知られざるビジネスノマドの働き方。ファッション流通コンサルタント、インディペンデント・コントラクター(IC)協会の理事長も務める、ビジネスノマド歴12年の斉藤氏による独立キャリアについてのコラムです。
(第1回目の記事はこちら)
前回の第1話では大学を卒業してキャリアをスタートした時から40歳で独立する目標を掲げ、実際に38歳で独立したことについてお話しいただきました。第2話はキャリアプランの中でズバリ40歳にマイルストーンを置くことの意味についてです。
40歳を仕事人生の節目に。会社の成長と活躍する年代にみられる共通項
「仕事人生」を考える時、40歳をひとつの節目として、それまでにたくさんの経験と実力を積み上げ、その後、プロフェッショナルとしての新たなステージを迎えることをお勧めします。それは独立するのか、転職するのか、会社に留まるのかにかかわらずだと思っています。
自分自身が20代の始めに40歳で独立しようと考えたのは、単純に仕事人生をマラソンに例えれば40歳くらいが年齢的にちょうど中間折り返し地点だからと思ったからに過ぎません。
ところが、実際には20代、30代を振り返ると、「将来どうしたい?」と聞かれれば、「40歳で独立したい」と答えてはいたものの、40歳で独立することが早すぎるのか、遅すぎるのか? 目先の仕事が忙しすぎてその正当性を考える余裕など全くありませんでした。
40歳手前で独立して、業務委託あるいはコンサルという立場で規模や環境の違う複数の企業を同時に支援するようになると、会社組織や働く人のキャリアというものを客観的に見たり、考えたりすることができるようになりました。そうすると、多くの企業に活躍する年代と会社の成長に共通項が見られることに気付きました。
それは
30代が現場で活躍し、成長している企業は活気があり、成長率が高い。一方、40代以上が業務の意思決定権を握り、30代以下が工夫をしたり、チャレンジしたりする機会がない企業はジリ貧である。
という傾向です。
前者は社員の方々の未知の領域があったり、経験が十分でなかったりするため、それを本人たちが補うために、人に頭を下げて聞く、学ぶ、まずはすぐにやってみるという姿勢があります。 そのため彼らにはスポンジのように吸収力があり、攻め続ける個人の日々の仕事の工夫やその結果から得られる経験と成長が会社の成長に直結しているのです。
後者は逆にベテラン社員の方々が仕事的にも生活的にも守りに入っており、過去の成功体験にすがって前年と同じことを繰りかえす、それを変えることを恐れる、改善すべきことに気付いても来期から検討します、などと言い訳をし、先延ばし=実際には受け入れない傾向があります。
実際、独立以前のいくつかの勤務会社もそうだったと思います。
プロダクトライフサイクル理論でみる仕事人生
多くの企業と接して来て漠然と捉えていた30代は成長期、40代からは成熟期という年代と自己成長の相関関係。そんな、漠然とした認識をはっきり定義づけてくれる書籍を読み納得したことがあったのでここでご紹介させていただきたいと思います。
神田昌典さんの「2022 これから10年、活躍できる人の条件(PHPビジネス新書2012年1月)」です。
神田氏は書籍の中で 仕事人生をマーケティング理論でおなじみのプロダクトライフサイクル理論に見立てて、20歳前半から始まり60歳で定年を迎える約40年間のキャリアを4等分し、20代=導入期、30代=成長期、40代=成熟期、50代=衰退期と定義づけます。人のキャリアも プロダクトと同じで、時代にあわせたブラッシュアップ、リ・モデル、リ・ブランディングをせずに、漫然と過ごしていたら、40代で成熟期という「成長の危機」に突入してしまうという話です。
これに私の経験や独断と偏見の解釈を加えて申し上げると次のようになります。
20代は仕事人生の導入期。仕事の基本動作、社会のルール、時には任された仕事をルーティーン化しながら、徹底的に見につける10年。30代は成長期。既存の仕事に自分なりに工夫を加えたり、新しいことにチャレンジをしたりする中で、その結果を経験として自分のその後のキャリアの血となり肉となる専門性に積み上げる10年。40代以降、それまでそつなく仕事を行ってそれなりの成績を出していれば管理職にはなれるでしょう。そこを成熟期にするかどうかは自分次第でしょうが、40代の10年を「守り」の成熟期にしてしまったら、50代は間違いなく定年退職へのカウントダウン=衰退期の10年となることでしょう。というところでしょうか。
成長の危機にどう対応するか?40歳は成長期から成熟期への節目
同じ会社で同じことに取り組み続ける人生も立派なことだと思います。ただ40歳からも成長軌道を維持し、よりエキサイティングな仕事人生を送りたいと思うなら、成長期から成熟期に入る節目となる40歳を転機と考えるべきでしょう。
独立して複数の企業に貢献する。転職して違う企業の新しい環境の中で自分の専門性が通用するのか?貢献できるのか?を試す。同じ会社の中でもゼロから始める新規事業立ち上げや社内起業プロジェクトに参加する。また、それ以外にも会社に残り、それまでの自分の専門性を体系づけて、次世代を育成したり応援したりする立場に回るというのもありだと思います。「教える時に最も学ぶ」というドラッカーの言葉があります。コンサルもそうですが、専門性を「教える」ことで自身が更に学び、成長することも十分可能ですから。そんなスキルがあれば、その後研修講師という道も開かれることでしょう。
40歳でそのような新しいステージに進むためには、その前の30代でしっかりと、どこに行っても通用する、プロとして認められる専門性と仕事のしかたの準備をしておく必要があることは言うまでもありません。
次回 第3話では筆者が20代、30代のサラリーマン時代に心がけていた「どこに行っても通用する仕事のしかた」をご紹介します。
グローバルなアパレル商品調達からローカルな店舗運営まで、ファッション業界で豊富な実務経験を持つファッション流通コンサルタント。大手商社、輸入卸、アパレル専門店などに勤務時代、在庫過多に苦労した実体験をバネにファッション専門店の在庫最適化のための在庫コントロールの独自ノウハウを体系化。成長段階にある新興企業からの業務構築や人材育成のコンサルなど、これまでに20社以上の企業を支援。
著書に「人気店はバーゲンセールに頼らない(中央公論新社)」や「ユニクロ対ZARA(日本経済新聞出版社)」がある。本業の傍ら、独立業務請負人の働き方の普及を目指すNPOインディペンデント・コントラクター(IC)協会の第3代理事長も務める。有限会社ディマンドワークス代表
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。