現在働き方改革が進む日本では、従来の働き方の見直しはもちろんですが、「多様な働き方」が注目されています。昔は「新卒で企業に就職して定年まで勤め上げる」というのが規定路線でしたが、いまではその働き方は変わってきているのです。

 

すでに浸透している新しい働き方といえば、たとえばフレックスタイム。広がり始めているの働き方は、リモートワークやフリーランスなどでしょう。最近では副業や複業など、さらに多様な働き方が注目されています。

 

刻一刻と変わっていく「働き方」をとりまく環境は、これからどのように変化していくのでしょうか。

 

本連載では、海外の事例を参考に多様化する働き方を紹介し、そこから「どういう働き方が理想的なのか」「日本はどういった働き方を可能にしていくべきか」ということを考えていこうと思います。

世界で注目される働き方の多様化

「働く」というと、どんなイメージを持っていますか? スーツを着て毎日会社に出社して……というイメージがまず浮かぶだろうと思います。

 

もちろん、教師や医療関係者などさまざまな分野でそういったイメージに当てはまらないのですが、それでもやはり「企業勤め」を基本として考えている人は多いでしょう。

 

ですが現在では、ワーク・ライフ・バランスの重視や生き方、家族のありかたが多様化し、朝9時から18時まで毎日出社して働くという「典型的」な労働からの脱却が進みつつあります。

 

企業に所属しながらも出社しないリモートワーク、企業に所属しないフリーランス・自営業、本職を持ちながらもうひとつの仕事をする副業、複数の仕事をこなす複業、仕事以外のキャリアアップを目的とするパラレルキャリア、同じ仕事を複数人で分け合うジョブシェアリング……さまざまな働き方が注目されています。

 

連載の前半では、それぞれの働き方はいったいどんなものなのか、ヨーロッパの実情を踏まえて紹介していきます。

 

日本にはどんな働き方が必要とされていて、これからどのように発展していくのか考えていきましょう。

働き方の変化に対応できない日本

本連載の後半では、日本と欧米型の雇用制度のちがいを解説します。

 

連載の前半でモデルケースとして紹介するヨーロッパの国々は、「ジョブ型」と呼ばれる雇用制度が一般的です。対して日本では、「メンバーシップ型」と呼ばれる雇用制度が主流です。

 

ジョブ型の雇用制度では、比較的柔軟に働き方を変えることができます。ですが日本のメンバーシップ型では、働き方の多様化に対応するのはむずかしいというのが現状です。

 

ではそのメンバーシップ型とジョブ型の雇用制度とは、いったいどのようなもので、どのようなちがいがあるのでしょうか。

 

労働環境の根本的違いを理解することで、日本が新しい働き方を推進するためになにが必要なのかが見えてきます。また、海外の仕組みと相対化することにより、日本の労働環境を見直すことにもなるでしょう。

 

連載の後半では、なぜ日本では働き方改革が進まないのか、なぜヨーロッパでは多様な働き方が進むのか、その背景にある働き方の違いについて触れていきます。

人々の生活がより豊かになるために

多くの人は20歳前後で学生生活を終え、そこから約40年ものあいだ働き続けることになります。つまり人生の大半の期間で、「労働」は生活に密に関わっているのです。

 

生活をより豊かにするためには、自分に合った働き方を可能にすることは不可欠です。働き方の多様化とは生き方の多様化でもあり、理想的な働き方を可能にすることは幸せな人生へとつながっていきます。

 

日本では特に劣悪な労働環境が問題になっているので、迅速な労働改革が必要です。長時間労働の規制やパワハラの取り締まりなどは必要不可欠です。

 

ですがその一方で、さまざまな働き方を可能にすることで、より柔軟でその人にあった働き方を選べる環境にすることも重要です。

 

本連載では、ヨーロッパの例を参考に多様な働き方を紹介し、欧米型と日本型の労働環境を比較することで、日本がどんな働き方をどのように可能にしていくべきかということを考えていきます。

 

この連載を通じ、多くの方が「自分にとって理想的な働き方とはなにか」を見つめなおし、それを実現していくことに繋がれば幸いです。

 

取材・記事制作/雨宮 紫苑