グローカリゼーションとは

グローカリゼーションとは、「グローバリゼーション(地球規模で全世界的な)」と「ローカリゼーション(限定的な地域や地方)」を合わせた造語です。

ビジネス的には、世界的に通用するサービスや商品を展開しながら、より販売を拡大させるために地方や地域のニーズにこたえた商品を提供することです。グローカリゼーションはビジネスの場面だけではなく、文化や社会の在り方の中にも見ることができます。

グローカリゼーションまでのさまざまな動きについて

国際化とグローバル化の違いと日本での事例

国際化とグローバル化(グローバリゼーション)の違いは、国際化(インターナショナリゼーション)が他の国と日本、1対1を基本にしているのに対し、グローバル化は最初から世界全体を相手に美にネスを展開させている点です。

日本では1960年代には主に欧米諸国への進出は始まっていました。しかし、1964年まで海外旅行も自由に行えず、1971年まで固定相場制(1ドル360円の固定相場)など、世界でビジネスを展開するには厳しい状況にあったといえます。

1973年には完全変動相場制に移行し、それ以降波は円高に推移、海外との交流も増えていきました。日本では、1980年代にようやく「国際化」という概念が一般に広まったのです。その後は、当初から世界規模に展開させるグローバル化につながります。

世界と日本企業のグローバル化

グローカリゼーションの片輪であるグローバリゼーションは、世界規模の普遍的な価値観でビジネスを進めます。世界的に見れば、グローバリゼーションの始まりは第二次世界大戦後から始まり、加速が本格化したのは1990年代、ソ連崩壊後です。

グローバル化にはブランド力が欠かせません。たとえば、AmazonやGoogleは両方ともアメリカの企業ですが、名前を聞いただけで誰もがその内容を知っているブランドです。

日本でも製造業などはグローバリゼーションも視野に入れて商品の開発やビジネスを展開させてきました。日本企業でグローバル化を成功させた企業である、TOYOTAやSONYも、世界的なブランドとして認知されています。

グローカリゼーションの概念

グローカリゼーションの概念は、世界に通じる普遍的な意識で物事を考えながら、その地域の特異性も同時に取り入れたサービスを行うことで事業の成功につなげていくことです。

グローカリゼーションは、グローバル化が抱える欠点を補完することができるため、注目を集めています。グローバル化では、技術力の高い企業が国という枠組みを超えて、海外の資本も取り入れながら展開していきます。

しかし、本社の方針や企業文化をそのまま各国(地域)に当てはめるだけでは成功しません。ここで、地域の文化や社会システム、人口構造などをニーズとしてとらえ、商品やサービスに反映させるローカル化が必要になります。

グローカリゼーションの事例

「テリヤキ・キムチ・ベジ」マクドナルドの戦略

日本マクドナルドの歴史

マクドナルドの戦略は、グローカリゼーションのもっとも有名な事例です。日本マクドナルドは1971年5月に設立、同年7月に東京銀座三越に1号店を出店します。初期の商品は「ハンバーガー」「チーズバーガー」「ビッグマック」「マックフライポテト」など、本国で販売されているメニューばかりでした。

この事業展開でも当初は順調に業績を伸ばし、1982年に外食産業の売り上げ首位に、1984年に全国売上高1000億円を突破しました。1989年に日本人が好む味付け「テリヤキバーガー」が登場すると大ヒット、1991年には全国売上高が2000億円に達成したのです。

世界のマクドナルドのローカル商品

マクドナルドは、その後も国や地域でさまざまなハンバーガーや商品を展開しています。2002年には韓国マクドナルドで「キムチバーガー」が、ヒンズー教の多いインドでは牛肉が食べられないため、2013年の進出時には野菜だけの「ベジバーガー」を提供しました。これら以外にも、ドイツ「ソーセージバーガー」、トルコ「マックトルコ(ピタパンにケバブをサンドしたもの)」など地域性を重視したメニューがあります。

自動車製造業では「あたりまえ」だった

トヨタのグローバル化と現地化について

2009年まで、日本の自動車産業は日本が世界最大の輸出国でした。同年には世界の正味輸出金額の32%を占めていたのです。そこでまず、TOYOTAの例をとって自動車産業のグローカリゼーションのあり方を見ていきましょう。

TOYOTAは1957年にクラウンをアメリカに輸出したのをはじめとし、現在では170国以上の国と地域で販売されています。TOYOTAは海外にも拠点を設け、グローバル化を推進させるために「品質の確保・どこ作っても同じ品質」を実現しました。

しかし、ローカル化や各拠点の自立化も重視し、海外拠点では本社である日本のサポートをあえて最小限に抑え、現在もグローカリゼーションを続けているのです。

輸出先に合わせた仕様変更

次に、これまでの日本の自動車産業で行ってきた戦略について説明します。日本の自動車産業では、輸出の際に現地の法律に合わせ、左ハンドルに仕様変更しており、車名も販売地域に合わせて日本とは違う名称です。

例を挙げれば、三菱パジェロはイギリスでは「ショーグン」、Honda FITは中国やヨーロッパなどでは「JAZZ」という社名で販売されています。1960年代、日本の自動車産業は世界ではブランド力もありませんでした。圧倒的不利の中、各国需要に合わせるのは当然の戦略だったのです。初期に海外進出した日本の製造業は、まずローカリゼーションありき、その後に世界基準を築きますので、もともとグローカリゼーションの要素を持っていたといえます。

グローカリゼーションで起こったおもしろい事象

グローカリゼーションには地域性を重視します。現地のニーズを汲み取ることで販売の拡大は図れるかもしれませんが、全体としての利益が上がらないリスクや、カントリーリスクによって事業の撤退を余儀なくするなどのリスクもあるのです。本項では、リスクとまではいきませんが、グローカリゼーションによるおもしろい事例を2つご紹介します。

携帯電話の「ガラパゴス化」

ガラパゴス化とは?

「ガラケー」はスマートフォンが普及する以前、日本の携帯電話の規格が世界標準から離れ「ガラパゴス化」していた2006年ごろに使われ始めました。ガラパゴス化とは大陸から離れたガラパゴス島で生き物が独自進化をしたように、商品が世界標準(グローバル規格)から外れ、限定された地域で独自の規格に進化することです。日本のガラケーは、グローカリゼーションのリスク紹介の事例になります。

国内メーカーさえ撤退

当時日本では、携帯電話の本体代金は7万円~8万円ほどでした。端末機は通信業者がメーカーから買い上げ、販売店では契約時に通信料の一部で価格の調整を行い、見かけ上端末代金が無料か、または格安に設定されていました。

端末には、ワンセグテレビやカーナビなど付加価値をつけ、高性能を求められたため海外では非常に高価なハイエンドの商品になり、日本だけのために生産をすることになります。さらに、日本で使われていた周波数帯も世界標準ではなかったため、海外のメーカーだけではなく、三洋電機・三菱電機など日本の電機産業でさえも撤退を余技なくされました。

インスタントラーメンのシェア争い

国内シェアは日清食品が50%以上

日本でインスタントラーメンの会社といえば、チキンラーメンを発明した安藤百福が創業した日清食品でしょう。日本の即席めん業界は長期にわたって、東洋食品・サンヨー食品・明星食品・エースコックの寡占業界でした。2007年には、日清食品が明星食品を買収、国内シェアは50%を超え、業界2位の東洋食品の20%と比べて大きく溝を開けました。

北米市場では「Maruchan」に軍配

しかし、海外市場に目を向けると、日清食品は東洋水産に出遅れています。アメリカでは東洋水産が約65%のシェアをもつ一方、日清食品は約33%です。メキシコでは東洋水産が約85%、日清食品は約12%とさらに大きな差があります。

日清食品、東洋水産ともアメリカでの価格はカップ麺で3個1ドル程度、袋めんは5個で1ドル程度とあまり差はありません。日清食品では、北米でもカップヌードルは、カップのデザインは日本とほぼ同じ、出前一丁は商品名を「DEMAE RAMEN」と若干変更はしていますが日本語ですし、パッケージには漢字のロゴと出前坊やの印刷されています。

一方、東洋水産はアメリカに「Maruchan」という法人を設立しました。商品名はカップ商品で「Instant lunch」、袋めんは「Ramen」として販売、味はポークやチキン、ビーフとスープのバリエーションも多くなっているのです。

この2社は日本と北米でシェアの逆転現象が起きていますが、日新食品はヨーロッパやトルコにも進出をはたしており、今後も世界の各刻企業も巻き込みながら、シェア争いが展開されていくと思われます。

グローカリゼーションに重要な「文化」の理解

国や地域の文化を構成する代表的な要素は「言語」と「衣食住」です。
衣食住のうち、衣服はファストファッションブランドを中心として西洋風にほぼ統一、グローバル化がすすんでいます。住居は建材などでグローバル化はできても、その地域や国の気候、また、ライフスタイルの違いなどから建築方法が異なるため地域性が色濃くなるのです。最後に食品は、ベースとなる製粉や製造ラインはグローバル化でき、味やパッケージのローカル化は製造ラインにより変更が他の産業よりも行いやすいことが想像できます。

また、すべての業種に通じる商品名やネーミングはその地域の言語に由来する(音が近い)、呼びやすくイメージのようものにする方がヒットを呼びやすいでしょう。企業がグローバル展開をするときには、ローカル化によるコストやリスクを常に注意しつつ、グローバルとローカルのバランスをとっていくことが必要なのです。