前回は、「コンテンツマーケティング」の必要性について取り上げました。効果的なコンテンツを企画するために意識するべき重要なポイントは次の2点です。

●「顧客主語」でコンテンツを生み出すこと
●顧客の「共感・納得」を引き出し「満足・信頼」に繋げること

価値あるコンテンツを企画し、顧客に効果的にアプローチするためには「オウンドメディア(自社メディア)」の活用が欠かせません。自社メディアがあれば、広告宣伝費を削減し、顧客に魅力を感じてもらえるような様々なアプローチをすることも可能です。

今回は、「コンテンツ」の内容について掘り下げていきますが、その前に中小企業が抱える現実問題に触れながら、目指すべき道筋を明確に示していきたいと思います。

中小企業の”80%”がネット集客に満足していないという現実

国内の中小企業400万社のうち、自社ホームページを所有している企業は半数と言われています。そのうち、自社でECサイトの運営、あるいはブログで情報発信している企業に絞ると、その割合は20%を切るそうです。

つまり80%以上の中小企業は、未だ会社案内程度のホームページしか持たず、自社ビジネスにWebを活用して、集客・認知させる仕組みを持てていないということになります。

中小企業白書 2013 第4章 情報技術の活用|中小企業白書
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H25/PDF/0EHakusyo_part2_chap1_web.pdf

上記引用から、その理由や背景は以下3点の課題に集約されます。

【中小企業がWeb集客に本腰を入れられない理由】

1)ネット集客のやり方がわからない
2)様々なツールを使いこなすノウハウ・知見がない
3)ネット集客を始めるには多くの予算がなければならない

その中で、一番ハードルが高いと感じている課題は「ネット集客のやり方がそもそもわからない」という理由。具体的には「社内に詳しい人材がいない」「本業が忙しく担当者が不在」「ネットの言葉がわからない」などが要因となり、新たな取り組みに躊躇している様子がうかがえます。

確かに、中小企業は、大手に比べ「人・物・金・情報」といった資源に制限はあります。しかし、第1章でお伝えしたように中小企業だからこその「強み」が存在するのも確かです。

機会をチャンスに変えるには、今までの常識を疑い、新たな可能性を探り、実際、行動に移していかなければ、成果はもちろん、経験やノウハウといった資産を蓄積させることもできません。自社のリソースだけで難しいのであれば、その分野のプロとアライアンスを組むなど、方法はいくらでもあります。それでは、「想い」のままで終わらせず、カタチにするためには、どうしたらいいのでしょうか?

視野を広げた発想と行動が、次のステージを切り開くきっかけとなりえます。是非、肝に銘じて、読み進めて頂ければ幸いです。

コンテンツマーケティングの活用事例

発信したコンテンツは消去しない限り、全てサイト上に蓄積され、その企業にとっての「資産」となります。ネット上に残り続ける魅力的な数々の情報は、さらなる集客をもたらしてくれますので、「常連顧客化」も期待できます。自社サイトへのアクセス数を増やせるようなコンテンツを制作・発信することは、企業の認知度を高め、ブランディングにも役立つのです。

ブログ記事、動画、メルマガ配信、ステップメール配信などは、役立つコンテンツの代表的なものです。ブログ記事や動画はSNSとの相性が良いことが最大のメリットです。コンテンツの内容次第では、ブログ記事や動画を閲覧したユーザーがSNS上でシェアしてくれやすいという特徴があります。

個人の注目から生まれる拡散(バズ)は、口コミ効果という新たな副産物をもたらしてくれます。誰もがネットを気軽に利用できる現代社会においては、「口コミ」の効果はあなどれません。一度拡散されれば、長期的に注目され、サイトへのさらなるアクセス効果が得られます。ユーザーの目に留まるコンテンツは、ほぼ自動的に拡散されていく力を秘めています。

ある企業は、コンテンツマーケティングの初期費用として投入した金額を8か月目で回収することができました。成功の秘訣はどこにあったのでしょうか?答えは「ブログ記事作成」です。ブログ発信を継続していくうちに自社サイトへのアクセス数が増え、売り上げも次第にアップしました。検索エンジンからの集客はその後も継続的に成功しており、売上は右肩上がりになっているようです。

このように価値あるブログ記事は、サイトに掲載された途端に「資産」となって蓄積されます。その記事が良質なものであればあるほど、継続的に読まれるコンテンツとなり、継続的な集客、そしてブランドとしての価値を高めてくれるのです。

量より質で攻める!コンテンツマーケティングで成功するための秘訣

コンテンツマーケティングで成功を収めるために、まずは「ターゲットの具体化(ペルソナ設定)」、「コンテンツマッピング」、「キーワード選定」、「コンテンツ作成計画」の4つをバランス良く組み立てていく必要があります。

どのようなユーザーに向けて発信するかを、具体的に描きながら(ペルソナ設定)、コンテンツの中身を具体的に図示し、担当者間で情報を共有します(コンテンツマッピング)。そして、商品・サービスに到達するまでにユーザーが検索ボックスの中に入れるであろうキーワードを抽出し(キーワード選定)、コンテンツマップを見ながら、それぞれのコンテンツの優先順位や時間配分を決めておく(コンテンツ作成計画)。そうすることで、スムーズなサイト運用が可能になります。

魅力的なコンテンツを効果的に発信していくための計画を練っておくこと。この事前の企画段階こそが、その後の成果を左右する最も重要なポイントです。

コンテンツマーケティングが正しく実施できれば、結果は必ず返ってきます。即効性を期待するのではなく長期的な目線で取り組んでいくことが必須です。コンテンツマーケティングの効果を体感するためには、企画と共にコンテンツの発信を継続し続けることで、サイト上の評価が高まり、流入が増えてきます。その為、コンテンツがサイトに上がり、ユーザーに検索され、ターゲット層に認知されるまで、じっとその時を待つ忍耐力が求められます。

コンテンツマーケティングはエントリーシート作成と似ている!

ここまでは、コンテンツマーケティングがもたらす効果についてお伝えしてきました。しかし、「とりあえず作ればよい」というものではありません。大切なのは魅力的なコンテンツを作ることです。

ここで、就職活動を例に考えてみましょう。最近では、エントリーシートの書き方を指導するサービスや、必勝法などを配信しているサイトも見かけます。エントリーシートとは、応募する企業に対して自分をPRする、自分自身の「広告」または「キャッチコピー」と捉えることができます。以下の2つの志望動機を比べてみてください。どちらが魅力的な応募者でしょうか?(※ここでは、「アパレル関係で、若者をターゲットにした商品を展開しており、今後は海外への進出も検討している企業」へ提出するための志望動機、と想定してください。)

*応募者A*

「私はこれまでに貴社の商品をたくさん購入してきました。貴社の製品は、若者だけでなく年配の方々にも楽しんでいただける商品だと思います。その素晴らしさを自らが中心となって伝えていきたい、誰よりも強い気持ちを持っています。」

*応募者B*

「私が貴社を志望する理由は、日本生まれのファッションの素晴らしさを世界中に発信したいと思っているからです。身に着けるだけで特別な気持ちになれる貴社の製品は、海外でも確実に支持を得られると感じます。入社後は、語学力を活かして、世界中のお客様に貴社の製品を楽しんでいただきたいです。」

応募者Aも応募者Bも、志望する企業への熱意は伝わってきます。
しかし、ここで例に出した企業が「若者をターゲット」にしており、「海外進出も検討している」ことを改めて確認したうえで二つの志望動機を比べてみてください。
企業が欲しい人材のポイントを押さえて効果的にまとめることができたのは、圧倒的に応募者Bですね。

コンテンツもこれと同じです。顧客が「選びたい」と思えるような魅力的なものではなくてはいけません。
コンテンツの内容は、ターゲットに向けてのアピールポイントが間違っていないかどうかも含めて、より心に届くような魅力的な情報にしなくては意味がありません。量より質。これがポイントです。

経営資源が乏しくても武器は手にできる!

冒頭で説明した、中小企業が打つべき手を再度まとめてお伝えします。
中小企業の弱みのひとつに「経営資源」の乏しさが挙げられます。潤沢な資金がある大手企業とは異なり、限られた人材・予算の中で物事を進めて行かなくてはいけません。

これだけインターネットが普及している時代ですから、中小企業であってもほとんどの企業が自社ホームページを持っていますよね。しかし、そのホームページを活用して「集客」にまで結び付けられているか…となると、全体の2割弱しかこの成功例には当てはまりません。顧客に効果的に届くような「コンテンツ」をサイトに揃えられていないことが、集客に結び付かない一番の原因です。

商品・サービスを売り出す側としては必須ともいえる「販売・予約・ブログ発信」といった基本のコンテンツさえ、自社サイトに揃えられていないのが事実です。ネット集客に躊躇してしまう原因は、やはり「資金」「人材」「知識」の不足と言えます。

やり方が分からない、できる人もいない、そこまで予算はかけられない…。「ない」がありすぎて、やる気も削がれてしまうのも頷けます。しかし、そうだとしても、中小企業こそ、コンテンツマーケティングを理解して、Web集客に取り組んでいただきたいのです。

大手企業のようにお金をかける必要はありません。コンテンツマーケティングはコツさえ掴めれば「低コスト」での実施が可能です。良質なコンテンツと、それを発信する場所さえ整っていれば、すぐにでも実施できます。

発信する場所にあたるのがオウンドメディア(自社メディア)です。まずは、ブログ記事作成から検討してみてはいかがでしょうか?コンテンツマーケティングを始めて、大手企業にも負けない武器を手に入れましょう!

次回は、「メディアプランニング」がキーワードです。少ない予算で最大の効果をもたらす方法や、魅力的なコンテンツを発信していく方法について学んでいきましょう。

専門家:山口 貴光
大手アパレル企業4社で、ブランドの新規立ち上げ、百貨店のフロアプロデュース、
リブランディングなど、主に変革型の事業を中心に、プロジェクトの責任者を歴任。
独立後、株式会社レバレッジラボ- 研究所を設立。
http://leveragelabo.com
マーケティング・ブランディングを基軸とした実践型のメソッドで、
戦略立案から実働支援・事業プロデュースなど、これまで数十件の支援実績を持つ。

「個人が活躍する時代」を支援するビジネス創発メディア
『Leverage-Share』を事業化
個人から大企業まで、その道のプロが集う「アライアンスネットワーク」を構築している。
http://leverage-share.com

ノマドジャーナル編集部
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