企業におけるターンアラウンドとは?

「ターンアラウンド」とは、ビジネスにおける事業再生や経営改革のこと。業績不良の企業が直面するさまざまな問題に正面から取り組み、事業を再生して企業価値の向上を目的としています。

企業の構造改革と言えば、財務リストラや資産売却などを行う「ワークアウト」もそのひとつですが、こちらは短期的な施策で、長期的なコスト削減と収益性にはほとんど貢献しません。

対してターンアラウンドは、財務・人事にとどまらず、事業・経営・組織・収益といった企業の本質の部分に切り込み、新規開拓、設備投資などの施策を行い、中長期的に企業価値の向上を目的としています。

ターンアラウンド・マネージャーの役割

ターンアラウンド・マネージャーは、企業の業績を回復・再生するスペシャリストです。

経営状況が不振に陥り、破綻しかけている企業、あるいは経営破綻した企業を再生させ、企業価値を高めることを目的として、多くの場合は企業の最高経営責任者として就任します。

ターンアラウンド・マネージャーには、幅広い知識と経験が求められます。それは、企業の財務・法律などを始め、経営能力全般です。また、所属している経営陣では、問題解決の障害になる従来の組織のしがらみにを突破する力も求められます。

そして、これからの未来に向けてのの企業戦略を描き、企業再生の道筋を示す力・改革が求められます。

ターンアラウンド・マネージャーが必要とされる背景

90年代のバブル崩壊後は、親会社やメインバンク、企業再生ファンドから出向を命じられた経営者人材が、債権放棄・資産売却など財務的な処置を中心とした事業再生を主導していました。

しかし2000年代以降、インターネットの普及やグローバル化の加速によって、企業の経営はより複雑化します。そして、従来の財務再建にとどまらず、新たな成長戦略や事業および組織改革が求められるようになっています。

そのため、2003年に産業再生機構の設立に見られるように、ターンアラウンドを専門的に行う人材を企業の外部から送り込む事業再生ファンドビジネスが活性化。新たな職業として注目度が高まっているのがターンアラウンド・マネジャーなのです。

ターンアラウンドを重要視する企業が増えるなか、強いリーダーシップを発揮するターンアラウンド・マネージャーの需要も高まっています。

ターンアラウンドによる企業再生の事例

1990年代初頭にバブル崩壊後には、少なくない企業が経営破綻の危機を迎えました。しかし、危機的状況から再生に転じた企業も少なくないのも事実です。ここでは、実際にターンアラウンドによって業績が回復し、復活した企業の事例をみていきましょう。

経営危機から企業再生へ「カネボウ」のケース

化粧品で知られる「カネボウ」は、1960年代後半に事業の中核であった化粧品以外の分野で新規事業を立ち上げ、多角化経営に乗り出します。しかし、化粧品事業は成長を続けていたものの、それ以外の事業は赤字経営が続いていきます。

経営陣は赤字を隠すために粉飾決算を繰り返した結果、2003年9月には629億円もの債務超過を抱える事態に陥ります。2004年3月より産業再生機構を中心に、採算性の高かった化粧品部門を「株式会社カネボウ化粧品」として本社から分離・独立させ、それ以外の事業にもリストラなどのワークアウト戦略と、経営体制の刷新などのターンアラウンド戦略を実施しました。

結果、粉飾決算をはじめとする多くの問題を抱えていたカネボウは、収益性の高い化粧品事業と繊維事業を本社から切り離して別会社として存続させ、カネボウ本社も企業再生に成功しました。

カルロス・ゴーン氏が手腕を振るった「日産」のケース

ターンアラウンド・マネージャーとしてもっとも有名な人物と言えば、「日産自動車」を再生に導いたカルロス・ゴーン氏をおいて他にはいないでしょう。1999年にフランスの「ルノー」と日産の間に業務提携が締結され、ゴーン氏は最高執行責任者として日産に入社します。

当時の日産は約2兆円に上る巨額の負債を抱え、収益を上げている自動車モデルも、46モデル中3モデルにとどまる状況でした。ゴーン氏は再建計画「日産リバイバルプラン」を実施、生産拠点の閉鎖 や子会社の統廃合、人員削減など大幅なリストラを行うと同時に、新車種の投入、インテリア・エクステリアデザインの刷新、日産ブランドイメージの一新などの計画を次々と実施しました。

1998年に約2兆円あった負債を、2003年6月には全額返済。12%前後まで下落していた国内シェアを20%近くまで回復させるという成果を残しています。

ターンアラウンド・マネージャーが活躍する機会はこれからも増える

グローバル化の現代経済においては、外部環境が変化するスピードが以前よりもはやくなっています。そして変化に対応できない企業は淘汰されるでしょう。

このような状況のなかでは、必然的に企業を再生するターンアラウンドという言葉を聞く機会、ターンアラウンド・マネージャーが活躍する機会は増えるでしょう。