今回は米国のベビーブーマー世代がフリーランスに向いているという話題です。米国のベビーブーマーとは、おおよそ1946~1964年ごろまでに生まれた世代のこと。この年代の経験豊かな労働者が米国のハイテク産業で職探しをするとき、必ずぶつかるのが年齢による差別です。AARPの調査では、米国成人の64%が職場での年齢差別に直面しているそうです。

高齢労働者は優位に働く資質を持っている

米国ではベビーブーマー世代のプロフェッショナルたちが高給のハイテク産業へアクセスできる唯一の道は、フリーランシングということになります。米国のフリーランサーのステレオタイプと言えば「ミレニアルズ世代のコーダー」ですが、FreshBooksの2018年の自営業者レポートによると、現在米国のフリーランサーの49%が50歳を超えていると言われています。

これは、ますます多くのベビーブーマーたちが、フリーランシングのスーパースターとして活躍しているということです。実際米国のフリーランス界では、ベビーブーマーは若い労働者よりも信頼性が高いと評価されています。ベビーブーマー世代がフリーランシングに適している理由を米誌Entrepreneurは以下のように解説しています。

オンラインでの書類選考の利

リモートワークが普及した今日、ほとんどのフリーランサーは雇用者とじかに面接することはありません。オンラインでフリーランサーを採用しようとする雇用主は、履歴書に書かれた資格から候補者を判断することになります。直接顔を見ないので、候補者の年齢的な印象が影響することが少なくなりました。

年齢による仕事の探し方の違い

以下のチャートは、フリーランサーが仕事を得るのに効果的だと感じている戦略を示しています。35歳未満のミレニアルズ世代は、他の世代よりもソーシャルメディアやコンテンツマーケティングを試みる可能性が特に高いわけではありません。しかし彼らがこれらから仕事を得る確率は高いと言えます。

それに比べてベビーブーマーの仕事探しでは、ソーシャルメディアが効果的だと思う人は22%、コンテンツマーケティングが26%。彼らはメディアに頼るよりも、既存のクライアントとの関係を活用することで仕事の獲得に成功しています。

戦略が効果的だと思う人の割合

高い地位に人脈がある

ベビーブーマーは長く業界にいるだけ、若い世代よりも業界に多くのつながりを持ち、特に企業内の高いポジションの人々とのつながりを持っています。マーケティングに必要なネットワークは、年を取るほどよくなるというわけです。

フリーランス界ではこれはとても重要なことです。ビジネス特化SNS、Linkedinのフリーランス市場では、フリーランサーの81%が口伝ての紹介や個人的なネットワーキングから仕事を得ています。4人のフリーランサーのうち3人が41歳以上であるのもこのためです。以下のチャートでも、ネットワーキングから仕事を得る確率が67%と一番高くなっています。

小規模ビジネスマーケティング戦略の採用率と有効性

高齢労働者は良い仕事倫理を持っている

言うまでもなく、よい仕事倫理は9時~5時労働者より、むしろフリーランサーにより重要です。自分で決めたスケジュールは、上司から命じられたスケジュールよりも守ることが難しく、直属の上司の監督がないと作業は遅れがちになるものだからです。

ベビーブーマーは、経済恐慌や第二次世界大戦を乗り越えてきた両親に育てられ、幼少時から強い仕事倫理を植え付けられています。これが仕事の信頼性にもつながっています。

ベビーブーマーは経験が豊富

PayScaleによると、米国のフリーランスワークの中でも、コンサルティング業は平均時給が38.28ドル(2018年3月現在の年間平均給与は72,043ドル)と高給の部類。数十年にわたる業界での経験を持つベビーブーマーは、コンサルティング業に最適です。これはミレニアルズ世代が太刀打ちできる分野ではありません。

ミレニアルズ世代は、コーディングのような特定の分野で優位を占めていますが、ベビーブーマー世代の優れたリーダーシップを築く資質は、それより安定していると言えます。

時間的な柔軟性

米国の国民年金であるソーシャルセッキュリティは、1カ月の平均支給額が1,404ドルと、ほとんどの州で快適に生活するには十分な額とは言えません。しかし定年退職して伝統的な労働構造から解放されたフリーランサーたちは、異なったタイムゾーンのクライアントとも作業することのできる、時間的な柔軟性をもっています。

2017年には米国で1日当たり1万人以上のベビーブーマーが退職しましたが、その6割近くが、完全退職よりも仕事を続けたいと考えているそうです。特にこれまで働いてきた分野でのフリーランシングは、退職後にも新たな出会いを求めたり、他の地域からの仕事を求める人への理想的な手段となります。

GoBankingRatesの2016年の調査では、55歳以上の回答者の3割が退職に向けての蓄えを持ち合わせていないことが明らかになりました。フリーランシングは経済的なセキュリティの面でもこの年代の人々にぴったりだと言えます。

まとめ

日本のフリーランスワークマッチングサイトLancersが2016年4月に発表した「日本のフリーランスの実態」は、フリーランサーを副業系(常時雇用+副業)、複業系(複数の企業の仕事をこなす)、自由業系(独立プロフェッショナル)、自営業系(経営者)の4つに分けています。各グループの年齢分けでは、副業系で50歳以上が42%、複業系では58%、自由業系では70%、自営業系では82%。平均値で見ると、日本のフリーランサーの63.5%が50歳以上です。これは米国の49%よりかなり高い数値となっています。

先進国の中で人口の高齢化が最も進んでいる日本。フリーランス経済の進行では、米国に一歩遅れを取っていますが、フリーランシングは日本の現状にも何らかの解決をもたらしてくれることを期待したいと思います。

参考記事:

https://www.entrepreneur.com/article/311699

https://www.freshbooks.com/_themes/freshbooks/brand-assets/freshbooks-survey-2017.pdf

記事制作/シャヴィット・コハヴ (Shavit Kokhav)