30年にわたりコールセンター業界の有力企業、りらいあコミュニケーションズでキャリアを積んだプロ人材の佐藤守正さん(以下、佐藤)。佐藤さんは自身の持つ人脈を活用しながら、企業への営業支援を行っています。今回は、コロナ禍にコールセンター業界向けの新規事業立ち上げを試みた、人材会社の株式会社iDAを支援。新規業界の開拓を佐藤さんがどのように推進し成功に至ったのか、営業プロセスをじっくりお伺いしました。

新たにコールセンター業界への参入を試みるも新規開拓は難航

ファッション・ビューティー業界に特化して人材ビジネス事業を展開するiDA

株式会社iDA 派遣事業(東京)および人材紹介事業責任者 兼 執行役員 石井 哲也様

派遣事業(東京)および人材紹介事業責任者 兼 執行役員 石井 哲也さん(以下、石井):当社はワールド・モード・ホールディングスのグループ企業で、1999年3月に創業しました。ファッション・ビューティー業界を中心に、販売員の人材紹介・派遣のほか、教育や店舗運営まで、包括的なサービスをご提供しています。求職者の方に対しては、個々のキャリアプランや働き方、ライフスタイルに沿った形でお仕事の提案をさせていただいています。

実績としては、登録者が約30万人。月間で約6,000名が派遣社員として稼働し、このうち年間で1,000名ほどは社員登用などの形で転籍しています。派遣という働き方には様々な考え方がありますが、優秀な方は当社を通じてどんどん企業に直接雇用していただき、業界全体を支えていきたいというのが、iDAとしての想いです。

コロナ禍によって打撃を受けたファッション業界。登録スタッフを守るために新規業界の開拓を決断した

石井:当社は元々販売職を中心にサービス展開をしてきましたが、コロナ禍においては多くの店舗が休業や事業縮小せざるを得ませんでした。このため、当社にご登録いただいている派遣スタッフの中には雇用不安を感じている方が多くいらっしゃったような状況です。

そこで我々は蔓延初期から、ファッション・ビューティー業界で働いてきた方々が活躍できる場は他にないだろうかと模索を行いました。その結果一つの解としてたどり着いたのが、コールセンター、カスタマーセンター業界でした。お客様対応であれば、販売員の方が日々培ったスキルを存分に活かせる可能性が高いですし、質の高い対応は企業側のニーズもあると考え、新たに事業部を立ち上げたのです。

後発の立場で営業は苦戦。突破口として元りらいあコミュニケーションズの佐藤さんとタッグを組んだ

石井:これまでとは全く異なる新しい業界に対する営業は、なかなか上手くいきませんでした。コールセンター、カスタマーセンター業界はもともと派遣社員は活用していますし、当然そこには既存の大手競合他社が存在していたからです。

当時、最大手企業であるりらいあコミュニケーションズとなんとか契約はできたものの、拠点は東京・大阪のわずか2箇所。しかもごく数名しか稼働できておらず、閉塞感を感じていました。そんなとき、サーキュレーションさんから推薦していただいたのが、佐藤さんでした。佐藤さんはりらいあコミュニケーションズで培った素晴らしいキャリアと人脈をお持ちで、しかもお人柄に頼もしさと心強さを感じ、営業を支援していただく運びになりました。

人脈を活用した販路開拓を中心にコールセンター事業の立ち上げを支援

コールセンター領域のプロ人材 佐藤 守正様

佐藤 守正氏(以下、佐藤):私はりらいあコミュニケーションズ株式会社(旧株式会社もしもしホットライン)に30年弱勤めた経験があり、最終キャリアは常務取締役です。また、子会社2社では代表取締役社長を歴任しました。

現在は、りらいあコミュニケーションズ及びグループ会社の販路開拓のほか、企業のコールセンターの事業企画やマネジメントなどをお手伝いさせていただいています。販路開拓といっても、むやみにお引き受けはしません。エリアやタイミングを見定めながら、年間を通しても1~2社程度の企業様をご支援するのがポリシーです。

私が企業のご支援をお引き受けする際の基準は、元りらいあグループ側の視点で見たときに、ご支援企業とりらいあ、双方にメリットがあるかどうかです。その点iDAさんはスタッフ全員が正社員で定着性、ロイアリティの高さという強みは十分受け容れられる、という強みがあったので、ぜひご協力させていただければと思いました。何より、社員の皆さんにやる気と積極性があったのが良かったですね。

「繋ぐだけ」で終わらない、積極的な営業支援が成功の鍵

左:プロ人材 佐藤 守正様、右:株式会社iDA 石井 哲也様

上層部から求人ベースの担当者レベルまで、幅広い範囲でキーマンとの接点を創出

石井:ご支援いただくにあたって、まず当社としてりらいあさんのオペレーションセンターや支店に対して、どうアプローチすべきかを擦り合わせました。佐藤さんは支店長のみならず、りらいあ本体の社長とも人脈をお持ちだったので、まずはキーマンとなる全国の上層の方たちにコンタクトを取り、商談の場をセッティングしていただく運びとなりました。

ただ、機会創出をしていただいてもタイミングというものがありますから、すぐに成約に直結するわけではありません。そこで改めて施策を練り直し、求人ベースでキーマンに当たれるかどうか、佐藤さんに打診してみたんです。非常に難易度の高いご依頼だったと思うのですが、佐藤さんは即座に承諾してくれて。細かな求人一つひとつに対してアプローチできるようになり、支援スタートから3ヶ月ほどで成約件数が増えていきました。

佐藤:最初は石井さん経由のご依頼でアプローチ先を決めていたのですが、そのうち各支店から直接紹介依頼が来るようになりました。稼働は月2回の契約でしたから、さすがに依頼内容の整理は石井さんにお願いしましたね(笑)それぐらい、iDAの皆さんは営業に積極的で、私もやりがいがありました。

iDAの持つ強みを佐藤さん自身が深く理解することで、効率的・効果的な営業支援をしてくれた

佐藤:社外の人間として個人で営業支援を行うという働き方を始めた当初、私のご支援は基本的に「企業とりらいあのキーマンを引き合わせて、何かあれば営業をバックアップする」というスタイルでした。ただ、プロ人材としてご支援を重ねるうちに、それでは繋がりが長続きしないと気づき、よりwin-winな関係性を目指した支援スタイルに変えています。私自身もこれまで様々な立場や性格の方とビジネスをしてきましたから、基本的な仕事の進め方、取引先との関係構築のノウハウも自分なりに言語化ができています。だからこそ、もっと私が主体的に営業をサポートしたほうがクライアント企業のためになると考え、iDAさんの営業にもしっかり伴走してご支援を行いました。

このスタイルが、iDAさんの積極性と非常にマッチしたようですね。早い段階から営業が非常にスムーズに進むようになり、しっかり成約を取れるようになっていきました。

石井:私たちからしてみると、佐藤さんの持つ貴重な人脈を活用させていただいているわけです。そこに応えなければならないという想いが強くありました。

また佐藤さんご自身も当社についてかなり深く理解していただいて、当社が実現したいことや強みを、的確に先方に伝えていただいたのが大きかったと思います。

佐藤:派遣は期間や人数規模など、様々な条件がありますよね。時々で変わるニーズに対して、派遣する側は供給時間・人数・質を全て適切にマッチさせなければいけません。つまり、「佐藤さんの紹介だから」といって簡単に成約をしたところで、実際のオーダーに応えられなければ継続はできないわけです。だからこそ、りらいあ側に対してiDAさんと成約するメリットは正確にお伝えするように心がけました。

その上で、シビアな現場の要望にiDAさんがしっかり応える。これが、今も関係性が継続している大事なポイントです。

稼働拠点は約4倍に。業界構造を理解し営業活動が自走し始めた

株式会社iDA 派遣事業(東京)および人材紹介事業責任者 兼 執行役員 石井 哲也様

石井:佐藤さんと一緒にお取り組みをさせていただいた結果、それまでは東京と大阪の2拠点のみだったところから、5拠点にまで稼働が広がりました。ご支援が終わった後、さらに3~4拠点と新たに成約を結ぶに至っています。

現在は常時60名前後が稼働しています。当初の目論見どおり、販売職でスキルを培った派遣スタッフの皆さんの接客力やコミュニケーション能力を一定評価いただいています。

コールセンターの有力企業であるりらいあさんとお取り引きをさせていただけるようになったのは、当社にとって大きなメリットです。新規事業を安定的に展開していく上で、強みが生まれました。もともとコールセンターやカスタマーセンターで活躍されていた人材の新規登録が増えているのも、成果の一つです。

また、新たに別のコールセンター企業の開拓にも成功しました。やはりこれも佐藤さんとのお取り組みがあってこそです。というのも、佐藤さんはただ人を紹介するのではなく、組織の細かな仕組み、さらにはコールセンター業界の知見とリアルな体験を、営業を通して大変丁寧に教えてくださったんです。

会社として事業展開のバリエーションが確実に広がったのは強い武器になりますし、大きな財産を得られたと実感しています。

器の大きな人柄から働き方の「軸」まで教えてもらえた

左:プロ人材 佐藤 守正様、右:株式会社iDA 石井 哲也様

石井:営業支援の内容はもちろんですが、私が一番感銘を受けたのは佐藤さんのお人柄です。例えば、佐藤さんにご連絡するのが遅い時間になってしまったときでも、佐藤さんはすぐに返信をしてくれました。また素早く行動をするだけでなく、こちらの動き方まで常に気にかけてくれて。「本当に器の大きな人だ」と刺激を受けましたし、何より「仕事の質の向上」「仕事を通じた気づき、学び」が得られたことは大きかったですね。何か機会があればまたぜひご一緒したいです。

もちろん、佐藤さんのような素晴らしい方と出会うきっかけをくれた、サーキュレーションさんにも感謝しています。当社が抱えていた課題感に対して、どういう方をマッチさせるのがベストなのか、コンサルタントとしての知見を的確に活かしていただいた結果ですね。今後とも、ぜひよろしくお願いします。

佐藤:私は一緒に仕事をする企業の方が、「何か学びを得てくれたら」といつも思っています。特にクイックレスポンスや、約束を守るといった仕事の「軸」のようなものですね。やはり仕事ができる人はやると言ったことは必ずやり遂げますし、相手にボールをすぐに返すものです。こういった信念を石井さんが感じ取ってくれたのはうれしいですね。

サーキュレーションさんからは一貫して、「良い会社だ」という印象を受けていました。それは社員の方一人ひとりの態度やレスポンスから見えてくる、味のようなものです。素晴らしい方たちとの、良い出会いをありがとうございました。

自身が培った人脈を駆使し、新事業の営業開拓を成功に導いた佐藤さん。ですが今回のご支援は、単なる「人脈の活用」にとどまるものではありません。佐藤さんが持つ仕事のポータブルスキルや営業の基本姿勢から学びを得ながら、iDAの皆さんが全力で応えて積極的に動く。こうした相乗効果が、大きな成果に繋がったのだと感じました。

本日はお忙しい中、ありがとうございました!

営業支援案件におけるまとめ

課題・概要

新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言発令により、既存顧客であったファッション業界での店舗への派遣が激減。蔓延初期から議論を進めていた新業界への進出について検討を始めたが、コールセンター業界の知識もなく、立ち上げ方や営業の進め方がわからなかった。そこでアサインされたのが、元りらいあコミュニケーションズの佐藤さんだった

支援内容

  • 月2回の商談設定を目標に本社経営陣や地方支社にiDAを紹介
  • 営業後のフォローや求人ベースでの紹介にも柔軟に対応

成果

  • 東京、大阪の2拠点のみだった取引先が5拠点に増え、支援後さらに8~9拠点にまで拡大した
  • コールセンター業界や取引先の組織構造を理解したことで営業の内製化に成功
  • 安定した新規事業の成長が見込め、事業の幅が広がった

支援のポイント

  • 新たな事業領域の立ち上げにあたり、商材に自信はあっても後発ではなかなか開拓が進まない。その際、業界の有力企業での事例創出は非常に重要になる。また業界内の組織構造を理解すれば、営業戦略に実効性が生まれる。以上の理由から、業界での長い経験があり、経営視点も兼ね備えたプロ人材を活用することで、新規業界での営業活動は大きく促進される

企画編集:竹内美晴

写真撮影:樋口隆宏(TOKYO TRAIN)

取材協力:株式会社iDA

※ 本記事はサーキュレーションのプロシェアリングにおけるプロジェクト成功事例です。