1970年代、日本マクドナルドは国内におけるフランチャイズビジネスの草分け的存在として、急速に店舗網を拡大していった。外食産業がその後を追い、現在では流通から生活サービス、介護など幅広い業種がフランチャイズ展開を進めている。

消費者の心をつかみ、成功を収めるフランチャイズビジネスには何が必要なのか? そのヒントを得るため、マクドナルドタリーズコーヒーでの店舗開発を経て日本フランチャイズ総合研究所の主任研究員を勤めた「フランチャイズの伝道師」、水野唯広氏に話を聞いた。最終回は、これからの時代に勝ち残るフランチャイザーと、パートナーとするべきフランチャイジーについて語っていただく。

「世の中のために事業をするのだ」と考える会社が勝つ

Q:水野さんは日本フランチャイズ総合研究所でさまざまな業種のコンサルティングを手掛けられました。成功するフランチャイザーには、どのような特徴があるのでしょうか?

水野唯広(さん(以下水野):

日本フランチャイズ総合研究所では、累計で約170社のフランチャイズ展開をサポートしてきました。成功する会社には共通点があります。それは、社長が「自分個人のためではなく世の中のために事業をするのだ」と考えていること。

ハウスクリーニングのフランチャイズを展開して成功した、ある企業の例を挙げましょう。社長はそれまでの事業にことごとく失敗して、日本フランチャイズ総合研究所に相談に訪れたんです。資金的にも非常に厳しい状況の中で、「会社近隣のおじいちゃん、おばあちゃんの家に行って、お掃除をしてあげたらどうですか?」とアドバイスしました。これならコストもかかりませんよね。で、実際にその社長は実行したんです。するとその老夫婦にものすごく喜ばれた。「2人とも年寄りだから、掃除をしたくてもできなかった」と。その体験をきっかけに、お掃除の仕事は事業として拡大していったんです。

「何のために飛行機を飛ばしているのか?」

Q:社会貢献という軸がなければ、フランチャイズ事業は成功しないということでしょうか?

水野:

社長のポリシーを自己利益ではなく、「この事業をやることによって社会貢献ができるんだ」というメッセージとして全面に出せる企業が成功するのだと思います。

日本航空を再建した稲盛和夫さんの有名な理念「利他」もそうですよね。他人のために働くということ。日本航空の幹部陣は当初、これをなかなか理解できなかった。しかし稲盛さんが毎晩酒を酌み交わしながらこの話を続けて、数カ月が過ぎた頃に「やっとその意図が分かりました。今までの考え方が間違っていました」という言葉が出てくるようになって、ようやく経営再建が始まりました。「飛行機を飛ばす仕事をこなせばいい」という姿勢が変わり、「何のために飛行機を飛ばしているのか」と考えるようになったんですね。

事業の成否は、経営者の考え方にすべてがかかっています。マクドナルドが成功した理由もそこにありました。創業者の藤田田さんは、「なぜ日本は戦争でアメリカに負けたのか」とずっと考えていた。「彼らは毎日牛肉を食べてあのように立派な体格になった。日本人も肉を食べて体力をつけないと、アメリカには勝てない。そのために、牛肉を安く食べられるようにすることが自分たちの使命なんだ」といつも語っていました。

理念を共有して進むための「CISマニュアル」

Q:最後に、水野さんがフランチャイジーとの関わり方で重要視していること、また今後優良なフランチャイジーを獲得する上で大切だと考えていることを教えてください。

水野:

「会社の事業目的に同意してもらえるかどうか」が何より大切だと考えています。契約書や法定開示書類だけではなく、「CISマニュアル」(Corporate Identity Systemマニュアル)を作成し、取り交わすことが重要。CISマニュアルは、フランチャイザーとしての理念や事業目的を明文化したもの。そこに共感してくれるフランチャイジーとパートナーシップを結ぶ必要があります。

事業というものは時が過ぎれば変化していくものですし、賢い加盟店はビジネスモデルを自身でアレンジし、どんどん成長していきます。実はそれがチェーン店の崩壊の始まり。中には、最初からノウハウだけ盗もうと思って加盟する人もいます。飲食店などではそういうケースが特に多い。仕入れルートも真似しやすいですからね。フランチャイザーもフランチャイジーも、相手をきちんと理解してから契約を結ぶことが大切です。

一方でフランチャイザーは、加盟店募集時に甘い誘い文句ばかり並べ立ててはいけません。どんなに小さなチェーンでも、それなりに初期投資はかかります。特に個人で無理をして、たとえば自宅を売却してまでフランチャイズに加盟しようとする方を簡単に受け入れてはいけないと思います。常にCISマニュアルに立ち返り、双方が理念を共有して進むこと。それが何より大切なのではないでしょうか。

 

《 編集後記 》

世の中の役に立つ事業だと信じて、発信し続けること。さまざまな業種が名乗りを上げ、変化を続けるフランチャイズビジネスの世界でも、本当に必要なことはずっと変わらないのかもしれない。40年間にわたって水野氏が築き上げてきたノウハウは、さまざまな業界を対象としたコンサルティングに生かされ、新たなイノベーションにつながっている。

 

取材・記事作成:多田 慎介

専門家:水野 唯広

1976年に日本マクドナルド入社。店長、統括SV、本社営業本部を歴任し、店舗用新規POSや店舗オンラインシステムの開発・導入をリード。その後は店舗開発部長として、正確無比な収益シミュレーションで年間300〜400店舗の出店を手掛ける。
2005年にフードエックス・グローブ(現タリーズコーヒージャパン)入社。店舗開発部長として日本全県を対象とした新規出店計画をハンドリングし、営業・販促。評価制度など事業全般に関わる社内サポートを実施。フランチャイズ契約管理も担当した。
2013年、日本フランチャイズ総合研究所に主任研究員として入社し、フランチャイズ事業全般における企業向けコンサルティングに従事。外食、美容室などさまざまな業種のフランチャイズ展開を支援している。