育児と介護の同時進行ダブルケア問題が深刻

「ダブルケア」とは、育児と介護の両方の負担をひとりで抱えることを言います。ダブルケアをしている人「ダブルケアラー」は、今後ますます増えていくと予測され、深刻な問題だと認識されています。

なぜダブルケアラーが増えているのか。その理由や背景、そしてダブルケアの対策についても解説していきます。

急増するダブルケアの現在の状況

ダブルケアとは、広義では、介護が必要な親族や近親者が複数存在し、ダブルで面倒を見なければならない状態を指します。最近問題になっているのは、その中でも、親族や近親者の介護と育児を両立する人のことを言います。

2012年~2014年に6歳以下の子供をもつ母親たちにおこなった調査では、「ダブルケアに直面中」または「数年先に直面する」と回答した人が32%いるという結果になりました。

ダブルケアラーが増えた原因や背景

ダブルケアラー(ダブルケアに直面している人)が増えている背景には、夫婦が子供を産む年齢が上がっていること、そして高齢化という二つの原因があります。

例えば40代で子供を育てる世帯は、親世代が70代ということも珍しくありません。子育て中に親が要介護になり、ダブルケアに直面する夫婦は年々増えています。

ダブルケア問題が深刻な理由は?

ダブルケアは深刻です。ただでさえ大変な介護と育児の負担が、同時にやってくるのです。そして、そのような状況では、働きに出ることも難しい状況になります。

働き盛りの30~40代に働きたくても働けず、家計を支えることができないのは、とてもストレスを感じると言います。

さらに、まだダブルケアに対する行政のサポートや国民の理解も低く、ダブルケアラーは「誰も助けてくれない」と孤独に陥りがちです。

仕事をやめざるを得ない状況になる

ダブルケアラーは40代前後の世代がほとんど。ちょうど働き盛りの年代にもかかわらず、会社のサポートが得られないケースが多いそうです。

介護休暇や育児休暇はありますが、期間はとても限られています。ダブルケアで休みがちになり、正社員として働くのが難しくなり、働きたいのに離職する人が後を絶ちません。

政府が進めている働き方改革の中にもある「多様性のある働き方を認める社会」にならなければ、ダブルケアラーが職場を得るのは難しいと言わざるを得ませんね。

子どもと向き合う時間や自分の時間がない

高齢者や障がい者の介護は大変なものです。介護にかかりっきりになり、なかなか育児や子どもと向き合う時間が取れず、悩む方も多いようです。また、介護と育児の負担で、自分の時間を取ることはもちろん困難です。

さらに、パートナーが協力的でない場合に、一人で負担を抱える女性も多く、その悩みを共有できる場所がないことも深刻な問題といえるでしょう。

誰も助けてくれず、相談する相手もいない

ダブルケアの調査では、「現在直面中」の12.4%、「過去に直面した」の16.5%が、「誰も助けてくれなかった」という回答をしています。ダブルケアの場合、相談したくても誰に相談すればよいのか分からず、一人で抱え込み孤立化してしまうという問題があります。

精神的・肉体的負担が大きい

介護と育児の両立による肉体的負担に加えて、「働きたくても働けない」「子供と向き合う時間がない」「自分の時間を取れない」「相談する相手が見つからない」という理由が重なり、ダブルケアはとても精神的にも肉体的に負担が大きいものです。

介護で余裕がないことを周りの人たちが理解してくれなかったり、十分な行政のサポートが得られなかったりすることも、さらなる精神的な負担を助長しているようです。

ダブルケアの状況を良くする取り組み

行政のサポートが行き届いていないダブルケア対策。その中でも、よい方向に動いている取り組みをいくつか紹介します。

活発な対策をおこなっているのが横浜

ダブルケアへの取り組みが活発なのが、神奈川県横浜市です。横浜市はクラウドファンディングやオープンデータを活用して、ダブルケアに対するサポートをおこなっています。

横浜市は待機児童ゼロに向けて保育所を増やし、要介護認定者も増やしました。それでもダブルケアに対するサポートにまで足りないので、民間との提携を実施。

ダブルケアサポート横浜というNPOを立ち上げ、ダブルケアラーへのきめ細かいサポートができるように動いているのです。

ダブルケアカフェなど交流の場も

ダブルケアカフェも、横浜市から始まった取り組みです。なかなか悩みを相談できないダブルケアラーの交流の場を設けました。不定期ですが、いろいろな地域で開催されていて、どんなサポートを受けられるのかなどを相談できる場です。

コミュニティサイト「ダブルケアトーク」で意見交流

前述したように、なかなか悩みを相談する相手がいないダブルケアラー。その受け皿になるような交流サイトがあります。それが「ダブルケアトーク」です。

社団法人ダブルケアサポートとニューアーチデザイニング株式会社が運営している「ダブルケアトーク」には、ダブルケア中の悩みを投稿できる掲示板や、過去に経験した方の体験談、ダブルケアのためになる書籍紹介などのコンテンツがあり、意見交換が可能です。

政府・民間問わず、助け合っていくことが必要

ダブルケアの問題が多く語られ始めたのは2010年に入ってからですが、これからますます高齢化が進み出産年齢が上昇する中で、さらに多くのダブルケアラーが生まれる可能性があります。ダブルケアに対しての認識を深め、政府・民間問わずに助け合っていくことが必要です。

(参考媒体:①Wikipedia、②http://double-care.com/category/research)