東京都はなぜ働き方改革宣言を行ったのか

日本政府が働き方改革を進めている中で、東京都は率先して働き方改革宣言をし、東京都の全組織の働き方を改革することを宣言しました。こうした宣言は日本政府に対抗して進められたという見方もありますが、東京都としては「今後、2020年大会の成功をはじめとする都政の諸課題に的確に対応できる、生産性の高い執行体制を構築するためには、職員の長時間労働の是正や健康確保などを達成できる、働きやすい職場環境の整備が必要不可欠」だというところからスタートしています。また都の組織が率先して宣言することで、民間企業に対しても働き方改革を促したいという意図があります。

東京都の働き方改革宣言の中身は

東京都が行った働き方改革宣言は次の3つの柱があります。基本的には政府が考えている方向性と変わりませんが、前述したように東京都が先に宣言することに意味があると考えたのだと思われます。ここでは東京都が行った働き方改革宣言の中身について説明します。

1.管理職の意識改革

長時間労働の是正に関して言えば、管理職の意識改革はとても重要です。管理職自らも「率先してメリハリある働き方やムリ・ムダのない指示、さらに、休暇の積極的な取得に努め」る必要があるのです。確かに管理職が帰らないのに部下が先に帰りづらいというのはあります。管理職が時間を守って先に帰る、休みを取るといった努力をしていくことが必要でしょう。

2.制度の整備・活用推進

フレックスタイム制の導入することで、効率的に働くことができるようになります。また、有給休暇などすでにある制度もなかなか利用しないというのが現状です。有休休暇を消化しやすくするだけでも働き方改革につながることでしょう。

3.能率的なワークスタイル・働きやすい職場環境

テレワークを採用し、自宅でも働くことができるようにしたり、ハラスメントがない職場にしたりすることで、より働きやすい職場環境を実現することが必要です。日本では今でもセクハラやパワハラが多いです。こうしたハラスメントは、している本人たちが全く意識していないことが多いです。より働きやすい職場を実現するためにも、ハラスメントやLGBTに関する教育をする必要があるでしょう。

その他の東京都の働き方改革の取り組み~東京都の働き方改革宣言企業制度とは

東京都では都の組織の働き方改革だけでなく、東京都の企業にも働き方改革を行うように促しています。それが「働き方改革宣言企業制度」です。この制度では働き方改革宣言をする企業を募集し、宣言をした企業に対して様々な支援を行うとしています。これらの企業は「従業員の長時間労働の削減及び年次有給休暇等の取得促進のため、2~3年後の目標及び取組内容を定め、TOKYO働き方改革宣言(宣言)を行い、全社的に取り組む企業」です。

実際に行われる支援としては、フレックスタイム制、テレワーク制度、週休3日制制度などの制度を利用した企業には助成金を支給する、専門家による巡回・助言、専門家によるコンサルティングの支援を受けられます。また条件を満たせば働き方改革宣言奨励金を受けて働き方改革を行うこともできます。またホームページ上で働き方改革宣言を行った企業については公表されていますので、働き方改革を積極的に推し進めることで企業イメージがアップするのは間違いないでしょう。

東京都の働き方改革に対する評価は?

これまで東京都の「働き方改革宣言」、「働き方改革宣言企業制度」について紹介しましたが、このような政策についてどのような評価がなされているのでしょうか。例えは東京商工会議所はこうした動きに賛同し、「会員企業にも協力を呼びかけたい」と述べています(産経新聞2017年5月26日)。

他にも資生堂と全日本空輸を働き方改革宣言企業の第1弾として認めており、「資生堂は「時間と場所にとらわれない効率的で効果的な働き方の促進」に向けて、テレワークを活用しやすいルールの見直しなど」を目指し、「全日空は時間外労働の抑制を目標に掲げ」ています(日経新聞2016年7月6日)。

またマイクロソフトは「AIを導入した「MyAnalytics(マイアナリティクス)」と呼ぶ分析ツール」を使い、「社員のスケジュールと、PC上の業務用ツールの使用状況を照合することで、会議に要する時間、メールを打っている時間、集中して作業している時間、残業時間など、社員の時間の使い方を可視化」できます。マイクロソフトは東京都の「働き方改革宣言企業」にも参画していますので、今後も東京都の働き方改革に対して賛同する企業は増えていくことでしょう(「会議時間を27%短縮 無駄な時間の削減、AIが手助け」)。

こうした動きに対して、小池知事自身は「これから2020年までには、この数を4,000社まで増やして、合計5,000社がこの宣言をしていただく方向をしっかりと後押しさせていただきたい」と述べています。東京都だけでなく、日本全国にこうした動きは広がっていくと思われます。

人材不足の今こそ働き方改革が重要

長時間労働が問題なっている昨今、働き方改革をしていない企業には良い人材が集まらないという方向へ向かっていくことでしょう。今後、良い人材を確保するためにも働き方改革をすることで、長時間労働を減らし、それを積極的にアピールすることが必要です。今後、こうした動きは大企業だけではなく、中小企業にも広がっていくはずです。逆に労働環境の良さをアピールすることで、中小企業でも良い人材が集まると言えるかもしれません。

記事作成/ジョン0725