ITに代表されるハイテクベンチャー企業を生み出してきたシリコンバレー。
テクノロジーの強みを生かしながら、個別の業種・業界向けのビジネスで挑戦するスタートアップ企業は日夜生まれている。成功するのはごく一部で、多くは消えていきます。
成功するスタートアップ経営者はどのようなバックグラウンドでどのようなスキルを身に着けているのでしょうか。
各種ビジネスの専門性を身につけた人材であるビジネスノマドに対して、まさにスタートアップの立上げスペシャリストのように、シリアルアントレプレナーとして継続的に事業を立ち上げている人材も当たり前のように数多くいることがわかります。
2015年秋の今、一定の評価を得ながら、これからさらに成長が期待できる企業と、その経営者たちを紹介します。
モバイル株式取引の雄「Robinhood」
分野:金融
URL:https://www.robinhood.com/
CEO:ウラジミール・テネフ、バイジュ・バット
Robinhood(ロビンフッド)は、モバイル株取引アプリケーションを利用した金融テクノロジー(Fintech)系スタートアップ企業。手数料ゼロの株式取引サービスで拡大している。
スタンフォード大学で数学・物理学を学んだウラジミール・テネフ氏とバイジュ・バット氏が、ニューヨークで金融システムの構築に関わった後、カリフォルニア州パロアルトに戻り、2013年に創設した。
バット氏はスタンフォードの数学の修士号、物理学の学士号を持ち、テネフ氏はUCLAで数学の博士号、スタンフォードで数学と物理の学士号を取得している。
手数料ビジネスという証券業界の常識を超越したビジネスモデルが話題となり、インデックス・ベンチャーズ、アンドリーセン・ホロウィッツ、ニュー・エンタープライズ・アソシエーツ(NEA)といったベンチャーキャピタル(VC)に加えて、俳優のジャレッド・レトやヒップホップのスヌープ・ドッグからも資金的・人的支援を受けている。
多様な認識技術でカーナビに付加価値をつける「Navdy」
業種:自動車
URL:https://www.navdy.com/
CEO:ダグ・シンプソン
Navdy(ナブディ)は、操縦者の視野に直接情報を映し出すヘッドアップディスプレイ(HUD)とジェスチャー認識や音声認識を組み合わせた、次世代カーナビゲーションシステムを提供するスタートアップ企業だ。
2012年にサンフランシスコで創設された同社は、ハードウェア支援で定評のあるHighway 1インキュベータープログラムを経て、事業を拡大している。
創設者でCEOを務めるダグ・シンプソン氏は、デヴライ大学でコンピューターサイエンスを専攻した後シリコンバレーに移り、ヒューレット・パッカード(HP)を経て、子ども向けゲーム端末開発企業や、スマートフォン向けコミュニケーションツール開発企業を創設した経験を持つ起業家だ。
工学知識の集約でドローンの飛躍を狙う「Joby Aviation」
業種:航空
URL:http://www.jobyaviation.com/
CEO:ジョーベン・ベヴィト
Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)は、電動飛行機用軽量モーターの開発からスタートし、垂直離着陸(VTOL)技術を生かした小型無人飛行機(ドローン)の開発設計・製造を行う航空分野のスタートアップ企業だ。
センサーや制御システムに代表されるモノのインターネット(IoT)技術を駆使しながら、商用ドローンの用途を貨物から旅客輸送へと拡張することを最終目標としている。
ジョビー・アビエーションを立ち上げたジョーベン・ベヴィト氏は、カリフォルニア大学デイビス校とスタンフォード大学で機械工学を学んだ後、実験機器、消費財、風力タービン・制御機器などの分野でベンチャー企業を立ち上げた経験を持つ。
創設は2009年、サンタクルーズにて。航空系、機械系、電気系、制御系、品質系、情報系など、様々な分野の工学専門家たちが開発組織を支えている。
アプリ発想のウェアラブル機器でヘルスケアを変える「FitBit」
業種:健康医療
URL:http://www.fitbit.com/
CEO:ジェームズ・パク
Fitbit(フィットビット)は、2007年、サンフランシスコで創業されたハードウェアスタートアップ企業で、活動量計、睡眠計、心拍計などの機能を装備したウェアラブル・フィットネス機器を主力製品としている。
共同創設者であるCEOのジェームズ・パク氏とCTOのエリック・フリードマン氏は、共にITメディア企業CNETネットワークス(現CBSインタラクティブ)のアプリケーションエンジニア出身。2015年6月にIPOを果たし、ユーザーエクスペリエンス(UX)やユーザーインタフェース(UI)を重視したアプリケーション起点の開発組織体制を敷いている。
専門職教育を専門的に支援する「BloomBoard」
分野:教育
URL:https://bloomboard.com/
CEO:ジェイソン・ラング
BloomBoard(ブルームボード)は、教員向け専門職教育を支援する観察/評価ツールの開発から始まり、現在は全米10万人以上の教育者を対象に専門職教育関連のマーケットプレイス事業を展開する、教育テクノロジー(Edtech)系スタートアップ企業だ。
現CEOのジェイソン・ラング氏はスタンフォード大学で経営学と教育学を学んだ後、UBSやニュー・スクールズ・ベンチャー・ファンドを経て、現CTOのエリック・ダン氏とともにパロアルトで起業。
ダン氏はedisonlearningで生徒向け適応学習管理システムの構築に長年関わってきた。
資金調達面では、バーチミア・ベンチャーズ、ラーン・キャピタル、ビル&メリンダ・ゲイツ財団など、営利企業および非営利組織の双方から支援を受けている点が特徴だ。
CEOの経験・ノウハウが創るシリコンバレーの付加価値
米国の産業分野を俯瞰すると、金融分野ではウォール街のあるニューヨーク、健康医療分野では著名な大学病院が集中するボストン、航空分野では航空機メーカーが集積するシアトルなど、シリコンバレーよりも技術力や人材層で高い競争力を有する都市が存在します。
今回取り上げたスタートアップ企業5社の創設者・CEOに共通するのは、シリコンバレーという土壌で培った経験やノウハウを、各業種・業界のバリュープロポジションに上手く生かしている点です。
テクノロジーとCEO人材の掛け合わせによって、スタートアップの企業価値を高める場として、シリコンバレーがどう進化するのでしょうか。日本の起業家にとっても見習うべき点は多い。
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