ソーシャル時代のリスクマネジメント
そもそもリスクマネジメントとは?
リスクマネジメントとは、一般的に企業経営に悪影響を与える、さまざまなリスクを把握し、合理的に回避・極小化するための経営管理手法のことです。
またリスクマネジメントには、事前にリスクを回避するための措置と、起こった場合の補償等による対応という2つの側面があります。経営の多角化・グローバル化によって、企業や事業を存続させる上で重要な経営課題として捉えられています。
ソーシャル時代の新たなリスク
そもそも企業を取り巻くリスクとして、特定のリスクのみを対象にするものではなく、あらゆる可能性を考え、検討されるべきものです。地震や津波といった自然災害によるリスクは昔から存在しており、企業でも対策が取られているケースは多いですが、最近ではインターネット上の風評被害や炎上なども、ソーシャル時代の新たなリスクとして注目されています。
顧客との信頼関係が重要な企業にとって、インターネット上での風説の流布や、悪評の拡大は、企業の存続に大きくかかわってきます。企業を取り巻く社会環境が数年単位で変化しているように、社会の複雑化・技術進歩などにより、リスクがよりいっそう多様化する傾向にある点に注意しなければなりません。
ネット風評被害の事例とリスクマネジメントの手法
ネット上に瞬く間に拡散する「風評被害」のリスク
風評被害(レピュテーションリスク)は言ってしまえば「噂による被害」ですが、ソーシャル時代では企業の不祥事や事故が、報道によって拡大解釈される。またブログやSNS、動画共有サイト、ネット掲示板等で瞬く間に連鎖反応を起こしたりと、看過できない大きな問題となっています。
もっとも大きなところでは、東日本大震災の原発事故以降、風評被害によって福島県産の農作物の売り上げが多大な大打撃を受けたという事例があります。
ネット風評被害の対策は決して容易でありません。ネット上の悪意ある書き込みは瞬く間に拡散する一方、安易に削除するとかえって被害を拡大してしまうおそれもあります。
企業の場合、自社の商品やサービスに対する悪意ある評判が広がると、経営・営業面に多大な被害をもたらします。消費者による評判のみならず、社員や退職者などの悪評や告発にも備えなければなりません。
ネット風評被害のリスクマネジメントの具体的な手法
ソーシャルメディアに悪意のある書き込みなどが発見されたときは、誹謗中傷の被害が拡大するのを防ぐために、できるだけ早めの処置をすることが必須となります。
ブログやSNS等への書き込みは、企業の関連部署や従業員自体が発見するよりも、関連する企業、直接関わる消費者からによる通報、あるいは売上の動向などによって発覚する場合が多いのが現状です。
ネット炎上のリスクマネジメントの事例と手法
ソーシャルメディア活用による「炎上」のリスク
最近では、ある事例についてネット上で論争が巻き起こる現象を「炎上」と呼び、炎上の拡散力を利用した「炎上商法」という手法が話題となっています。コンビニエンスストアのアルバイト社員が、アイスの冷蔵ケース内で寝転ぶ写真をSNSに投稿し、大炎上した事例も記憶に新しいところです。
また、企業の広告やCMなどから消費者が受け取るイメージは多種多様です。それが差別的な表現であると感じたり、倫理的に問題があると受け取られた場合、炎上トラブルに発展するおそれがあります。
ネット上での炎上トラブルは、瞬く間に広範囲にわたって伝播し、さらには拡大解釈や曲解されたりして短期的・直接的な被害のみならず、企業のブランドイメージが低下することで被害が長期化する危険性もあります。
炎上のリスクマネジメントの具体的な手法
昨今ではソーシャルメディアを利用して広報活動やマーケティングを行う企業も少なくありません。企業を脅かすソーシャルメディアを起点とするネット炎上は、今や大きな社会問題に発展しています。従業員の個人利用における、ソーシャルメディアのリスクマネジメント対策も講じる必要があります。
- ソーシャルメディアの基本指針(ポリシー)の明確化
- SNS利用の社員教育
- ソーシャルメディア対策の社内体制を構築
- ネット上の書き込みを監視するモニタリングプログラムの導入
- リスク発生時の危機管理のための対応プログラムの導入
上記のような対策を事前に検討し、発生した場合にどういう手順で対応するのかを準備することが大切になってきます。
企業のソーシャルメディアの向き合い方が問われている
ソーシャルメディアの活用が企業のブランディングやマーケティングに多大な恩恵をもたらす一方、ソーシャルメディアのリスク管理の優劣が、企業の命運を分ける時代になってきたと言っても過言ではありません。
企業としては、ソーシャルメディアによる脅威を軽視せず、社内ルールの策定や従業員への教育、管理システムの導入など、あらゆるリスクマネジメントを講じる必要があります。