今回は、専門商社、三陽商会、イトーヨーカドーを経てプロ経営者として小売業界の企業で経営に参画されており、全国のスーパーマーケットの復活請負人として活躍され続けている重田様に、

  • サーキュレーション(エージェント)に登録したきっかけ
  • 実際に支援した案件の詳細

などをお伺いしました。長年培ってきた「人脈」ではなく「知見」を活かした働き方をどのようにしているのか、なぜできるのか、是非、ご一読ください。

お話を伺った方:重田 博さん

新卒入社の繊維の専門商社から三陽商会を経てイトーヨーカドーへ。2店舗の店長を歴任し、徹底した鮮度管理戦略を軸に大改革、2店舗の売上を12億円、14億円伸長させた。その後、三和総合研究所(現・三菱UFJリサーチ)と社外パートナー契約を結び、書店・ホームセンター・ドラッグストアの立て直しに携わり、バイヤー教育と商売の基本4原則(品揃え/鮮度管理/クリンリネス/フレンドリーサービス)を叩き込む手法で業績を回復。静岡のローカルスーパーの副社長時代は、「商品は安いが上質な店」への改革をリードし、年商250億企業から500億企業への成長の基礎を築いた。後に社長を努めたレストランチェーンでも、数億円の赤字を1年で黒字化。現在はローカルスーパーの復活請負人として、週3日、全国を飛び回る生活を送る。

サーキュレーションが作ってくれる、新しい企業との出会いに感謝

――本日はインタビューに応じていただき、ありがとうございます。重田さんは小売、とりわけスーパーマーケットの領域ではすでに名が知られた方かと思いますが、サーキュレーションにご登録された理由をお教えいただけますか?

自分たちの人脈以外の広がりがあるかもしれない、というのが圧倒的な理由です。現在、ローカルスーパーは大手企業に押されてどんどん疲弊していて、それを再編しなければならない時代に入っています。ところが、どこの地方の何というスーパーが弱っているというローカル情報までは、私には入ってきません。そういった企業をサーキュレーションさん経由でご紹介いただいて、改善策をご提案するなどしてお役に立てるのは本当にうれしいですね。

他社にも登録していますが、私の人脈を活用するような案件のご紹介が多いんです。私はその後のお付き合いのことも考えて、大事な交友関係が切れてしまうような仕事はしないようにしております。人脈だけに頼らない案件のご紹介をしてくださるサーキュレーションさんには「新しい出会いをありがとう」という気持ちです。疲弊した企業の案件があれば、北海道でも沖縄でも、どこでも行きますよ。

――エージェントを通すメリット・デメリットについてはどのようにお考えですか?

もちろん自分で条件交渉すればサーキュレーションさんを通すよりも高額な報酬を得ることもできますが、エージェントはいてくれた方がいいですね。というのも、中小企業の場合、外部との契約に関する仕組みがしっかりしていないことがあるんです。末締めの月末払いという取り決めをしても期日に支払われず、こちらから問い合わせをせざるを得ないことも少なくありません。仕入先のメーカーに対しても同じ対応なので、そういった仕組みから教育をした会社もあるほどなんですよ。エージェントを介することで事務的な手続きの手間を解消できる利点は一つありますね。

抜本的な経営転換によって、大幅減収減益の企業から「儲かる店」へ

重田博様_インタビュー1

――重田さんが担当された案件について、概要をお聞かせください。

これまでサーキュレーションさんからは青森・群馬・東京・岐阜・兵庫のクライアントをご紹介いただいきましたが、今年の5月から支援をしているスーパーの案件をご紹介します。かなり切迫している企業で、かつては二十数店まで展開していた規模が、一桁の店数にまで減っている状態でした。私の前にもコンサルタントが一度入り、売り場を改装して高級路線に変更したものの、尖らせすぎて一般的なナショナルブランドの商品まで撤廃してしまい、アイテム数が足りずに売上がさらに大幅に落ち込んでいたんです。

そこでまずはゴンドラと呼ばれる陳列棚を増やせるだけ増やし、商品ラインナップを大幅にチェンジ。ナショナルブランドの商品を再び仕入れ、その地域にマッチしたレベルまでプライスゾーンを下げ、売るべき商品の展開を指導しました。その結果、売上は20%程度アップ。黒字へと転換できる段階まで回復しました。

――一度コンサルタントを採用して失敗している企業からの信頼を勝ち取り、売上アップを成し遂げられた一番の要因は何だったとお考えですか?

信頼を勝ち取れたのは、私が副社長を務めていた時代のローカルスーパー(仮にAストアとする)に非常に状況が似ていたという点が大きいですね。Aストアもやはり高級路線で非常に綺麗な店舗でした。ところが、近隣のスーパーの方が生活野菜が安い、一般的なカレールーも圧倒的に安いという状況でした。低価格志向のお客さんをすべて取られているんです。かと言って、高級品を買ってくれるお客さんはエリア的にそれほど多くはない。そこで、やはり近隣の競合スーパーと価格を合わせることにしました。

結果として、競合スーパーと同じ低価格の商品があり、さらに店舗もディスプレイも綺麗で、高級な商品も置いてある品揃えの良いお店になりました。するとお客さんが入る。「今日はカレーを食べよう」と思って来店したお客さんが、お店を回遊しているうちにしゃぶしゃぶ用のお肉を買って帰るような「儲かる店」に変わり、静岡市のスーパーシェアの3割を獲得するに至りました。

この事例を踏まえ、支援先のスーパーにおいても、マーケットプライスに合わせた価格対応をしたところ、一度離れたお客様や新たな客層を再び獲得でき、同時に売上もアップしたというわけです。

――現場目線で考えると、経営方針の度重なる転換で混乱もあったのではないかと思いますが、新たな方針を現場に理解してもらうために、人材教育の観点からはどのような取り組みを実施されましたか?

売り場責任者クラスとの個人面談の時間をなるべく多く取りました。高級スーパーとしての社員のプライドの高さは、良い面もたくさんあります。その点はまず褒める。「ただ、こういうふうに変化しないと数字も変わらない」ということを説くんです。単純に安売りをするばかりではなく、粗利を獲得する「儲ける商品」をどこでつくるのか、という部分をしっかり考えなければいけないということを教えます。やがて、「商売とはそういうことか」と気づいてくれる。それが人材教育だと思いますし、だんだん社員の目が光ってくる。そうなってくると、「この会社は確実に持ち直せそうだ」というイメージが持てますね。

相手と目線を合わせることがコンサルタントには必須

――最後に、サーキュレーションへの登録を検討している方にアドバイスをお願いします。

相手の目線に立たなきゃだめです、ということを一番言いたいですね。つい、コンサルタントという立場は若干クライアントを上から見てしまったり、偉そうにしてしまう傾向が強くなりますが、現場は学ばせていただく場なんです。それをしっかり理解した上で先方とお会いして、相手と目線を合わせる。これができない限り、コンサルタントという職種は成り立たないと思います。

重田博様_インタビュー2

プロフェッショナル人材として活躍するためのTips

――サーキュレーション案件も含めた一週間のスケジュールは?

月曜日は自分で「プラクティス・デイ」と呼んでいて、いろいろな資料作成をするなど、頭を使って考える作業をします。仕事とは別にゴルフの「プラクティス」の時間も確保していて、ショートコースをまわるのが習慣です。

火・水・木は1日1社ずつ支援に入ります。金曜日は「コミュニケーション・デイ」。昔の友人に会うなど、人とのコミュニケーション取る日にしています。土日はフリーです。

――月1~4回の支援でコミュニケーションの不足分を埋める工夫は?

担当企業の社長とLINEを交換しているので、例えばA社でおはぎがすごく売れていて、120gで1個98円ですよ、といった情報を写真と一緒に送ります。すると、これまでおはぎを売ったことがなかった現場でおはぎを販売しはじめて、1日80個売れるようになった、という成功事例に繋がっていきます。

年金支給日には和菓子が売れるだとか、「売れる仕掛け」を教えてあげるということを、支援に入る8時間以外の時間に上乗せして積極的に行っていますね。

――自分を高め続けるために意識していることは

現場、すなわちマーケットを見続けることです。スーパーだけでなくアパレルなど、小売の世界であればどこでも常に観察するようにしています。義務ではなく、「これは面白いぞ」とわくわくしながら新しい発見をするんです。

また、難しい案件ほど楽しむ気持ちも大切にしています。難しいと頭を使う。頭を使うとドーパミンが出ます。『葉隠』に「水増されば船高し※」という言葉がありますが、これは自分を高めるためのフレーズですね。

※水位が上がれば船が高くなるように、人間も困難にぶつかるたびに大きく成長するものだ、という意味。

編集後記

人生100年時代、退職後の働き方について模索中の方も多いのではないでしょうか。

日々多くの専門家にお会いする中で、「顧問会社に登録してみてもご人脈しか見てもらえなかった」という話を伺うこともあります。

もちろん、ご人脈は一つの武器。今の時代、ご人脈だけではどうにもならないという話がある一方、専門家の皆さまのお繋がりをきっかけに「会うべき人に会う」だけで、中小企業が長年頭を悩ませていた新規開拓に光が差すことはよくあり、弊社経由でそのような営業支援系の案件のご紹介ももちろん実施しております。

反面、それまで培ったご人脈と、企業向け支援内容はしっかり切り分けたいとお考えの専門家がいらっしゃることも至極当然のこと。そういった皆さまには、無理に営業支援系の案件をご紹介するのではなく、過去のご実績やお強みとマッチした案件のご紹介をしております。

実際に、重田様は2016年のご登録以降、ご経験・知見を生かして、多くの中小企業を救ってきてくださり、クライアントからの喜びの声をたくさん頂戴しております。

サーキュレーションでは、”人脈”ではなく、”知見”を活かした働き方にチャレンジしたい専門家の皆さまのために、これからもご活躍の場の創出に努めてまいります。

取材:井竹萌