ジョブクラフティングとは

まず、シンプルに定義の確認をすると。

仕事に対する向き合い方や行動を主体的になることで、退屈な作業や“やらされ感”のある業務をやりがいのあるものへ変容させる手法のこと

というのがジョブクラフティングです。以下では、例をあげて説明してきます。

「おもしろい仕事ばかりではない」の変革

毎日、毎時間、毎分、大好きでワクワクして夢中で没頭できているという実感を持ちながら仕事をしている人はどれくらいいるでしょうか。そういう仕事を求めている人はたくさんいるはずです。

現実は、そんな自分の理想を考えたり、振り返ったりする余裕もなく、上司からの指示や顧客の対応など「やらなければならない」という義務感に基づいた仕事に追われてしまっている人は少なくありません。

ここでイソップ童話の中に有名な3人のレンガ職人のお話をご紹介しましょう。
ある男が、道々出会うレンガ職人に問いかけます。
「あなたはいったい何をしているのですか?」

一人目の職人は「レンガを積んでいるのです」と答えました。
職人が続ける愚痴ともとれる悲観的な言葉に、男は慰めの言葉をかけて通り過ぎます。

次に会った二人目の職人は「大きな壁を作っているのです」と答えました。
家族を養うためという説明に、男は励ましの言葉をかけて通りすぎます。

最後の三人目の職人は「歴史に残る偉大な大聖堂を造っているんだ」と答えました。
大変ですねという男の言葉を、この職人は否定し、素晴らしい仕事をしていると自分を表現します。

男は、お礼を言って通りすぎるときに自分が元気になったことを感じたのでした。

仕事にどんな心理や姿勢で取り組むかは、成果、毎日の充実感、そして自分の成長をも変える力があります。ジョブクラフティングは、退屈さや義務感で行っているという捉え方を変える力のある理論なのです。

仕事を自分でデザインする

言われたままの仕事をそのままこなしているときは、受け身の対応になってしまいがち。
自分に任された仕事、目の前にある仕事を自分で創り変えていくことがジョブクラフティングです。

人は仕事に対して3つの捉え方をするといわれています。その3つとは「仕事」「キャリア」「天職」です。ちょうど上記でご紹介した、レンガ職人の話にも当てはまる部分がありますよね。

受け身のままでは「仕事だから仕方ない」「しなければならない」となり、この3つの捉え方の「仕事」から抜け出せません。たしかに、仕事をこなすことは必要なことですよね。

しかし、もう2つの捉え方をする人は、たとえ、まったく同じ仕事をしていたとしても、仕事の時間を充実させ仕事の質を上げることも同時に叶えてしまえるのです。

自分で仕事の仕方を考えたり工夫したりする、つまりデザインすることがジョブクラフティングですが、意識しなくても習慣になっている人もいるでしょう。そこには、やらされ感など存在せず、ポジティブな時間の経験があるはずです。

慣例にオリジナルを取り込む

好きではない仕事、気の乗らない仕事も、自分の強みや得意なことを流れの中に盛り込むことで、意義の高い充実した仕事に転換できるのがジョブクラフティング。

指示された仕事、通例の仕事の流れを、決められたルーチンだと固めてしまっていると、嫌でも不得意でもそれに沿って進めることも多いもの。ネガティブな感情を生むだけでなく、ミスが増えたり、成果の質を下げたりするものです。

ジョブクラフティングによって、ポジティブに捉え、自分にとってポジティブなやり方で取り組むことも可能になります。そして、その成果もルーチン通りに取り組んだときより上げる期待ができるのです。

先にご紹介した3つの捉え方の「天職」の気持ちで取り組んでいくことも可能になるでしょう。

ジョブクラフティングのやり方

ジョブクラフティングは、ポジティブに仕事を捉える精神論で完結するものではありません。その心理作用を利用した、ステップを踏むことで、自分の仕事の流れを創り出していくものです。それぞれのステップにある仕事に関わる項目を、見直して修正を図って行く手法となります。

ジョブクラフティングの4つのステップ

第1ステップ:自己分析

自分の仕事の動機や目的、自分自身の強みや能力を明確に把握することから始めてみてください。これらを見出しておくことは、他のステップの見直しや修正を助けになっていくでしょう。

第2ステップ:関係者との関わり方を見なおす

仕事では、人との関わりを避けることはできません。必ずどこかで、なんらかの関わりが生じているはずです。関わる人やそれぞれの人たちとの関わり方を見直してみましょう。

たとえば、毎日のオフィスでの同僚や上司との接し方や手段を変えてみることも検討材料となりるでしょう。また、関わる人を新たに増やしたりすることが、仕事のプロセスにプラスを運んでくるといわれています。

第3ステップ:自分の仕事の意義を高い視点で俯瞰する

自分の仕事についての意義の捉え方を拡大してみましょう。レンガ職人の一人目の視点と三人目の視点には大きな差がありましたよね。自分の仕事が影響していく、その「良い」波紋を、今までより高くて広い視点から見下ろしてみましょう。

きっと、仕事の価値が違って見えてくるでしょう。自分の視点ではなく、お客様の目で客観視したり、社長の目線で俯瞰したりしてみるのも効果的です。

第4ステップ:創意工夫をしてみる

仕事のやり方を自分なりに変えたり、加えたりの工夫をしてみましょう。プラスになることを自分で考え行動に移し、自信を持って行うその時間は仕事として楽しく感じられ充実度も高くなります。

強みや得意を盛り込むことが最重要ポイントです。思いつくことは、自然に強みから出てくるものなのかもしれないですね。効果や成果が出ればなおさら意欲は上がっていくと思います。

実行後の可能性に焦点を向ける

仕事をやる前の心理や行動にフォーカスするのではなく、仕事をした後のプラスの影響や効果をイメージしながら、取り組むことがジョブクラフティングのポイント。上記のステップを押さえつつ、未来をイメージすることでモチベーションもしっかり湧いてくるはずです。

随時評価、変更を繰り返していく

他にできることはないか、さらに高められるものは何かと探し続ける仕事のスタンスを習慣にしましょう。ジョブクラフティングを活用していくと、自然に「もっと良くしたい」の意識が生まれてきます。

実行を繰り返す中で、周りの人(同僚、上司、お客様)の反応を分析して、自分の変化の実践が有効だったのか、そうでなかったのかを評価します。足りないことがあったら、修正していきましょう。

ジョブクラフティングで得られる効果

プラスのエネルギーが得られる

ここまで、ジョブクラフティングのやり方を読んでいてプラスのイメージが湧いてきませんでしたか?

ジョブクラフティングを実践する本人は、面白くなり、仕事の充実感を味わえます。内側からのモチベーションによって質の高いパフォーマンスも出していけるでしょう。少しストレッチの必要なことでもトライする意欲も出ますし、自分で考えたことをやり切ったときの達成感は格別です。

上記で紹介したマインドセットも含めたステップと工夫によって、仕事時間での自分の心理も出てくる成果もガラリと変わる人も多いでしょう。仕事の中のどの業務やタスクにも活用することができるはずです。このことは、周囲にもプラスのエネルギーを広げていくパワーを持ちます。

リーダーとしての経験値の向上

指示待ちが習慣になって、言われたことだけをこなしていると能力は伸びていきません。なぜなら、そこに労働があったとしても、自分の考えによるものは少しも存在しないからです。ジョブクラフティングは自分の思考をしっかり働かせて、強みを活用した考えやアイデアを取り入れながら仕事を進めることができます。

自律性は確実に鍛えられていくでしょう。目の前にないものを自分で考え、判断し実行することはリーダーシップを鍛えることにもなり、自分自身で経験値を上げていくことにもつながります。改善や修正のプロセスもリーダーには欠かせないスキルです。

組織が支える社員のジョブクラフティング

周りとの業務依存率

組織やチームの中でジョブクラフティングを推奨することは、生産性や業務の質の向上させる上でも有効とされています。何より、社員の自律性を促し、人材育成として機能することはプラスです。

業務の中で、自分の裁量度が高く、同僚や上司や顧客とのやり取りの影響を比較的受けにくい業務にジョブクラフティングは活用しやすいようです。

関わりの煩雑な業務でも協力して取り入れていきたいところですが、自由が行き過ぎて摩擦が発生する可能性もあります。ネガティブなジョブクラフティングにならないようマネージャーなどが気を付けておくことも必要でしょう。

上司の監視率

その仕事に上司がどれくらい介入するかでも、ジョブクラフティングを活用する意欲が変わってくるといわれます。

頻繁に報告が必要だったり、チェックが入ったりすると、社員は業務を自分でデザインするという自由度を見いだせなくなるようです。自主性を望む業務の場合は、信頼を置いて任せるというマネージャーのスタンスも必要かもしれません。

ジョブクラフティングが豊かな仕事を可能にする

ジョブクラフティングのステップを踏むことで、自分の強みを活かしながら仕事を進めることができることは充実感に直結していくようです。

自分で考えたり工夫したりを普段からしているという人も、人との関わりの工夫、意義の再確認を加えてみてください。毎日の仕事がさらに有意義なものになっていき、ポジティブな心で仕事を続けていけるでしょう。