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この連載も今回で最終回。最後は、私がこれからの時代の会社のあるべき姿として掲げている「性格のいい会社」について書いていきたいと思います。今年「いい人材が集まる性格のいい会社」という本を出させて頂きましたが、今回は逆に「性格の悪い会社」についてお話しさせて頂きます。

性格のいい会社とは

「性格のいい会社」という言葉から想像する会社はどんな会社でしょうか?もしかしたら、働きやすい会社をイメージされてるのではないかと思います。私の性格のいい会社の定義は「人に対する考え方(人材ポリシー)があって、働きがいと多様な働き方を提供している会社」となります。ですので、働きやすいという表現も大外れではないのですが、優しいというよりはむしろ厳しいと思っています。昨今の働き方改革の文脈ともつながる部分なのですが、多様な働き方を選べることや、裁量を持って自由に仕事することは素晴らしいと思う反面、より結果で見られるという点で厳しいです。本来は当たり前だとは思うのですが、今までの「働く」という考え方を根本から変えていかなければなりません。

 

性格のいい会社は働きがいと多様な働き方を提供している会社と整理しました。さらに分解すると、働きがいは「ビジョン・成長・仲間」で出来ていて、多様な働き方というのは「マネジメント・生産性・柔軟性・個別性」という構成になっています。これらを働く社員起点で考えていく会社が性格のいい会社です。

 

※性格のいい会社とは

性格の悪い会社とは

では、「性格の悪い会社」とはどんな会社でしょうか?ブラック企業と呼ばれる、過重労働やパワハラなどが横行している会社をイメージする人が多いかもしれません。ただ、私の定義ではブラック企業は「性格」の悪い会社ではなく、普通に悪い会社です。私が「性格の悪い会社」と呼んでいる企業は性格のいい会社の反対ですので、働きがいが無くて、多様な働き方が出来ない会社を指します。

 

では、そのような性格の悪い会社っていうのは具体的にどんな会社なのかということですが、私は伝統的な大企業こそ、性格が悪いのではないかと思っています(もちろん全ての大企業ではありません)。いわゆる就職人気ランキングで上位に来るような大企業です。働きがいの観点でいえば、中小・ベンチャー企業に比べて、裁量が少なく、若い時に修羅場経験が積めないので、成長という観点で物足りないと感じる人も多いですし、多様な働き方という観点では、年功序列やトップダウンのマネジメントが多かったり、社員が多いので、個別性、柔軟性というのはあまり許してもらえないことが多いです。

これからの時代の安定とは「どこに行っても通用すること」

100歳まで生きるまさにLIFE SHIFTの時代だと考えると、人生長いので、しなやかに変化していかなければいけません。その時に、一番の安定というのはどこに行っても通用すること、つまり変化対応力を身につけることだと思っています。大手企業にいることを安定していると思う人も多いかもしれませんが、私は逆だと思っていて、大手企業というのは「在籍」だけは安定しているかもしれないですが、自分の意志や生活とは関係なく、転勤するかもしれないですし、全然やりたくない部署に異動になるかもしれない。そして、外に出る力がない人は会社にしがみつくしかない、会社の言うこと聞くしかない。それって精神的には全然安定してないと思います。変化対応力がついて、どこでもやっていける人は会社に残る、外に出るという選択肢(選ぶ権利)があります。結局、この選択肢を持てることが一番の安定なんじゃないかと思っています。

そして、イクボスにはそのような変化対応力のある人材を育てることにコミットしてもらいたいですし、そのような育成ができるイクボスのメンバーは働きがいを感じながら、モチベーション高く活躍してくれると思っています。

まとめ

全12回のイクボス連載いかがでしたでしょうか。私はこのイクボスというマネジメントスタイルが、これからの理想の上司のあり方としてスタンダードになっていくと思っています。逆に言うと、旧来型の一律トップダウンのマネジメントスタイルではもう多様なメンバーには対応できず、メンバーもついてこなくなるでしょう。そして、イクボスがいる会社は、自律自走できるメンバーが育ち、働き方改革も進んでいきます。そのような会社にはいい人材が集まり、残り、活躍してくれることで、会社は成長していきます。日本にそんなイクボスがもっともっと増えて、それが当たり前になり、「イクボス」なんて言葉を無くしていければと思っています。

専門家:佐藤 雄佑

新卒でベルシステム24入社。マーケティングの仕事に従事。そこで「やっぱり最後は人」だと思いリクルートへ。リクルートでは営業、支社長、人事GM、エグゼクティブコンサルタントなどを歴任。MVP、MVG(グループ表彰)などの表彰多数受賞。リクルートホールディングス体制構築時(2012)には人事GMとして、リクルートグループ(現リクルートキャリア)の分社・統合のプロジェクトを推進。子供が生まれた時には、半年間の男性育休を取得し、主夫を経験。2016年、株式会社ミライフ設立。