事業再生の現場を経験したプロフェッショナルによる事業再生の現実についての記事の連載を開始いたします。今回は、その記事の予告編として、まずは知られざる「事業再生」について簡単にまとめます。
︎事業再生とは?
皆さんは、事業再生と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?過去にはダイエー、カネボウ、JAL、最近はスカイマークの事例まで、新聞をにぎわせた事例を思い浮かべる方も多いかもしれません。一方で、我々は結果については知ることができるものの、実際の事業再生の現場で起きたことについて知る機会はほとんどないといっていいでしょう。果たして現場では何が起きているのでしょうか?どのようにして達成されたのでしょうか?
過剰債務によって資金繰りが厳しく、事業の継続が困難になった事業者の取りうる選択肢として事業再生があります。事業再生とは、簡単にいうと、企業が倒産状態に陥った場合に、清算するのではなく、債務の一部免除や弁済期の繰り延べなどを行いながら、収益力のある事業を再構築することです。再建の見込みがある場合には、再建計画を立てて事業の再生を行います。債務の整理といった財務の再構築、事業の見直しによる事業の持続可能性の回復を図ります。
例えばこのようなプロセスに関与する、「 事業再生を主たる職業分野とし、かつ当該分野の発展に寄与できる者 」 としては、ターンアラウンド・マネジャー、弁護士、公認会計士、税理士、コンサルタント、フィナンシャル ( リストラクチャリング ) アドバイザー、ファンド運営者等があげられます。
国内でも会員が500名程度在籍している事業再生実務家協会や、事業再生専門家の養成のためCTP(認定事業再生士)、ATP(事業再生士補)資格試験を実施している一般社団法人日本事業再生士協会といった団体もあるようです。
︎戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ
事業再生のバイブルともなっている、元ミスミグループ本社代表取締役社長CEOでボストンコンサルティンググループの日本国内第1号コンサルタントとしても知られる三枝 匡氏の「戦略プロフェッショナル―シェア逆転の企業変革ドラマ」(日本経済新聞社)では、架空のビジネスマン広川洋一を主人公として、医療機器事業の事業再生(事業サイドでの不採算事業の変革)をゆだねられてからの逆転のドラマが実話をベースに描かれています。
経営コンサルタントによる戦略モデルの解説書とは異なる、営業の現場変革や競合製品の開発状況、代理店との交渉など、まさに事業再生の現場が生々しく描かれています。
︎プロ経営者もビジネスノマド?
資生堂の魚谷社長、ベネッセの原田社長、サントリーの新浪社長、カルビーの松本CEO、LIXILの藤森社長など、最近は聞くことが増えてきた「プロ経営者」ですが、これらもビジネスノマドの一形態ということができます。広報や人事、営業、事業開発のプロとして期間限定で企業に実働支援していくのではなく、経営のプロフェッショナルとしてフルコミットで事業再生や成長戦略を描いて実行していく人材といえるでしょう。
︎事業再生につながるキャリアの入り口
今回の連載では、事業会社、コンサルティングファームを経て投資ファンドの下で事業再生の現場責任者として数々の事業の再生を手がけたプロフェッショナルの回想を基に知られざる事業再生の現場を再現してもらいます。
現場で何がおきていたか、そしてそのために必要なスキルとは何か、事業再生には総合的な能力、コンサルタントに必要な分析能力や戦略的な思考だけでなく、ハンズオンで現場を取り仕切る実務能力や多くの関係者を調整していく人間力など、様々な能力が必要とされています。これらの複雑な現場を理解するには、一定の実話に基づいた具体的な記述が最も有効といえます。
今回の連載では、まずは事業再生につながるそのキャリアの入り口から、見ていくこととします。
︎経営コンサルタントが事業再生の現場へ
次回の連載第1回は、「経営コンサルティングから事業再生へ」、戦略プロフェッショナルの転機についてです。
事業再生を手がけるプロフェッショナルが、どうした道筋で事業再生を手がけていくのか、どういった経緯で事業再生の世界に足を踏み入れたのか、そのためにはどのようなスキルの積み上げがあったのか、今回は、あくまで一例、ではありますが、数少ない事業再生のスペシャリストであり、現場を知るハンズオン人材のバックグラウンドがみえてきます。
国内でも有数の大企業に入社し、その後独立系コンサルティングファーム、大手会計コンサルティングファームにて、戦略コンサルティングのイロハを学んだ後に事業再生の世界へと飛び込んだプロフェッショナルがどのような現実を体験したか、是非ご覧ください。
︎① 経営コンサルティングから「事業再生」へ
➢ 内容
- SEから始めた社会人、大企業での「窒息」
- 苦労と困惑を重ねた経営コンサルティング
- 「経営」への渇望と経営コンサルティングの現実
- 事業再生への誘い
︎事業再生の現場へと続く、2回目以降の掲載予定について
第2回以降は、事業再生の現場へと続きます。現場ではファンド、営業、社長の交代と現場を体験したプロフェッショナルならではのコメントから事業再生の現場がわかります。
︎② 事業再生の現実
➢ 内容
- 10年続いた赤字と3度の資金注入の罪
- 空回りする新社長と右往左往するファンド
︎③ 外様の奮闘
➢ 内容
- 見たことの無い営業会議
- なお続く社長の暴走
︎④ 社長の交替
➢ 内容
- ファンドマネージャーもサラリーマン
- 三人四脚のスタート
︎④ 社長の交替
➢ 内容
- ファンドマネージャーもサラリーマン
- 三人四脚のスタート
︎⑤ 赤字の分析
➢ 素朴な疑問「何故、赤字なのか?」
➢ 内容
- エース営業マンは本当にエースか?
- 赤字とは「構造」である
︎⑥ 一縷の望み
➢ 再生への筋道
➢ 内容
- 「赤字の構造」から見出した収益改善プラン
- 少ない武器の徹底活用
︎⑦ キャッシュショートの恐怖
➢ 内容
- 現預金1億円を切る
- 「資金繰り」とは、現金の工面だけではない
︎⑧ 「初めての共同作業」
➢ 内容
- よくある営業と生産の仲違い
- 単純だけど難しいルール変更
︎⑨ 経営方針説明会
➢ 内容
- 力の入った全国行脚
- 薄い反応と反発
︎⑩ 組織の梃子入れと浄化
➢ 内容
- 裏で営業を牛耳る古参役員
- 「売上は彼が支えている」の嘘
︎⑪ 再生プランの実行と損益改善
➢ 内容
- 営業所間前年比競争による10年ぶりのボーナス
- しつこい進捗管理
︎⑫ 再生企業の切なさ
➢ 内容
- 社員にとっては一時的利益より長期的な雇用
- 短期視点のファンドが踏み切れない抜本策
︎⑬ やっぱり投資家は気が短かった
➢ 内容
- 「短期的にもっと売上を増やして」
- 崩れていく中期のプラン
︎⑭ スポンサー探しと宴の終焉
➢ 内容
- 救世主か?現れたオーナー企業
- 御役御免
︎⑮ 再生業務を振り返って
➢ 内容
- 経験できること/修得できるスキル
- どんな人が向くか?向かない人は?
※掲載内容は変更される可能性があります。
順次掲載を開始していきますので、是非ご覧ください。
ノマドジャーナル編集部
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