外部人材を活用して、ベンチャーの成長を加速化する取り組みが拡大しています。

日本でも浸透してきた感のある新しい働き方の形、クラウドソーシング。

今回のインタビューは、国内最大手のクラウドソーシングサービス「ランサーズ」にCTOとして参画されその成長を支えた田邊賢司さんです。

同社を去った現在は、株式会社wizpraにCTOとして参画するとともに、自社「プロフィットメイカーズ」でサービス開発をおこなうかたわら、サーキュレーションの技術顧問に就任し、複数社でブレーンを務めるなど、多方面で活躍されています。

クラウドソーシング市場の将来性や課題についてお聞きした前編に引き続き、後編では田邊さんのキャリア形成に合わせ、CTOとしてのエンジニアとの関わり、現在のパラレルな働き方の行く末についてお聞きしました。

「かっこいい!」からはじまったエンジニア人生

Q:現在は顧問や外部取締役として技術面からさまざまな企業をサポートされている田邊さんですが、エンジニアになった経緯はなんですか?

田邊 賢司さん(以下、田邊):

少しお恥ずかしいのですが、大学卒業時、特にやりたいことがなくて。
ちょうど2000年前のITバブルのころだったので、スーツを着てのオフィスワークがかっこいいなあというミーハー的な思いから、IT業界に入ったんです。

もともと文系だったので、箔をつけるために基本情報技術者の国家試験を受けて資格を取得してから臨みましたね(笑)。

そして、最初に入社したSI会社で5年間、まずは金融系のシステム開発に携わりました。それがエンジニアとしてのスタートです。

その後Webサービスに転向。
Q&Aシステムからはじまり、アフェリエイト、ソーシャルゲーム、アプリなど数社でさまざまなサービスに関わりました。

SIとは仕事のしかたも技術も、特に、スピード感が違いましたね。
サービス自体のライフタイムも短く、業務系ならかっちりしたフォーマットのドキュメントをいくつも作ってから進めるものを、Webでは必要最低限で走りながら実装していきます。

そして、徐々に新規事業の立ち上げや人事、M&Aなども体験しつつ、責任あるポジションも任されていくなかで、友人のソーシャルゲーム会社「トライフォート」立ち上げに誘われたのです。

会社が大きくなるまでのつもりで4~5年と思いジョインしたら、1年もたたずに社員数も100人を超え、その後の資金調達も思いのほかスムーズに進むほど成長しました。
僕自身も一番多い時では一日面接して終わる日もありましたね。

そこで、今度はランサーズに移ったのですが、そこでも1年半で100人近く人が増える経験をしました(笑)。

CTOとして人の上に立つことで培った、エンジニアとの関わり方

Q:1年で100人ですか。それだけ応募者が集まるのもすごいですね。
CTOの立場として、エンジニアの採用ではどういったところを重視しますか?

田邊:

会社によって全然違いますが、トライフォートではどちらかというとスキル重視、ランサーズではビジョンへの共感といったところでしょうか。

でも、やはり基本は人間性
前の会社の悪口を言ったり、人のせいにする人はこの先いっしょに仕事をしていくなかでも同じ。

あとは、その人の特性や会社との相性を見ています。
スタートアップの場合なら、能動的な人のほうが圧倒的に活躍できる可能性が高いですね。

Q:採用したあとは、CTOとして全体を管理する立場にもまわるわけですが、その際に心がけていたことはありますか?

田邊:

前編でもあった通り、トライフォートではリモートワークのエンジニアもいたので、タスク管理ツールで情報を所定の場所に置きつつ、プラスアルファでメッセンジャーなり口頭なりでリマインドし、共有漏れがでないよう気をつけていました。

また、エンジニアのためのコミュニケーション法を紹介した有名な書籍『Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか』のなかでは、謙虚(Humility)・尊敬(Respect)・信頼(Trust)の「HRT」の重要性を説いています。

ソースコードをレビューする際の指摘の仕方を例に挙げれば、「ダメ」の一言で終わらせず、なぜいけないのかの理由を説明してあげることが大切。

これはエンジニアに限ったことでなく、どんな仕事でも、結局はコミュニケーションなんでしょうね。

目指すは、エンジニアのための”Y Combinator”

Q:今年9月に、今度は代表として会社を起こされたわけですが、田邊さんはどこへ向かっているのでしょうか

田邊:

ランサーズでは、基本的にエンジニアリングに関すること全般、採用から育成、技術戦略まで担当しましたが、立場的にも自分で手を動かすことはほぼなかったかなと思います。

でも、やはりエンジニアなので、好きなサービスを思うように作ってみたい気持ちもあり、ランサーズ以外で時間と場所にとらわれない自分なりの新しい働き方、パラレルワーク的なことをやってみたいなと思うようになりました。

現在は、wizpraで自身もサービスの開発に直接携わりつつ、自社「プロフィットメイカーズ」でサービスをステルスで開発中なのと、同時進行でサーキュレーションさんへ週1回顧問に入ったり、VRやソーシャルゲームなどさまざまなジャンルの企業に関わり、採用や人事など組織づくりの部分で相談を受けたりしています。

Q:幅広い分野でのご活躍は、これまでもさまざまな事業に携わってきたからこそですね。

田邊:

私、結構なんでもできるのかもしれないですね(笑)。

営業や人前で話すことも役割的にやってきましたし、ものを作るスキルも当然ながらある。マーケティングも知識として持っています。
ですので、幅広くできるということはスキルとしてあるのかな。

そのおかげでいろいろな会社に関われてプロダクトを見られるのは自分にとってはとてもいい刺激になりますね。

というのも、私自身、将来的にはエンジニアのためのスタートアップ支援をやりたいんです。

エンジニアの人たちがなにか作ろう、自分たちでサービスを作って会社を立ち上げようとしたときに、会社の作り方から仲間の集め方、チームビルディング、採用、プロダクトはこう考えて作るべきだ、といったところまで手助けできるような知識や経験の還元の仕組み、イメージでいうと、国内だとTECHFUND、海外だとY Combinatorが割と近いですね。

自分がエンジニアなので悩みを共有しやすいですし、どこでつまずくのかもパターンとして気づけると思うので、まずは自分の知っている領域で自分の力や経験を生かし、補ってあげたいなと。

そして、もっとたくさんのエンジニアがプロダクトを生み出せる環境を作り、スタートアップやプロダクトのメッカ・シリコンバレーにも負けないような、日本初でもっと世界に通用するようなサービスを作りたい。そういう人たちをたくさん増やしていきたいですね。

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専門家:田邊 賢司
2011年より株式会社インタースペースにおいて、エンジニア部門の立ち上げに携わる。
2012年8月にスマートフォン向けアプリ開発事業を行う株式会社トライフォートの創業メンバーとして参画。新規プロジェクトの企画、サービス戦略の策定、チームメンバーの立ち上げに携わり、創業時から1年半で、150人までの組織に成長させた。
その後、日本最大級のクラウドソーシングサービス企業「ランサーズ」にCTOとして参画し、クラウドソーシングプラットフォームの運営においてエンジニア部門を統括。
エンジニア部門の組織拡大、仕組み化に携わり、サービスの成長に寄与した。2015年9月に株式会社wizpraに参画し、CTOに就任。2015年11月、株式会社サーキュレーションの技術顧問に就任。
ノマドジャーナル編集部
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