「起業してみたい」「法人成りしたい」と漠然に思っていても、どのように手をつけたらいいかわからない人も多いのではないでしょうか?そんな人のために、この記事では会社を設立する際に押さえておきたいポイントをまとめてみました。会社設立に少しでも興味のある人は、ぜひ参考にしてみてください。
株式会社だけでない、会社には4つの形態がある
会社と言えば、「株式会社」を思い浮かべる人が大多数ではないでしょうか?
しかし、あまり知られてはいないのものの、会社には株式会社以外にもいくつかの形態があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
形態 | 株式会社 | 合同会社 | 合名会社 | 合資会社 |
責任 | 有限 | 有限 | 無限 | 無限or有限 |
資本金 | 1円〜 | 1円〜 | 規定なし | 規定なし |
出資者人数 | 1人〜 | 1人〜 | 2人〜 | 2人〜 |
代表 | 代表取締役 | 社員全員 | 社員全員 | 社員全員 |
意思決定機関 | 株主総会 | 社員同士の協議 | 社員同士の協議 | 社員同士の協議 |
出資者公募 | 可能 | 不可 | 不可 | 不可 |
主な特徴 | もっともメジャーな会社形態。社員の中の取締役が経営を行う。資金調達がしやすく、社会的信用度も高い。 | 社員全員が経営に責任を持つ形態。経営の自由度が高く設立費用も株式会社に比べて抑えられる。 | 個人事業主の集まりのような形態。数としては非常に少ない。 | 有限責任社員(支援者)と無限責任社員(経営者)にわかれて経営をしていく形態。 |
世の中にある会社の大半が株式会社で、国税庁の平成27年度分会社標本調査結果によると、
- 株式会社…249万479社(94.3%)
- 合名会社…3,876社(0.1%)
- 合資会社…1万8,349社(0.7%)
- 合同会社…4万9,807社(1.9%)
となっています。
また、他にも「有限会社」という会社形態がありましたが、2006年に施行された会社設立に関する法律「新会社法」により設立できなくなりました。それまでは株式会社を設立するハードルが高かったため、事業が小規模の場合は有限会社で会社を設立する人が多くいました。しかし新しい法律では小規模の事業でも株式会社として設立可能になり、存在意義がなくなってしまったため、設立不能となりました。
なお、2006年以前に有限会社として設立された会社は今もそのまま有限会社として機能しています。
設立前には会社設立のメリットとデメリットを抑えておく
「とにかく会社を設立したい!」と思っている人もいるでしょう。
しかし、会社という形態には面倒な部分もあります。会社設立には具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのか、あらかじめ把握しておきましょう。
主なメリット
1:節税効果が高い
法人化すると、給与所得の控除、税率の一定化、欠損金の繰越控除、消費税の免税など、個人事業主に比べて節税できる箇所が多くなります。
2:社会的信用がつく
法人化するにはキッチリと書類を揃え会社のルール(=定款)を決める必要があります。そのため、個人事業主よりも社会的信用力が高く、大手企業や銀行との取引もしやすくなります。
3:会社が破産しても個人に返済義務が発生しない
個人事業主の場合は借金を背負うと個人に返済責任が発生しますが、会社の場合は破産しても個人に返済義務が発生することはありません。ただ、代表者が個人的に保証人などになっていた場合はその限りではありません。
4:決算日を自由に設定できる
個人事業主の場合、事業は1月〜12月と決まっているため、年末の締め作業と繁忙期がかぶってしまうことも珍しくありません。一方、会社の場合は決算日を自由に設定することができるため、事業の繁忙期と締め作業の時期をわけることが可能です。
主なデメリット
1:設立や運営にコストがかかる
会社設立には定款作成、そして登記申請等のコストが発生します。また、毎年法人住民税を赤字でも支払わなくてはいけません。
2:経営の自由度が低くなる
法人化すると個人と会社のお金をしっかりわける必要があるため、自由にお金を使うことができなくなります。
3:社会保険の加入義務が発生する
法人化すると社会保険(厚生年金、健康保険)に加入となりますが、その保険料は本人と会社が折半する形になるため、会社の負担が大きくなります。
会社設立に必要な書類・期間・費用
会社設立はほとんどの工程を自分一人で行うパターンと、工程の何割かを司法書士に依頼して行うパターンのふたつがあります。それぞれのパターンの違いもふまえつつ、ここからは会社設立に必要な書類、期間、費用を解説していきます。
必要書類・道具
登記前
- 会社の実印
- 銀行印
- 社印
- ゴム印
- 定款
- 発起人(出資者)の印鑑証明書
- 収入印紙
- 身分証明書
登記時
- 登記申請書
- 発起人の決定書
- 取締役の就任承諾書
- 代表取締役の就任承諾書
- 監査役の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 資本金の払込証明書
- 印鑑届出書
- 登記する内容のデータが入ったCD-R
司法書士に依頼すると、必要書類の中で準備にもっとも時間のかかる定款を作成してくれるため、設立完了までの流れがグッと短縮できます。
設立費用
1:自分で行うパターン
形態 | 株式会社 | 合同会社 合名会社 合資会社 |
定款認証 | 定款認証:5万円
印紙税:4万円 |
印紙税:4万円 ※電子の場合0円 |
登記代 (登録免許税) |
15万円 | 6万円 |
実印等 | 約2万円 | 約2万円 |
設立目安金額 | 約22〜26万円 | 約8〜12万円 |
2:司法書士に一部依頼するパターン
代行手数料の目安は4〜6万円ほどですが、司法書士にお願いすると大抵の場合は電子で定款認証を行ってくれます。
そのため、目安としては26〜28万円ほどと、自分でやる場合とほぼ同額で収まるでしょう。
目安期間
事前からしっかり準備して滞りなく進めば2〜3週間ほどです。
ただ、これは司法書士に依頼してかつスムーズに進んだ場合なので、自分でほぼすべての工程を行うとさらに時間がかかるでしょう。
書類に不備がありやり直しばかりとなると、会社設立までに1ヶ月、下手をすれば2ヶ月以上かかってしまうことも珍しくありません。
具体的な会社設立手順
ここからは、会社設立の基本ステップと司法書士に依頼した場合どのステップが簡略化できるかをみていきましょう。
会社設立の基本ステップ
会社設立は以下の5ステップで行われます。
1:設立準備
会社設立の具体的な手続きを始める前に、商号、事業内容、発行株式数(株式会社の場合)などをあらかじめ決める必要があります。
2:定款作成
準備した内容を元に、会社のもっとも大切なルール、会社の憲法とも言える定款を作成します。
3:定款認証
定款を公証人役場に持って行き認証申請をします。
4:資本金払込
発起人名義の口座に資本金を入金し、払込証明書を作成します。
5:登記申請
登記書類(発起人決議書、発起人会議事録、印鑑届出書など)を作成し、それらの書類を元に法務省に出向いて設立登記をします。
司法書士に依頼した場合
司法書士には、先に紹介した5ステップのうち、
- 2:定款作成
- 3:定款認証
- 5:登記申請
の3ステップを丸ごと依頼することが可能です。公証人役場や法務省に出向く手間だけでなく、さまざまなルールのある書類作成を請け負ってくれます。
公証人役場に出向くだけでも、公証人とスケジュール調整をしたり、収入印紙を購入したりとさまざまな手続きがあるため、自分ですべてを行うのはかなりの手間です。会社設立に詳しい人は別ですが、基本的に会社の設立は自分でやるよりも専門家である司法書士に依頼した方が得策です。
まとめ
会社設立の際は、まず自分にはどの会社形態が合っているのかを判断するようにしましょう。具体的な設立のフローを自分ですべてこなそうとするとかなりの手間です。その割に費用は数万円しか変わらないので、設立の際は司法書士に依頼することをおすすめします。
執筆者:河内 勝男
会社に勤めつつ2014年から副業を開始。2015年に会社を退職しフリーランスライターとして独立しました。会社員時代の副業経験を活かした記事はもちろん、ライター業以外にサイト運営もしています。