今回も、前回に引き続き、米国MBO社のレポートをもとに米インディペンデントワーカーの動向を取り上げたいと思います。前回は、インディペンデントワーカーの実像や、男女別の傾向の違いなどを見てきました。今回は、インディペンデントワーカーが、どのような社会的なインパクトをもたらしているのか、インディペンデントワーカーへと働き方が移りゆく要因を見ていきたいと思います。

地元だけでなく、他地域・海外からも収益を得ているインディペンデントワーカー

■ソロプレナーは総額1.1兆ドルの収益を国内外で稼いでいる

MBO社のレポートによると、2013年にソロプレナーは、米国全体で1.1兆ドルの収入を生み出しているとしています。この規模は、2012年とほぼ同額で、2011年と比べると20%アップしています。

収益をどの地域から得ているのか、地理分布をみると、彼らは地元だけでなく、他地域・海外からも収益を得ていることが分かります。

ソロプレナーの収益総額(2013年)のうち約7,000億ドル(全体の63%)は地元からですが、約4,140億ドルは地元以外から得ています。そのうち、約2,790億ドルは拠点のある州以外からの収益となっています。

実は、インディペンデントワーカーは米国の貿易収支にも貢献しており、約370億ドルの輸出(2013年)を行っています。この額は、米国の医療機器輸出額(約340億ドル)よりも大きな数字となっています。

まさにグローバルに働く、場所にとらわれない働き方を実践している層であるといえます。

独立からのビジネス創出:インディペンデントワーカー→事業設立へ

■インディペンデントワーカーは中小企業を生み出す源泉となっている

同レポートによると、2014年にインディペンデントワーカーの15%(約270万人)が、自らのビジネスを拡大させる計画を持っているとしています。この割合は、2012年には12%、2013年は13.8%、と年々高まっています。

米国の中小企業の半数以上がインディペンデントワーカーからスタートしていたということを勘案すると、納得の数字であると言えます。

また、政府・政策担当者にとっては、ソロプレナーなどの成長を支援することは、雇用を生み出すビジネスを創出していく道筋として、重要な意味合いがあるとMBO社は強調しています。

■インディペンデントワーカーは他のインディペンデントワーカーを雇っている

インディペンデントワーカーは、すべて一人で完結しているということを意味しているわけではありません。

同レポートによると、彼らのうち、38%が過去1年間で約920億ドルを支払って、他のインディペンデントワーカーを契約ベースで雇っていたとしています。

これは、ラフに見積もって、フルタイムワーカー約220万を雇用しているのと同等の規模になります。

この点からも、MBO社は、インディペンデントワーカーを新たな収入獲得源の道としてとらえるだけではなく、雇用創出の源泉となるものとして捉えるべきだと主張しています。

■インディペンデントワーカーのチーム結成は新しい中小企業の姿である

インディペンデントワーカーが、他のインディペンデントワーカーを雇うということは、ニューエコノミー時代における、コラボレーション・トレンドにも適合していると言えます。

チームを結成することによって、単独でやるよりも、より効果的に大企業と競うことが出来るようになり、より幅の広いサービスを提供することが出来るようになり、大きなプロジェクトの入札に加わることが出来るようになります。

このようなチーム結成は、柔軟で迅速にスタッフをそろえて運営できる、新たなプロジェクト特化型の中小ビジネスの姿だと言えます。

■収入10万ドル超プレイヤーが増加中

同レポートによると、約270万人(約15%)のソロプレナーは10万ドル超の収益を上げているとしています。

2013年の250万人から8%アップ、2012年の220万人から22%アップとなっています。これらのソロプレナーにおけるハイスキル・高所得層は、サーキュレーションが定義する「ビジネスノマド」に近い領域と思われますが、これらの層が著しく増加傾向にあることが読み取れます。

雇用する側、される側、どちらにもメリットしかない?インディペンデントワーカーという働き方が増えている理由

■インディペンデントワークへと働き方が移りゆく要因

MBO社のレポートでは、このようなインディペンデントワークへと働き方がシフトしていく要因として、いくつかの点を挙げています。

  • >インディペンデントワーカーを活用することは、雇い主にとって、柔軟性、迅速性な労働の供給となり、通常の雇用よりもコストが低く済むことが多い。そのため、中小企業、大企業、政府系機関も含めて、必要な時に必要な能力を調達できる方法として、インディペンデントワーカーを選択することが増えている。
  • 働く側も、リストラ、給与・福利厚生の削減、仕事量の増大、雇用保障の減少などがあって、伝統的な雇用形態に嫌気がさしている。同時に、インディペンデントワークが、伝統的な雇用形態と比べて、キャリア形成、生活の柔軟性、自律性などの面で優れていると認識している。
  • インディペンデントワークをサポートするインフラ(製品、サービスなど)が整ってきている。より簡単で、安く、低リスクでインディペンデントワーカーになれるようになった。
  • 景気が改善しているにもかかわらず、伝統的な雇用形態の仕事を探すのは依然として困難な状態が続いている。見通しのきかない経済状況、変動の激しい雇用市場と結びついて、インディペンデントワーカーになることが、キャリアの選択肢として有力であり、多くの場合ベストな選択しとなっている。

これらの要因によって、現時点で独立していないワーカーも、インディペンデントワーカーとなることに強い関心を持っているようです。そのため、MBO社もインディペンデントワーカーが増加することを予測しています。

■日本にとっての意味合い

ここまでのMBO社の調査結果・分析を見てきて、日本にも当てはまるところが多くあったのではないかと思います。インディペンデントワーカー同士のチーム結成などは、既に日本でも起こっているケースだといえるでしょう。

インディペンデントワークを後押しする要因などは、そのまま日本の状況と当てはめても、おかしくない状況だと思います。
米国と同じ様なトレンドが、日本でも起きるであろうということが十分に推察できるのではないでしょうか。

<参考資料>

2014-MBO_Partners_State_of_Independence_Report

shades-of-independence-solopreneurs-vs-side-giggers

専門家:谷口 賢吾
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方の産業振興政策策定に携わる。02年よりビジネス・ブレークスルー執行役員 、BBT総合研究所責任者兼チーフ・アナリストを経て06年に独立。08年法人化(現クリエナレッジ)。リサーチ事業、ビジネスプロデ ュースなどを手がける。

ノマドジャーナル編集部
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