STEAM教育とは?

STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字から取った、人材教育の言葉のことです。オバマ前アメリカ大統領が、ハイテク分野に携わる人材不足の懸念から、STEAM教育分野を優先課題として演説で取り上げ、全世界に広がったと言われています。

オバマ前大統領は「ビデオゲーム(=テレビゲーム)を買い、アプリで遊ぶだけでなく、それらを作り出せる人材になろう」という主旨の演説をしました。世界中に広まったSTEAM教育は、有名企業の創業者(Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏やMicrosoftのビル・ゲイツ氏など)も賛同しており、NASAをはじめ世界各国の教育機関で実施されています。

なぜ今、STEAM教育が必要なのか?

野村総合研究所は2015年、英・オックスフォード大学との共同研究で、国内601種類の職種ごとの10~20年後を予測した結果、日本の労働人口の49%が、AIやロボットで代替できる可能性が高いとの結論を発表しました。

急速に進むAIの発展により、銀行システムや工場の生産ラインをはじめ、医療や介護、農業に至る分野にまで徐々に「人間でなければならない」職業領域が減少しつつあります。

一方「第4次産業革命」と言われる大きな時代の流れの中でも、クリエイティブな職種、つまりAIやテクノロジー進化を生み出す理数系人材や人の感性に訴える芸術系人材は圧倒的に不足しています。新時代を生き抜くためにも、AIに代替されにくいSTEAM教育を施された人材育成は、日本のみならず世界中の国々でも急務といえるでしょう。

世界のSTEAM教育の現場は?

世界のSTEAM教育の現場はどうなっているのでしょうか。今回はSTEAM教育を熱心に取り入れている、アメリカとシンガポールに焦点を当てて見てみましょう。

①アメリカのSTEAM教育状況

STEAM教育先進国のアメリカでは、フロリダ・ポリテクニック大学がSTEAM教育特化型の工科大学として創立され、メリーランド大学やシンシナティ大学ではSTEAM教育専門教員の育成修士プログラムを開設しています。またNASAでも、将来の宇宙調査を担う人材育成のため、STEAM教育のカリキュラムを実施しています。

最新のSTEAM教育実践型の学校としては、元Googleのマックス・ヴェンディラ氏設立のaltschoolが挙げられます。同校は、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏が1億ドルを出資したことでも有名です。

学習状況をモニタリングしつつ、多彩な最先端教科から個人に合わせたカリキュラムを学習するシステムになっており、従来の学校教育とは一線を画した、新しいSTEAM教育の先駆け的な存在ともいえそうです。

②シンガポールのSTEAM教育状況

2016年6月時点において、人口は約561万人、国土は東京23区(621km2)よりやや広い719km2の国土をもつシンガポールは、とくに教育熱心な国として知られています。

シンガポールでは元々学生や教師だけではなく、教育プログラムも常に評価・最適化されています。また個人の適性ごとに、細分化された教育システムにより、エリートは国家の中枢を担うに相応しいエリート教育を、技術に強い人材は技術者へと個別に振り分けていくシステムを取っています。

シンガポールのSTEAM教育の中心地は、サイエンスセンターです。サイエンスセンターは、世界130か国以上で開催され、新発明をもたらす場として知られる「メイカーフェアシンガポール」の運営母体でもあります。

このサイエンスセンターでは、通常の教育以外にも、退職したエンジニアを中心にした300以上のクラスを開設し、国家を挙げてSTEAM教育の強化に努めています。

日本のSTEAM教育はどこまで進んでいるのか?

日本におけるSTEAM教育状況はどこまで進んでいるのでしょうか。残念ながら、現在日本のSTEAM教育は、アメリカやシンガポールのように国家主導ではなく、民間レベルに留まっているようです。しかし2020年度からは、2万校の小学校でプログラミング教育が必修化されるようですので、今後のSTEAM教育の推進が期待されます。

それでは、現在STEAM教育を推進している民間スクールを一部ご紹介しましょう。

①STAR Programming SCHOOL

同校は、総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業」に2期連続選定された実績のあるスクールです。習得・企画・創作・発表、4つの学びの特徴を実践しつつ、子供たちのSTEAM教育に寄与しています。

同校では、年長から中学3年生までを対象としたSTEAM教育を実践しており、コースには「タブレットプログラミングコース(60分×20回)」「Scratchプログラミングコース(90分×60回)」「ロボットプログラミングコース(90分×40回)」の3種類があります。少人数のクラス編成で、タブレット端末やパソコンがあれば自宅でもプログラミングが継続できます。

②Tech Kids CAMP

同校は、IT企業・サイバーエージェントが運営する、STEAM教育の本格的なスクールです。子供向けのコースだけではなく、本格的なプログラミング言語を学習するコースもあり、ハイレベルなプログラミングも学ぶことが可能です。

同校のコースには「継続学習コース」と「短期体験コース(6時間×2日)」の2種類があります。継続学習コースは、1年目でプログラミングの基礎を学べるFirst Stage(40コマ)と、2年目以降で本格的なプログラミング言語を学んだうえでアイデアを実現する力が身に着くSecond Stage(80コマ)があり、1コマは120分間かけてじっくり学ぶことができます。

③STEMON(ステモン)

同校は年長から小学生までを対象とした、プログラミングとSTEM教育(ここではAのARTは対象外です)を行う教育スクールです。理数ITに強い人材に育てる「ものづくり型」のSTEM教育を行っており、体験を通じた「創造力・表現力・伝達力」を育む教育を目指しています。

同校では最長6年の理数IT教育をしており、大きく分けてSTEM教育コースとプログラミング&ロボティックスコースの2種類があります。

STEM教育コースでは、年長向けのキンダリークラス、小学1年生向けのベーシッククラス、2・3年生向けのアドバンスクラス、3・4年生向けのキッズエリート、4年生以降の1st STAGE・2nd STAGEがあり、年齢に応じて学習することができます。

AIに使われる人間にならない為、今こそSTEAM教育を

AIの技術革新が進むにつれ、遠くない未来ではAIを使う人間とAIに使われる人間の2極化が進むと言われています。AIに使われる人間にならない為には、先端の科学技術やIT知識、そして芸術的な創造性が欠かせません。

学んだ知識をただ学んだだけにせず、その知識を活かし、更なる革新やまったく新しいものを生み出す力を育むSTEAM教育は、今こそ必要なのではないでしょうか。

※参考URL:
http://www.stemon.net/
http://www.star-programming-school.com/
https://life-is-tech.com/