ここまでの連載で、地方で働くことのメリットやハンディキャップ、さらには地方の仕事を成功させるコツについて、様々な角度から見てきました。
今回からは、地方の仕事を成功に導くカギとなる「副業」について、その職種ごとにじっくり考えていきたいと思います。
副業の分類7パターン
副業とひと口に言っても、その職種は多岐にわたります。その主要なものを大まかに分類すると、以下の7パターンになるでしょう。
【通いの仕事】
1.講師系
2.接客系
3.運輸・肉体系
【リモートワーク】
4.IT・クリエイティヴ系
5.物販系
6.ネットビジネス系(物販以外)
7.財テク系
これらのうち、1~3までが通いの仕事であり、4~7までがリモートワークとして取り組める仕事です。
今回から数回にわたって、まずは「通いの仕事」を副業とするパターンを、具体的に考えていきましょう。
副業のパターン1.講師系
副業の有力な職種のひとつに、人にものを教える講師系の仕事があります。
代表的なのはもちろん家庭教師や塾講師などですが、それ以外にもスポーツ・フィットネス(注)系のインストラクターや、茶道・華道・ダンスといった芸能の指導者など、講師の仕事にも様々なものがあります。
いずれも夜間のクラスであれば、本業を終えた後に講師の仕事ができます(特に学校帰りの生徒を相手にする塾や家庭教師の仕事は、夜間の求人も多くあります)。そのため、副業としてのポピュラーな地位を、長きに渡って占めているのです。
(注)フィットネス……健康増進のために行う運動のこと。近年は水泳・ヨガなどの各種講座を集めた「フィットネスクラブ」も人気を集めている。
そこで今回は、塾講師と家庭教師を勤めた人の体験談から、「教える副業」について考えてみたいと思います。
教えるための「準備」も仕事
今回ご紹介するのは、塾講師・家庭教師として働いたAさんの事例です。
Aさんは昼間に会社勤めをしていたのですが、収入が物足りなかったので、夜の空いた時間を使って副業をすることにしました。
彼がまず仕事先に選んだのは、塾の講師でした。給与は時給換算で1,800円と、普通のアルバイトよりずっと高額です。大学受験の経験から、教科の知識にもそれなりに自信があったAさんは、迷わずに塾での仕事を選びました。
塾講師の仕事をしばらくやってみて、Aさんは重大なことに気がつきます。
「この仕事、時給がいいからって、必ずしも効率よく稼げるとはかぎらないな」
そう、塾の授業は時給でみれば好待遇でした。ただし、授業時間の前後にも仕事があったのです。
まずはなんといっても「授業の準備」という大切な作業があります。Aさんは中学生の授業を任されましたが、大学受験の経験から、教科の知識にはかなりの自信を持っていました。しかしいざ現場に出てみると、授業の準備に時間をかけないことには、とてもやっていけない仕事だったのです。
なぜ中学生相手の授業に、そこまで準備が必要なのか? 主な理由は以下の3つでした。
- 教科の内容を忘れている
- 昔と今では教える内容に違いがある
- 「知っている」ことと「教える」ことは違う
まず社会人にとって、中学時代ははるか遠い昔のことです。よって自分が分かっているつもりでも、かつて学んだ教科の内容を忘れていることがあります。さらには教科の内容そのものも、昔と今では異なるケースもあります。よって子供時代に学んだ内容とはいえ、決して過去の蓄積にあぐらをかいていてはいけないのです。
そしてさらに重要な点は、講師自身が教科内容を理解していても、生徒に上手く教えられるかは別問題だということです。生徒の習熟度に合わせて教え方を工夫する必要があり、それには授業前の十分な準備が欠かせません。
こうした授業準備の手間を考えると、時給の高い塾講師(あるいは家庭教師)が「割のいい仕事」だとは、一概には言えないのです。
生徒をよく観察すること
Aさんはその後、家庭教師の副業も体験しましたが、ここで貴重な経験をします。
ある派遣先で、いつもは素直に言うことを聞く生徒が、どういうわけか反抗的で、やる気をなくしていることがありました。Aさんは厳しく叱責しようとも思ったのですが、その前に生徒のことをよく観察してみることにしました。すると生徒は、いつもは簡単に解けるレベルの問題でつまづき、イライラしていたのです。
Aさんは、生徒が部活動でとても疲れているのだと知りました。疲れているため授業に集中できず、いつもは解ける問題でもつまづいてしまっていたのです。
そこでAさんは、生徒にあえて簡単な問題を解かせることにしました。疲れていた生徒も、簡単なドリルで正解するごとに勢いがつき、やがていつものように学ぶ意欲を取り戻してくれたといいます。
人にものを教える仕事では、生徒の状況をよく見た上で、それに応じた対処をしなくてはいけないということでしょう。
これは塾講師・家庭教師にかぎらず、人にものを教える仕事に共通の注意点といえるでしょう。特にスポーツインストラクターなどの仕事では、生徒に運動をさせるわけですから、個々の体調をよく見ておかねばなりません。
教える仕事は、教師ではなく生徒こそが主役なのです。そこをよく理解したうえで、生徒個々に応じた対応をすることが求められます。
以上、今回は講師系の仕事について、体験談を通して見てきました。
次回も引き続き、副業について詳しく考えていきたいと思います。
記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)