日本の総人口が減少する中、2016年の平均就業者数は6440万人で、前年に比べ64万人増加しており、そのうち女性が47万人も増えています。もちろんこの中には、夫婦ともにバリバリ働く「共働き夫婦」もたくさんいるはずです。

 

前回に続き、働く妻を持つ旦那さまたちの座談会の様子をお届けします。ケンカをしないコツから、奥様の好きなところまで、赤裸々に語っていただきました。

※前回の記事はこちら
https://nomad-journal.jp/archives/2444

 

【ご参加いただいた4名の旦那さま】

・Kさん(40代)
飲食店を運営する会社で、デザイナーとして勤務。2年前から公務員の奥様がフルタイム勤務へ復帰したのを機に、毎週火曜日のみ出社する「在宅ワーカー兼主夫」へ。お子さんは小学生が2人。

 

・Iさん(30代)
生命保険会社に勤務し、法人・個人向けの営業兼ライフプランニングを行っている。奥様はHR業界。今年の春に第一子を出産したのを機に、Iさんは1ヵ月の育児休業を取得。

 

・Mさん(20代)
IT企業にて、採用やブランディングを行う。奥様は外資系で人事を担当。

 

・Sさん(30代)
地方自治体向けのコンサルティング会社に勤務。3月から神戸で働き始めたため、月に二度だけ東京に帰る週末婚の状態。奥様はコンサルタントとして、東京の監査法人に勤務。
※神戸在住のためskypeで参加

ケンカをしないコツは、できるだけポジティブな言葉を使うこと

Q:共働きをしていると、一緒に過ごす時間をつくるのが難しいと思います。夫婦のすれ違いを防ぐために、何か工夫されていますか?

 

Mさん:

相手に対して不満に思うことがあった場合、感情を溜めるのではなく、その都度、伝えるようにしています。でも感情の伝え方って難しいですよね。たとえば、爆発したときにはどうしても怒り方が鋭くなってしまったり。でも、私がこんな態度を取ってしまうと、今度は奥さんがビックリして何も言えなくなってしまうんですよね。

 

Iさん:

感情の伝え方という点では、私は「あ、ケンカになりそう」って思ったときに、妻の手を握ってスキンシップを取りながら話しかけるようにしています。物理的な距離があると、心の面でも距離を取ってしまうと思うんですよね。

 

Sさん:

私は、妻とケンカをしたことがないんです。それは常に、「議論しよう」ということを心がけているからなのかな、と思っています。

 

Mさん:

大人ですねー。

 

Sさん:

あとは、相手が自分にとって嬉しいことをしてくれたら、嬉しかったときちんと言うようにしています。反対に怒りそうになったら、「こうしてくれると、僕は嬉しいな」と伝えます。基本的に、ポジティブな言葉を使うことは心がけています。

Q:Kさんは主夫をしながらお仕事もされていますが、他のみなさんは、奥様に「主夫になってくれない?」とお願いされたら、どうしますか?

 

Iさん:

喜んでやりますよ。ただ、お客様のライフプランニングをしている仕事柄、子どもの養育費など、お金のことが気になります。奥さんの収入だけに頼るのではなく、自分の仕事も完全に0にはせず、生活できる最低限の収入が稼げる分は、働こうと思います。

 

とは言うものの、仕事と家事を同時進行させるのって難しそうですよね。主夫と会社員を同時にされているKさんは、本当にスゴいですよね。実はつい先日、息子が産まれたのですが、1カ月の育児休業を取って、産褥期の妻に代わって家事をしたんです。それが想像以上に大変で、主婦のつらさ、偉大さが初めてわかりました。今は育休を終えているのですが、今度は仕事モードに切り替えるのに苦労しています(笑)。

 

Sさん:

妻に頼まれたら、主夫になることを快諾しますね。妻の収入で十分に暮らせる場合は、私が全く働かず、家事に徹してもいいと思っています。

 

Mさん:

私はIさんと同じで、働いて最低限の生活費を担保した上で、子どもができたら主夫をしてみたいですね。

 

Iさん:

でも主夫として子どもを育ててしまうと、大きくなって自立したときに、すごく寂しく感じてしまいそうですね……。

妻に感化されて習慣が変わるのも、また楽しい

Q:みなさんの奥様は仕事をバリバリされてて忙しいと思うのですが、すごいと思っているところや、見習いたいところはありますか?

 

Sさん:

たくさんありますよ。相手のことを見て気配りができる点は、心から尊敬しています。ただ人見知りしてしまう性格なので……初対面の方も交えて3人で会うときは、まず私からいろいろと話しかけるようにしています。

 

Mさん:

土日のどちらか一日を、夫婦二人で過ごすようにしているのですが、もう一日の休日を私はなるべく寝ていたいと思うタイプなんですよね。一方、妻のほうはというと、掃除したり、ヨガに行ったりと、アクティブに活動しているんです。

 

仕事では論理的に考えることが多く、左脳を使いがちですよね。そこで、彼女のように休日に右脳を使った活動をすると、たぶん心身のバランスをいい感じに保てているんじゃないかな、と。ここまでアクティブにはなれていないですが、妻の影響で、最近になって俳句を始めたんですよ。

 

Mさん:

僕の妻は、モノを増やさないことを徹底しているんです。何か一つ買ったら、彼女からは他のものを捨てて欲しいと言われています。以前は本や書類が積み上がっていた部屋が、彼女のおかげでキレイになりましたね。

 

Kさん:

うちは逆ですね。片づけができるのは、家族で僕しかいません(笑)。本が積み上がってるくらいならまだいい方で、気づいたらボールとか靴下とかが床に散らかっちゃっています。綺麗なリビングは2日ともたないです(笑)。

 

奥さんは外でアクティブに活動していて、先日は、「ヨガに行ったらスッキリした」って言ってました。Mさんがおっしゃっているように、仕事とは真逆のことをやると、自分の変化に気づけるみたいです。私も妻を見習って、休日にランニングをするようになりました。

外のコミュニティともつながって助け合う

Q:ちょっと変わった質問ですが、もしみなさん、共働き夫婦のための法律を作れるとしたら、どんな法律を作りたいですか?

 

Iさん:

育児休業の取得は、父親も義務化させた方がいいと思います。1カ月だけでも、取得するのとしないのとでは、家庭への関心がかなり変わってくると思いました。でも今は、父親は「すみません」と言いながら申し訳なく育休を取っているイメージですよね。すべての企業で義務化するといいのでは、と思います。育児休業をとっても何もすることがない、って思ってる人もいるかもしれませんが、産後は妻の体が回復しきっていないので、夫のサポートが欠かせないんですよ。

 

あとは「児童手当」ですね。3人目の子どもへの手当が減額される地域が多いと思うのですが、本来であれば逆にするべきで、子どもを産めば産むほど、家庭に多くの給付金が行き渡るようにしていくべきではないかと思います。

 

Kさん:

3人を育てるのって大変なことだと思います。うちは2人の子育てで精一杯ですから。女性は働き盛りのときに、子育てに専念するか、仕事に復帰するか、すごく迷うと思います。そんなとき、どちらかの道で迷わなくても済むような制度があるといいですよね。少子化対策にもなるし、女性自身がやりたい仕事も続けられることにもなりますし。

 

Mさん:

スペインにある「シエスタ」(編集部注:13:00~16:00の間にとる、長めの休憩)のように、仕事の間にも一緒に過ごせる時間があったらいいですよね。お昼休みは家に戻って、家族とご飯を食べることで、ちょっとした息抜きにもなりますし。

Q:それでは最後に、今後、どんな夫婦を目指していきたいかお聞かせいただけますか。

 

Iさん:

実は、結婚指輪の裏に「分かち合う」という言葉を刻んでいるんです。共働きだと大変なことも出てきますが、指輪の言葉通りに楽しいことも苦しいことも全て、あらゆることを分かち合える夫婦になることが理想ですね。

 

Sさん:

今のまま、妻には自由に働いてもらって、仲良く暮らしていけるといいなと思います。あと、結婚前に妻は母親を亡くしているのですが、僕と一緒になるときに「私より先に死なないでね」と言われているんです。自分が先立つのは、妻に一番してはいけないことだと思いましたね。

 

Mさん:

もしものことがあったときのことは、もう話していて。ただ、どういう最期になるかはわかりませんが、いくつになっても、お互いの愛情を絶やさない夫婦でいようとは言っていますね。

 

Iさん:

夫婦も大事ですが、もっと視点を広く持ち、周りの大切な人たちと、血のつながりとかも関係なく助け合っていきたいですね。「拡張家族」(編集部注:会社や学校、家族、友達、仲間といった束縛する繋がりではなく、ゆるく繋がることのできるコミュニティ)みたいな感じでしょうか。働いて、家事もして、と忙しく働いていると、夫婦だけで解決できないことも出てくると思いますから。

Q:昔、隣近所が誰彼となく助け合っていたような感じですかね。

Kさん:

そういう繋がりがあってもいいかもしれないですね。インターネットのおかげで、現代は、人と会わなくても仕事が完結したり、買い物ができたりするような便利な世の中です。こうなると夫婦二人だけでも生きていけるように勘違いしてしまうかもしれませんが、それは無理ですよね。ちゃんと人と直接会って会話を交わせるような、生身でつながれる機会を持つことが必要だと思います。

おわりに

座談会に参加してくださった旦那様からは、バリバリ働く奥様への尊敬や愛情を垣間見ることができました。共働き夫婦になると世帯収入が増えるだけではなく、お互いが仕事におけるよき相談相手にもなるという、相乗効果も生まれます。妻も働き、夫も家事や子育てをすることで、共働き夫婦は二人で家族を作り上げていく感覚を味わえるのではないでしょうか。
末筆ではございますが、ご参加いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

ライター:平賀 妙子

1989年、三重県生まれ。広告代理店勤務を経て、ライターへ転身。
企業のPRライティングやビジネス書の編集、IT企業のオウンドメディアの執筆などに携わっている。
普段は当たり前すぎて見逃されていることにスポットを当てて、
その魅力を伝える文章を書いていきたい。