u理論とは?
u理論とは、リーダーシップの能力開発や、イノベーションを起こすための思考プロセスを明らかにした理論です。
マサチューセッツ工科大学(MIT)のオットー・シャーマー博士が約130名のリーダーにインタビューを行い、それぞれのリーダーの在り方(Being)に注目。
リーダーシップや高度なパフォーマンスを発揮しているときに、その人の内面で起こっている意識の変化を解明し提唱されました。
u理論のプロセスについて
u理論の実践のためには、7つのプロセスをたどる必要があります。表層的な面から徐々に内面に落とし込み、さらにそれを実践できるよう顕在化するプロセスの形態が「U」の字に似ていることから「u理論」と名付けられました。この7つのステップの簡単な説明についてみていきましょう。
Step1. ダウンローディング
解説書ではダウンローディングを「過去の枠組み」と表現されます。この枠組みとは、「思い込み」と言い換えてもいいでしょう。
ダウンローディングの状態として、相手の答えを予測しながら話したり、本心とは別にその場の空気を読んだ行動が挙げられます。人は誰しも、無意識のうちに過去の経験の中からヒントを得て生活に支障が起こらないよう行動をおこなっているのです。
そしてこの思い込みや、過去の経験(枠組み)から大きく外れた事態が起こったとき、人は思考停止に陥ったり、混乱したりします。u理論ではまず、個人や組織が過去の経験から、問題や事態をどのように捉えているか再現するのです。
Step2. 観る(Seeing)
2段目のステップは、先ほどのダウンローディングで明らかになった事例を過去の経験から判断することを一旦保留にして、新たな視点に立って観ることを指します。
「観る」は、一般的な行動としての「見る」とは意味合いが違います。「観る」とは先入観を取り除き、客観的な立場や一段高い視点に立って問題となっていることを注意深く観察することです。
Step3.感じ取る
Step2の「観る」では過去の解釈に囚われていないため混乱が起きますが、これまで盲点であった事象に気づくこともあるかもしれません。これらを「感じとること」は具体的な解決を導くための大切なステップです。
Step4. プレゼンシング
プレゼンシングは「源(ソース)につながる」と説明されますが、これだけでは考えてもよく理解できない非常に抽象的な概念のように思えます。
日本人にわかりやすい概念としては「悟りが開ける」が近いでしょう。「源(ソース)につながる」ことも悟り同様に困難ですが、一般的にはこのレベルに達すれば、他者への共感、創造的で画期的なビジョンからアイデアを創出できるといわれています。
Step5. 結晶化
Step5からはこれまでの固定観念を取り除き、掘り下げてきた考えを実現化する作業。結晶化とはその第一歩です。プレゼンシングで非常に抽象化され、他の人には理解がまだ及んでいない考えやアイデアを言語化していきます。
Step6. プロトタイピング
プロトタイピング(prototyping)とはその名の通り試作や思考をすること。この時点では、実効性があるかどうかはまだわかりませんから、実験的な行動を重ねて行くことが重要です。
トライ&エラーの中から具体化が可能なものを見つけ出していくので、困難は伴いますがあきらめないことも大切。
Step7. パフォーミング
最後のStepは、これまでのすべてのプロセスを通して得られた新しいビジョンやアイデアの実践です。
主にプロトタイピングの過程で成功したことを、より完成度を高めて実践を続け、習慣化させていきます。またビジョンを集団や組織の中で共有し、組織全体で実践していくことも含まれます。
リーダーシップに必要なプレゼンシング
u理論は冒頭でも紹介したように、世界で活躍しているリーダーの行動原理を基に提唱されました。リーダーは、いくら有能な人でも一人では限界があります。
そこで必要になるのが、目標に向かってチームをまとめ、指導的な行動をとることリーダーシップです。威圧的に指示を出すことはリーダーシップではありません。真のリーダーシップに必要なのは「ビジョン」です。
ビジョンが明確であれば周囲を巻き込んで人々を動かすことができます。またビジョン実現のためには、課題解決力もリーダーには必要。
u理論のステップでは意識状態が表面に近いレベル1は多くの人が理解できますが、レベル4のプレゼンシングに達するのは多くの人には難しいことです。だからこそリーダーは、このレベルに達するほどの能力や思考を開くことが求められるのです。
初心者でも読める!u理論のオススメ本
u理論は非常に難しく、そのため疑念を抱く人がいるも事実。これまでの説明をより深く知るために、初心者向けの書籍をご紹介しましょう。
人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門
中土井 僚氏はu理論をベースに人や組織の課題に取り組み、リーダーシップ開発や組織改革を支援しています。u理論に精通し、この入門書では、理論の解説だけではなく、自身の実体験も書かれているため具体的でわかりやすい内容となっています。
マンガでやさしくわかるU理論
「人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門」著者でもある中土井 僚氏が監修を行い漫画でu理論の紹介をしています。
まったくの初心者、知識のない読者には読みやすいかもしれませんが、u理論の解説書としては物足りなさを感じるかもしれません。
出現する未来から導く――U理論で自己と組織、社会のシステムを変革する
こちらはu理論の提唱者C オットー シャーマー氏の近著です。同氏の著書「u理論」は、2010年に日本でも翻訳版が発売されていますが、こちらの方が実用的な内容になっています。
出現する未来から導く――U理論で自己と組織、社会のシステムを変革する
「出現する未来」の意味と社会の変革について
u理論を読み解く上で出てくるワードのひとつが「出現する未来」。これは、理論を知る前であれば自分とは関係なく突然目の前に現れる(開かれる)未来と、受動的に受け取られがちです。
しかし理論の理解が進むにつれ、「どうすれば自分が未来を出現させられるか?そのきっかけを作れるか?」ということがわかってきます。未来を切り開くのはリーダーだけではありません。社会の変革を永続的に続けるためにもu理論の実践は有効な方法です。