これまでの連載(第1回~第11回)を通して、中小企業が今こそ取り組むべき課題について、様々な視点からご紹介してきました。今回は、連載の最後です。これまでの内容を簡単に振り返りながら、企業が成長していくために必要となる「3つの力」について取り上げていきます。

中小企業の「強み」を活かすために必要なこと=経営陣の意識改革

中小企業は大企業と比べて「経営資源」に乏しい、という弱みがあります。しかし、限られた経営資源の中であっても、無駄を省き、工夫を凝らした戦略に沿って迅速に行動できれば、大企業よりもはるかに効率よく短期間で、大きな成果を生み出すことが可能です。中小企業が持つ3つの「強み」について覚えていますか?

中小企業の3つの強みとは…
①意思決定のスピード ②変化対応力 ③ニッチな市場への進出
でした。この3つは、大企業には真似できない強みとなります。このような中小企業にしかない強みを活かすカギを握っているのが「経営陣の意識」です。経営陣の意識が変われば、現場が変わり、企業全体が変化できる、ということでもあります。
では、経営陣はどのような意識を持つべきだったでしょうか?

●過去の成功体験や常識を疑い、新たな可能性を考える創造環境を整えること
●組織の枠を取り払って「知識」と「第三者の目」を持つこと
●目標を分かりやすく伝え、実行プロセスを企業全体で共有すること

このような意識を常に持つことで、これからの変化の激しい時代でも、成長し続ける企業を育てることができます。
「現状理解」「戦略設計」「リーダーシップ」という要素はもちろん必要ですが、それに加えて求められているのは、変化を受け入れる「柔軟性」です。会社全体(会社の現状・事業内容・従業員の様子など)を隅々まで把握し、常に新しい情報を取り入れながら、会社を成長させるために試行錯誤できる経営者であれば、確実に成功を収めることができます。

そうなのです!結局のところ、中小企業が変わるチャンスは「経営者自身」が握っていたのです。

「会社を成長させたい!」そう思うのであれば、変化を恐れてはいけません。問題点を洗い出し、結果に結びつく新しいアプローチを試さなくては、現状を変えることはできないからです。では、ここで「変化」に必要となる3つの力について整理していきましょう。

変化に必要な力①:必要な情報を的確に見定め、課題の本質にフォーカスできる力

数十年前と大きく変わったこと。それはインターネットの登場です。インターネットの普及により、膨大な量の情報が、誰でも簡単に手に入れられるようになりました。ネット検索やネットショッピングが当たり前の購買行動となった今、消費者の目に留まる商品・サービスとはどのようなものなのか…「売る側」はこのことを理解した上で情報を発信しなくてはいけません。

企業側が伝えたい商品・サービスの価値が、消費者にとっての価値になるとは限らないのです。これは「ブランディング構築プロセス」でもご紹介した点ですが、顧客の心を動かすのは、そこ(そのブランド)にしかないストーリーです。消費者にとっての価値とは、共感・驚き・発見、が引き出されるようなモノ・コトなのです。消費者の行動を観察・分析し(ペルソナ設定・リアル行動ターゲティング)、顧客目線での仕掛けづくり(カスタマージャーニーマップ)を意識することで、「買う理由・選ぶ理由=顧客にとっての価値」を提供することができます。

顧客に選ばれるブランドを育てるために必要なのが、情報の優先順位を的確に把握する能力です。つまり、必要な情報だけを選び出せる、「フォーカス力」と言えばわかりやすいでしょうか。集めた情報の中から本当に必要なものだけを選び出せること。効率良く、効果的なマーケティングを実現させるためにも、フォーカス力は必須の能力と言えます。

変化に必要な力②:常識にとらわれず、新たなコンセプトを生み出せる力

せっかく計画を立ててもなかなか実行できない…あるいは目標が達成できない…。こんな経験は誰にでもありますよね…。しかし、企業にとっては、「計画が実行できない」「目標が達成できない」というような状況は命取りです。新たな企画や新たなアイディアは、それ自体では曖昧なままです。

ゼロから全て決めて行かなくてはならないので「前例がない」という大きな壁が立ちはだかるのです。こんな時、企業にとっては重大な問題が発生します。それは、今までのやり方が通用しない、ということです。例えば、何らかの斬新な提案があったときに、それが成功する可能性を一切考慮せずに「今までのやり方と大きく違うことはダメだ!」と結論を出してしまった経験はありませんか?

しかし、「これまでのやり方」にこだわっているうちは、大きな変化・成長は期待できません。今、中小企業に求められているのは、変化を受け入れること、広い視野を持つこと、新たな気づきに敏感であること、なのです。新しいことに取り組む際には新しい地図となる「コンセプト」が必要です。新しい取り組みに対する「評価方法」も含めた全体的な見直しが必要です。新たな定義を創り出すつもりで、ゼロから物事を生み出さなくてはいけません。

新たな計画・アイディアを実行するために必要なことを整理し、戦略をまとめ、目標達成のために「するべき行動=行動指針」を示すことができれば、企業全体が同じ目標のために進んでいけますよね。ゴールまでの正確な地図(=コンセプト)を描ける「コンセプトメイク力」は、極めて重要な能力といえるのです。

変化に必要な力③:物事の本質を捉えて、自分の頭で考える力

様々な情報が溢れている現代において、自分で考えることを忘れてしまう人は、実は大勢います。しかし、誰かの真似、どこかと同じ方法、では新しい価値を創造することはできません。新たな可能性に気づき、他と違う「価値」を生み出すためには、自らの頭で考えることが必要です。

例えば、様々な情報の中から共通点を見つけたり、全く別の切り口でまとめたり…というように、情報に独自の視点を組み込むことにはオリジナリティーが求められます。物事の本質を捉える能力が必要だからです。このオリジナリティーこそが、新たな価値を生み出すきっかけになります。繰り返し「考える」トレーニングを続けることで、本質を捉えながら、説得力ある情報としてまとめ、自分の言葉で発信する能力を育てられます。

近年では「コンテンツマーケテイング」という言葉がよく聞かれるようになりましたね。価値ある良質なコンテンツを制作し、それを発信することは、企業のブランド価値も高めることに繋がります。情報を発信する場所(オウンドメディア)を整えることも重要なポイントになります。大切なのは、情報に流されず自分の頭で考えること。すなわち「思考力」を磨くことなのです。

今、必要なのは、「編集力」を持ったプロデューサー型人材

ここまでに紹介した「変化に必要な3つの力」ですが、その全てに共通している能力にお気づきでしょうか?
必要な情報を選び出す力(フォーカス力)、新たなコンセプトを生み出す力(コンセプトメイク力)、自分の頭で考える力(思考力)。これら全てに共通しているのは、「編集力」です。

マーケティングにおいてもブランディングにおいても、情報を整理し分かりやすくまとめ、新たな切り口を生み出せる「編集力」は、これからの時代、非常に重要な能力です。それ故に、企業を成長させるためには、編集力を兼ね備えた「ビジネスプロデューサー」としての役割を担える人材が必要になります。

プロデューサー型人材とは、物事を曖昧にではなく、「つなぐ」「まとめる」「組み合わせる」クリエイティブな発想で、様々な価値観を総括的にまとめあげ、企業の旗振り役としてゴールまで導く人材です。そのために、顧客を理解し、企業の現状を把握し、新たな事業の目標達成のために必要な「仕組みづくり」を行うのです。

今、経営陣が取り組まなくてはいけないこと。それは、プロデューサーとなり得る人材を育成することにあります。
新たな価値を創造できる人材を育て、変化を受け入れる環境を整えること。
持続的にこれらができる企業は、優秀な人材が自然と集まり、限られた人材リソースであったとしても、個人のスキルと会社の成長を重ね合わせ、想定以上のシナジーを生み出す可能性を引き寄せることができます!

常識に捉われずに新たな価値を創り出し、あなたの企業を大きく成長させてください!
これまで、全12回の連載にお付き合いいただき誠にありがとうございました。

専門家:山口 貴光
大手アパレル企業4社で、ブランドの新規立ち上げ、百貨店のフロアプロデュース、
リブランディングなど、主に変革型の事業を中心に、プロジェクトの責任者を歴任。
独立後、株式会社レバレッジラボ- 研究所を設立。
http://leveragelabo.com
マーケティング・ブランディングを基軸とした実践型のメソッドで、
戦略立案から実働支援・事業プロデュースなど、これまで数十件の支援実績を持つ。

「個人が活躍する時代」を支援するビジネス創発メディア
『Leverage-Share』を事業化
個人から大企業まで、その道のプロが集う「アライアンスネットワーク」を構築している。
http://leverage-share.com

ノマドジャーナル編集部
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