みなさんは、リモートワークという働き方をご存知でしょうか。
オンライン上で仕事をすることが可能になった現在、「どこで」仕事をするかはあまり重要ではなくなってきています。それにより注目されるようになったのが、リモートワークです。
ワークライフバランスの充実のためにも、働く場所や時間を自分の裁量で決められるリモートワークは大きな注目を集めています。
これからもどんどん広まっていくであろうリモートワークの是非について、いま一度考えてみましょう。
オンラインが可能にした遠隔勤務、リモートワーク
リモートワークを日本語にすると、「遠隔勤務」です。現在ほぼすべての企業でインターネットが利用されています。
それは裏を返せば、「インターネットが使える環境であれば働く場所を問わない」ともいえます。
守秘義務の問題やチームワークなどの観点からいまだに出社義務を課している企業が大半ですが、リモートワークが許されている場合、被雇用者は働く場所を自ら選べるようになります。
リモートワークには「テレワーク」や「在宅ワーク」など、似たような言葉があります。テレワークとリモートワークは意味はほとんど同じですが、テレワークの表現の方がやや古いと言われています。
また、在宅ワークは自宅勤務のことを指しますので、家をオフィスとして働く、というイメージとなります。
総務省の統計では、2013年に雇用型在宅型リモートワーカーは推計260万人。雇用型在宅型とは、企業に勤めつつも週1日以上を終日在宅勤務している人のことを指します。
わたしもオンライン上で仕事をしているフリーランスなので、リモートワークと言えるでしょう。
オンライン上で仕事が完結する人にとって、出社義務がなくなるということは、人生の選択肢が増えることにもつながります。
リモートワーク推進の反面懸念事項も
リモートワークのメリットは、労働者が快適な環境を選んで仕事をするために生産性の向上が見込める、通勤時間の節約、オフィスにかかるコストカット、人材確保がしやすいことなどが挙げられています。
労働者にとっては柔軟性があり、企業にとっては人材確保・コストカットが見込めるのです。
その反面、モチベーションの低下、自己管理できず仕事が終わらない、労働時間が管理しづらいので仕事漬けになってしまう、会議などが進まない、などの問題点も指摘されてきました。セキュリティ面での不安もぬぐいきれません。
それでも「オフィスにとらわれる必要はない」ということで、日本をはじめ、多くの国ではリモートワークはどんどん浸透していきました。
味の素が全部門にリモートワークを導入し、トヨタも総合職社員を対象に在宅勤務制度の導入を決めています。
それに伴うように、業務連絡に最適化されたチャットツールやオンライン会議のアプリなども開発が進みました。現在、オンライン上で仕事がしやすい環境が整いつつあります。
総務省によると、テレワーク企業導入率は、アメリカで85%、イギリスで38.2%、ドイツで21.9%となっており、日本は11.5%となっています。個人の仕事がはっきりしている国では、リモートワークは導入しやすいのでしょう。
ですがリモートワーク先進国であったアメリカでは、むしろリモートワーク縮小への動きが活発になっているのです。
その理由はさまざまではありますが、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事では、大きな理由として「顔を合わせてコミュニケーションをとることが大切である」ことが挙げられています。
オンライン上で意思疎通ができるとはいえ、やはり顔を合わせて仕事をする方が円滑に進む場合も多いのかもしれません。
発展途中のリモートワークはこれからどうなる
NTTコムリサーチ/NTTデータ経営研究所の「働き方に関する意識調査」では、育児中の働き方としてテレワークの導入を希望する割合は19.4%、介護中の働き方としてテレワークを希望する割合は15.5%というアンケート結果が発表されています。
自分は働ける状態だが育児や介護などで通勤がむずかしい人や、病気療養中で徐々に社会復帰したい人など、「自分のペースで働ける」ことを望む人は少なくないでしょう。
そういう人にとって、リモートワークは大きなメリットがあります。女性の社会復帰の観点からも、リモートワークは魅力的です。
ですが進捗状況の管理や人間関係の構築のことを考えると、出社することにもまた意味があります。特に労働時間が把握しづらくなるぶん、企業はより一層従業員の労働環境に気を配らなくてはいけなくなります。リモートワークは、まだまだ発展途中なのです。
週2日フレックスタイムで自由な時間に出勤し、それ以外はリモートワーク……なんて働き方が主流になってきたら、通勤ラッシュも緩和されますし、育児・介護中の方も社会復帰がしやすくなります。
これからは、リモートワークを働き方の選択肢のひとつとしつつ、出社とリモートワークをバランスよく取り入れた働き方が浸透していくのではないかと思います。
リモートワーク拡大の動きは、現在進んでいる働き方改革のなかでも特に注目されていくでしょう。
取材・記事制作/雨宮 紫苑