「地方の仕事」を取り巻く状況については、前回の記事で概要を簡単にお話しました。

地方での仕事を考える上では、

  • 地方で働くことのメリットとハンデ
  • 副業
  • リモートワーク

という、3つの視点から考えるべきだという点も、ご説明した通りです。

今回は、地方で働くことのメリットとハンデについて、さらに詳しく見ていきましょう。

地方で働くことの「メリット」とは?

それでは早速、地方で働く上でどんなメリットがあるか、順に考えていきましょう。

1.自然が豊か

なんといっても一番の大きなメリットがこれでしょう。

高度成長期よりは環境面が見直されてきたとはいえ、都会の空気はとてもじゃないですが、きれいでおいしいものとは言えません(地方から都会に出た人が、都会の汚い空気の影響で鼻毛が伸びるという、笑えない噂まで出てきてしまうほどです)。

また、街の所々に公園などはあるものの、多くは狭い土地に樹をならべた人工的な空間にすぎず、癒される自然空間にはほど遠いものです。

現状、日本の都会は自然の恵みに乏しく、自然に癒されつつ生活するのは難しいといわざるを得ません。

 

その点、地方であれば豊かな自然環境に囲まれて、仕事をすることができます。地方と都会の両方で生活経験がある人には分かると思いますが、自然のパワーというものはとても大きく、心と身体を常にリフレッシュしてくれるのです。緑と水の癒し効果はもちろん、新鮮な食材を豊富に味わえるのも、たまらない魅力です。

2.生活環境がいい

東京のような都会に行くと、「とにかく人が多すぎる」と感じる方も多いことでしょう。

新宿や池袋、渋谷といった街は(観光客にかぎらず)常に大量の人であふれ返っています。首都圏への人の集中が進みすぎたことが原因でしょう。

 

地方に行けば、そんなことはありません(人が少なすぎるのも問題なのですが)。おちついた静かな環境で仕事と生活ができるのが、地方の魅力です。

また、子育てにもいい影響があります。都会であれば、犯罪に遭う危険性も高いですし、子ども自身が罪を犯しかねない誘惑(たとえば万引きなど)もたくさんあります。一方で、地方は人が少ないことで、危険や誘惑も自ずと少なくなるため、安全な環境で子供を育てられるというわけです。

3.都会のストレスから解放される

1、 2 でお話しした内容とも関わりますが、地方は都会と比べると、日常生活でストレスを感じにくい傾向はあるでしょう。

都会が人に与えるストレスとして、代表的なのは「満員電車」です。毎日毎日、通勤のため電車にギュウギュウ詰めにされ、見知らぬ他人と密着し、身体を寄せ合いつつ長時間たえなければならない……この苦痛は相当なものだと思います。

 

その点、地方に行けば、電車が混むことはあっても、さすがにここまでにはなりません。満員電車に限らず、騒音・人混みといったストレスから解放されるのも、地方暮らしの大きな利点です。

4.出費が抑えられる

都会から地方に移住してみると分かりますが、地方ではあらゆる出費が格段に低く抑えられます

地方はとにかく物価が安く、都会と比べると相当の割合で節約ができます。さらには、地方の実家で生活するのであれば、家賃や駐車場代も発生しなくなります。

よって、たとえ都会から地方の会社に転職して給料が下がったとしても、コスト抑制効果により、手元に残るお金は増えるケースだってあります。

5.地方ならではの人的交流

人情味あふれる、人とのふれあい――これもまた、地方生活の魅力でしょう。

都会では少なくなったといわれる、人と人との交流、助け合い、素朴な心のふれあいが、地方にはまだまだ残っています。都会と比べ人の数そのものは少ないですが、いざというときに支えあえる「人情のネットワーク」は、地方の方がしっかりしていることも多いのです。

また春や秋には土地のお祭りなどもあり、都会生活にはない一体感を味わうこともできます。

「シャ乱Q」まことさんの事例

最近のニュースでも話題になりましたが、地方暮らしのメリットを、とても分かりやすい形で示してくれた有名人がいます。

かつて一世を風靡したロックバンド「シャ乱Q」のメンバー・まことさんです。

あのつんく♂さんが率いる「シャ乱Q」で、まことさんはギタリストとして活躍しました。作詞家としても才能を発揮し、「上・京・物・語」や「空を見なよ」などのヒット曲を生み出しています。

また私生活では元フジテレビアナウンサーの女性と結婚するなど、ミュージシャンとして華々しい人生を送ってきました。

 

ところが……まことさんの順調な人生が、次第に暗転していきます。

「シャ乱Q」の活動休止などもあって、まことさんの音楽活動が思うように行かなくなったのです。目標を見失ったまことさんは、喪失感のあまり、すっかり元気をなくしてしまいました。

 

奥さんは「このままでは夫が持たない」と感じました。そしてまことさんの笑顔と元気を取りもどすため、ある決断をします。それは、自然豊かな山梨県へ移住をすることでした。

 

この決断は、ミュージシャンのまことさんにとってリスクを伴うことでした。音楽の仕事の中心は言うまでもなく東京であり、山梨へ移ることで仕事に支障が出ることも考えられるからです。

 

しかし、奥さんの願いどおり、まことさんは山梨の自然に囲まれた生活で、かつての笑顔を取りもどすことができました。仕事の中心であった東京をあえて捨て、地方の自然に囲まれて過ごすことで、まことさんは見事に生きるエネルギーを取りもどしたのです(「上・京・物・語」の逆を行ったのですね)。

 

もちろん多くの分野で、仕事の中心が都会であることは、否定できない現実です。とはいえ都会で働き続けるうちに、心がストレスで圧迫されやすい面があるのも事実でしょう。

いま一度、地方ならではの「癒し効果」というものも、見直されるべきなのだと思います。

 

記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)