ここまで新しい働き方について色々とご紹介してきましたが、特にリモートワークは非常に注目すべき存在です。

大きな可能性のあるリモートワークですが、メリットもあれば注意すべき点もあります。今回はその両者をじっくり見たうえで、リモートワークをより深く考えていきたいと思います。

リモートワークのメリット

近年「働き方改革」が叫ばれていますが、このリモートワークこそが、日本人の働き方を根本的に変革するパワーを秘めています。その新たな可能性について、ひとつずつ見ていきましょう。

1.地理的ハンデがない

なんといっても、これこそがリモートワークの最大の魅力といえるでしょう。

普通の会社勤めを考える場合、都会に住むのと地方に住むのでは大きな違いがあり、地方在住者には大きなハンデがあります。地方では求人そのものの数が少ないのはもちろん、求人内容の幅が狭く、思ったような仕事が見つけにくい場合もあります。通いの仕事を探すとなると、どうしても地方在住者にはハンデが生じてきます。

しかしリモートワークであれば、こうしたハンデが一気に解消されます。在宅でのパソコン作業であれば、地域的なハンデがありません。クライアント企業と離れていても仕事を請けられるので、東京の企業の仕事を、北海道や沖縄の人が受注することもできるわけです(インターネット環境さえあれば、海外在住でも仕事を請けられる仕事もあります)。

リモートワークはまた、給与の面でも地方のハンデを解消してくれます。

通いの仕事の場合、都会と地方では平均給与に大きな差があることは、これまでの連載でもお伝えしてきた通りです。同じような仕事をこなしていても、東京と地方では収入に大きな差が生まれてくるのが現実です。

しかしリモートワークであれば、居住地による給与面の格差が解消されます。企業の側から見れば、在宅で仕事をしてもらう以上、ワーカーがどこに住んでいても関係ありません(注)。よって東京に住んでいようが地方に住んでいようが、給与に格差が生まれることはないのです。

このように、リモートワークは2つの面から、地域的ハンデを解消してくれるのです。

(注)リモートワークの地域格差について……クライアントによっては、会社での打ち合わせに出席を求められるリモートワークもある。こうしたケースについては、やはり地方在住者が不利になることもある。

2.通勤の必要がない

これまた、リモートワークの大きな魅力のひとつでしょう。

通いの仕事の場合、よほど会社の近くに住んでいないかぎり、通勤は大きな負担となります。都会の満員電車はサラリーマンにとって大変な苦痛です。また地方在住者の場合も、マイカーでの通勤は経済的にも時間的にも大きな負担となります。

しかしリモートワークであれば、こうしたデメリットが一気に解消されます。そもそも会社に「通勤する」という概念がなくなるのですから、満員電車からもマイカー通勤からも解放されるのです。

時間の面だけみても、これは絶大なメリットとなります。仮にサラリーマンの勤務日数が240日で、通勤に片道1時間(往復で2時間)を要すると考えた場合、年間では以下の時間を通勤に浪費することとなります。

2(往復の通勤時間)×240(日数)=480時間

どうでしょうか? 480時間なんて、膨大な時間ですよね。通勤に毎日毎日時間を奪われるということは、長いスパンで見れば膨大なロスとなるわけです(しかも都会での電車通勤の場合、その時間は満員電車に押し込められているのです……)。

リモートワークは、通勤の苦痛やロスから人々を解き放ってくれます。それは通勤による疲弊や時間のムダを解消するのですから、生産性の大幅な向上にもつながるでしょう。

3.時間の融通が利く

特に、家事と仕事の両立を求められる主婦の方にとって、大きなメリットといえるでしょう。

専業主婦で家計が成り立てばいいですが、そうでない場合、主婦の方も何らかの形で収入を得ていく必要があります。

従来であれば、主婦の方が収入を得る道は、パート勤務などに限られていました。しかしリモートワークであれば、家事の合間をぬって、子供を見守りながら仕事をすることもできるようになります。

そもそもリモートワークは通勤の必要がないうえ、作業時間も自分で自由に決めることができます。よって主婦の方にとって、家事・育児との折り合いがとてもつけやすくなるのです。

もちろん、こうしたメリットは主婦の方に限った話ではありません。たとえば農業とリモートワークを並立させることで、安定した収入を得ている人もいます。あるいは芸術などクリエイティヴ分野での夢を追いかけるため、家で作品を創りながら、リモートワークで生計を立てている人もいます。

このように、リモートワークの出現は、人々の働き方を多様なものに変えつつあるのです。

4.人間関係のわずらわしさがない

会社勤めをする人たちにとって、勤務先での人間関係はプラス面もマイナス面もあると思います。

もちろん人間関係の中で仕事を覚え、スキルを伸ばしていける側面もあります。しかしその一方で、会社の人間関係が苦痛になるケースもあるはずです。

近年、サラリーマンが職場の人間関係で苦しみ、うつ病を発症するといった例も増えてきています。会社の人間関係は、そこから得られるものも多い反面、精神的に圧迫を受けるというマイナス面もあることは事実でしょう。その点、リモートワークであれば、そうした人間関係のわずらわしさがありません。

もちろん仕事先の担当者との連携は、しっかり取らなくてはいけませんが……基本的に相手と顔を合わせることもなければ、組織人としてのプレッシャーを受けることもありません。人付き合いのわずらわしさや、人間関係の圧力から解放されるのです。

リモートワークは会社組織になじめない人や、人間関係で苦しんできた人にも、新しい働き方を提供する可能性を秘めているのです。

リモートワークの注意点

もっともリモートワークは必ずしも「いい事ずくめ」というわけではなく、注意すべき点もあります。以下に気をつけておくべきポイントを挙げていきましょう。

1.コミュニケーションの難しさもある

リモートワークの場合、仕事先とやり取りするうえで「お互いの顔が見えない」という点に気をつける必要があります。

通いの仕事であれば、上司・同僚らと毎日のように顔を合わせます。取引先の担当者などとも直に話すことができるため、ダイレクトにコミュニケーションを取ることが可能です。

ところがリモートワークの場合、この当たり前のようなことができません。仕事先からメールなどで指示を受け、作業を在宅で行うので、基本的に人と会わなくても仕事が完結します。これは楽な反面、人と顔を合わせてのコミュニケーションが取れないということでもあります。

非対面型のコミュニケーションは、言葉に表れない相手のニーズ・本音をくみ取れない危険があります。相手の表情や仕草が見えるわけではないので、相手の気持ちはメールなどの文面から読み取るしかありません。文面だけでのコミュニケーションは、時には建前が優先され、相手の本心が分かりにくい時もあります。

リモートワークを上手くこなしていくには、非対面型のコミュニケーションに慣れる必要があります。特に相手のニーズや本心をしっかり読み解くよう、注意する必要があるのです。

2.時代の流れに取り残されるリスク

あなたの仕事でリモートワークの比重が大きくなると、人と会わずに家にいる時間も長くなります。これによって、時代の流れに取り残されるリスクも生まれます。

どんな仕事分野でも情勢は日々変動しますし、新しい技術が生まれることもあります。人と会わずにいると、いつしか「浦島太郎」になってしまい、状況の変化に乗り遅れる危険もあるのです。

特にリモートワークの比重を重くする場合は、自分の分野の情勢をよく観察し、時代の流れに取り残されないよう気をつける必要があります。情報を正しくキャッチし続けるためにも、同業の人たちとのパイプを保つことが重要になります。

3.自己コントロールができないと厳しい

リモートワークは会社に行く必要がないのはもちろん、仕事をいつやるかも本人の勝手です。

もちろんこれは大きなメリットではあるのですが、注意すべき点もあります。自分自身をしっかり管理できないと、仕事を上手くこなして行けないのです。

仕事時間が自由だからといって、作業を後回しにしてしまうと、ノルマがこなせないかもしれません。また上司の監視の目がないからといって、だらだらとネットサーフィンなどをしていては、いつまでたっても仕事が進みません。

つまりリモートワークには「自由だからこそ、自分のすべてに責任を持たなくてはならない」という厳しい面もあるのです。自己コントロールがしっかりできないようでは、リモートワークを続けていくことは難しいでしょう。

4.人間関係が希薄化する

先に、「リモートワークは人間関係のわずらわしさがない」という話をしました。もっとも、それは裏を返せば「人間関係が希薄化してしまう」という面もあります。

リモートワークの比重が大きくなると、それにともなって人と会う機会が減ります。つまりオフィス勤務で得られるような人とのつながりがなくなり、孤独におちいってしまうことにもなりかねないのです。

人間、ひとりぼっちになってしまうと、それはそれで寂しいものです。リモートワーク中心に仕事をしようとするなら、会社勤めで得られるような濃密な人間関係は、無くなると思っておいた方がいいかもしれません。


以上見てきたように、リモートワークには働く人の未来を広げる可能性がある反面、気をつけなくてはならない点もあります。リモートワークの特徴をしっかり把握したうえで、あなたにとってのベストな働き方を考えていく必要があるでしょう。

記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)