケティングの仕事に従事。そこで「やっぱり最後は人」だと思いリクルートへ。リクルートでは営業、支社長、人事GM、エグゼクティブコンサルタントなどを歴任。MVP、MVG(グループ表彰)などの表彰多数受賞。リクルートホールディングス体制構築時(2012)には人事GMとして、リクルートグループ(現リクルートキャリア)の分社・統合のプロジェクトを推進。子供が生まれた時には、半年間の男性育休を取得し、主夫を経験。2016年、株式会社ミライフ設立。

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。