独立プロフェッショナルの「働き方」のトレンドや業界情報について調査・情報共有する「ビジネスノマド業界情報コラム」。

本コラムを通して、知られざる「ビジネスノマド」について理解し、新しい働き方について考えるきっかけとなるような情報発信をします。今回は「海外のフリーランス事情」の続きです。さらに米国の働く事情を紐解いていきます。

70歳に近い熟年世代でも14%がインディペンデントワーカー

■米国の年代別インディペンデントワーカー

まず、インディペンデントワーカーの年代分布をみたいと思います。

MBO社では、年代区分としてミレニアル世代(21-33歳)、X世代(24-49歳)、ベビーブーマー世代(50-67歳)、熟年世代(68歳以上)に区切って、図のようにその割合を示しています。(年齢区分が均等ではない点に注意)

スライド1

この図を見ると、ベビーブーマー世代が最も多くなっています。ついでX世代が29%、ミレニアル世代が28%と、ほぼ似たような割合であることが分かります。一方、70歳に近い熟年世代でも14%のインディペンデントワーカーがいることも注目に値します。

このように、米国では若い20−30歳代だけではなく、40代、50代、60台以上にも数多く、インディディペンドワーカーが存在しているということがわかります。

日本では、20後半−40代前半くらいの世代が多いというイメージが多いかもしれませんが、インディペンデントワーカー先進国とも言える米国では、年齢層の幅が広いということが言えるのではないでしょうか。

新しいワークスタイルに何を求める?

「副収入&スキル」 vs 「自分のボスは自分」
■ソロプレナーとサイドギガーがこのワークスタイルを選んだ理由

次に、インディペンデントワーカーになった理由を、ソロプレナーとサイドギガーでどのように違うのか見てみましょう。(ソロプレナーとサイドギガーの定義は、前回の記事を参照)

ソロプレナーは、より多く収入を得るというよりも、自分のキャリアや人生を自分でコントロールしたい、柔軟性を持ちたい、自主性を持ちたいという傾向が強く出ています。

実際、ソロプレナーがインディペンデントワーカーになった理由としてあげた項目で、回答した割合が高かったのは、「自分のスケジュールを自分で管理したい(63%)」、「より柔軟でいたい(61%)」、「誰からも指図されず自分で好きなようにできる(57%)」となっています。

このような感覚を持つ背景として、複数のクライアントや収入源を持つことが、より安全である(ソロプレナーの43%が「より安全である」と回答)ということがあるようです。

変化の激しい時代に、仕事・収入源を失わないようにするための対策として考えているあたりが、働く人の現代的な感覚であり、それがインディペンデントワーカー、ソロプレナーとなることの大きな動機となっているといえそうです。

一方、サイドギガーは、どちらかというと収入や経験を積むということがインディペンデントワーカーとなった主な動機となっています。

サイドギガーとして働く主な動機は、お金の面で「副収入として(58%)」、「より多くの収入を得るため(46%)」といった理由が上位に上がってきています。

お金以外では、「自分のスケジュールを自分で管理したい(47%)」、「自分が好きなことをしたい(41%)」、「誰からも指図されず自分で好きなようにできる(33%)」といったソロプレナーと同様な動機も上位に上がってきています。

ただし、ソロプレナーと比べると、お金以外の要素の動機の強さは低く出ています。

また特徴的な点としては、14%のサイドギガーが「スキルの獲得と出世昇進のため」を動機としてあげています。これも時代背景を表していて、社内トレーニングの機会が減る中で、自分のスキルを高め、転職時にスキルを持った人材を採用しようとする企業側へのアピールなども視野に入れているということが考えられます。

女性は男性よりも、好きな事>お金

■インディペンデントワーカーにおける男女の傾向の違い

男女で分けてみた場合、どのような違いがあるのか見てみましょう。

同じインディペンデントワーカーでも、男女別に見ると、その働き方を選んだ動機に違いがあります。
女性の方が、男性と比べてお金よりも、仕事の充実感や柔軟性な働き方を重視する傾向があります。

例えば、女性の76%が「お金を稼ぐよりも好きなことをすることを重視する」のに対し、男性は69%となっています、また女性の71%が「お金を稼ぐよりも柔軟な働き方を重視する」のに対し、男性は58%との回答という違いがあります。

特に、男女の違いが出ているのが、子どもとの時間を重視するかどうかという点です。女性の20%が「子どもとの時間を重視する」のに対し、男性は6%となっているという違いがあります。X世代(34−49歳)の女性でみると、子どもとの時間を重視するのは26%とさらに高く出ています。

■日本にとっての意味合い

米国インディペンデントワーカーとして働く動機には、ソロプレナーとサイドギガーで多少の違いがありましたが、その背景・根底には伝統的な雇用システムの崩壊という要因が大きく関係していることがわかりました。

そして、その雇用システムの状況というのは、日本も同じ状況にあるという認識を持つことが重要なのではないでしょうか。
すなわち、インディペンデントワーカーの先をいっている米国のトレンドが、日本でも同じように起きうる(既に起きている)ということが読み取れると思います。

このことが、社会的にどのような意味を持つのか、次の回で考察したいと思います。

〈参考資料〉

MBO partners “2014 STATE OF INDEPENDENCE IN AMERICA REPORT”

専門家:谷口 賢吾
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方の産業振興政策策定に携わる。02年よりビジネス・ブレークスルー執行役員 、BBT総合研究所責任者兼チーフ・アナリストを経て06年に独立。08年法人化(現クリエナレッジ)。リサーチ事業、ビジネスプロデ ュースなどを手がける。

ノマドジャーナル編集部
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