「地方の時代」

こんな言葉が各方面で叫ばれるようになって、ずいぶん経ちますよね。

ちょっとあいまいな言葉にも聞こえますが、地方が経済的にも文化的にも活性化され、地方でも充実した人生を送ることができる……そんな未来像をイメージした表現なのでしょう。

 

しかし、現実はどうでしょうか。あなたがもし地方在住の方であれば、周囲をご覧になってください。

はたして「地方の時代が到来した!」と言えるほど、地方は元気が出て活性化しているでしょうか?

多くの地方では、厳しい現状が広がっていることと思います。日本各地の自治体が、人口減少と少子高齢化に直面し、どんどん活力が失われてしまっているのです。

 

こんな中で、地方で働き生きていきたいと思っている人(または、そうせざるを得ない人)は、将来をどのように考えるべきなのでしょうか。

今回は、「地方」「経済」そして「人」という観点から、地方の仕事を取り巻く環境について考えてみたいと思います。

「仕事」と「人」は車の両輪

政府も地方の活性化に本腰を入れ、「地方創生」という取り組みを進めています。

これは大ざっぱに言うと「地方への人の流れを作り、地方経済を活性化させる」というものです。

生産活動であれ消費活動であれ、すべての経済活動は「人」が基本です。だからこそ、地方の活性化には人を増やすことが欠かせませんし、政府も地方に人が流れるようにしようと苦心しているわけです。

 

では突然ながら、ここで、ひとつ考えていただきたいことがあります。

地方人が都会に移住せず、地方にとどまってくれる……

あるいは都会から地方に人がやってきて、定着してくれる……

これを実現するために、最も必要なモノは、いったいなんなのでしょうか?

 

答えは……そう。「仕事」です。

地方から出て行ってしまう人の多くは、仕事を求めて都会に移住してしまっているのです。

逆にいえば、地方にバラエティに富んだ仕事がたくさんあるなら、地方に残って働いてくれる人も多く出てくるはずなのです。

つまり「地方の時代」「地方創生」「地方への人の流れを作る」……といった言葉を本当に実現するには、「地方の仕事・求人」を充実させることが不可欠なのです。

地方の活性化 現実はそう簡単ではない

「うん、じゃあ地方に企業を誘致して、『地方の仕事』を作ればいいじゃん」

そうお考えになる方もいらっしゃるでしょう。

たしかに理屈はそうなのですが、現実はなかなか上手くいっていないのです。

これまでも日本各地で、自治体が巨額のお金を投じて商業施設を造ったにも関わらず、大失敗に終わったケースがいくつもあります。

背景には、地方の中心市街地が交通面で不便なことや、地方の人口減少により消費者そのものが減っていることなど、複合的な理由があるのですが……とにかく、地方経済を活性化し、「地方の仕事」を作るということは、口で言うほど簡単なことではないのです。

※編集部注:地方創生についての国や地方自治体の取り組みについては、これまでのシリーズ「地方創生は実現するのか」も合わせてご覧ください

「地方で働く」立場で考えると……

このように、国や自治体による「地方における仕事作り」が必ずしも上手くいっていない以上、地方で働こうとする人にとっても、状況は決して楽観できるものではありません。

それでも、決して望みを捨てるべきではありません。

地方で仕事をすることについては、以下の3つの視点から考えていくのが有効でしょう。

1.地方で働くことのメリットとハンデ

どの地方での仕事であれ、メリットとハンディキャップを、冷静に比較してみる必要があります。

メリットとしては、主に以下のようなものがあるでしょう。

 

  • 自然が豊か(空気がおいしい/健康にいい/新鮮な食材が味わえる)
  • 生活環境がいい(人が少なく静かである/子育てに良好な環境/満員電車に乗らなくてもいい)
  • 出費が抑えられる(家賃や生活費が安い)
  • 地方ならではの人的交流(お祭りなどのイベントで、一体感も味わえます)

 

一方で、以下のようなハンディキャップについても考えておかなくてはなりません。

 

  • 収入が減る(必ずしもそうとは決め付けられませんが、最低賃金(※)は東京が最高です)
  • 選べる職種が少ない(マスコミ系、クリエイティブ系といった仕事は、あまりないかもしれません)
  • 交通が不便(バスや電車は本数が少ない/住む場所によってはマイカー必須)
  • 情報面で不利(いくらインターネット時代とはいえ、都会との格差はまだまだあります)
  • 人との交流が限られる(あらゆる分野の人が都会に流れている以上、共通の目的や趣味を持つ人が見つけにくいかもしれません)

※たとえば平成29年の最低賃金について東京と沖縄を比べると、東京が958円、沖縄は737円と、221円もの格差ができています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/

 

このように、地方で働くことの長所もあれば、それによって生じるハンデもあります。

まずはこれらをしっかり見極めたうえで、進路を決める必要があるでしょう。

2.副業

地方で働くうえで、収入を補うために様々な副業を考える人もいます。

たとえばお昼の仕事の後、家庭教師や塾講師として学生に教えたり、コンビニやガソリンスタンドで接客をするという働き方もあります。

いずれにしても、体調を管理しつつ、メインの仕事に支障をきたさないよう、無理なく働くことが大切です。

3.リモートワーク

近年、地方での働き方として注目されているのが、この「リモートワーク」です。

メールなどで仕事先と連絡を取りつつ、自宅を中心に作業をする仕事スタイルです。

まだまだ地方での認知度は低いですが、この働き方を上手く取り入れることで、地方で働くハンデを大きく克服することができるかもしれません。

 

以上、今回は連載の第1回として、地方で仕事をすることについて、地方の状況を考えながら、簡単に見てきました。

次回からは、より具体的な話に進みたいと思います。

 

記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)