企業は、その事業成長に伴って「必要なスキルや人材」が変化していきます。

新規事業の立ち上げ時期であればダイナミックな企画力や市場開拓力が集中的に必要だったりしますが、軌道にのった時期は上場を視野に入れた戦略が求められたりします。

今回は前者の新規事業の立ち上げ時期に必要なまるで集中コーチのような支援の実例をご紹介します。

「稀有なプロフェッショナルに出会えた」

Q:ビジネスノマドの起用を考えられたのは、どのような目的のためでしょうか?

高山:

私は、新卒でリクルートグループの人材紹介の会社に入社し7年勤務した後、1997年に起業、検索エンジンのマーケティングに特化したインターネット広告代理業で成長軌道に乗り運よく9年で上場することができました。

その後、博報堂DYグループのデジタル・アドバタイジング・コンソーシアム社に株式の過半数を譲渡し、2013年に2度目の起業となるイノベイジを設立しています。

人類史上最速で少子高齢化が進む日本に、強い危機感を感じ、少子高齢化で生じる社会課題をイノベイティブな事業で解決したいという思いから「少子高齢社会の課題解決カンパニー」という旗を掲げ、具体的には予防医療・ヘルスケア領域を中心に投資や事業インキュベートを行っています。

自社での事業開発テーマを探していたときにサーキュレーションさんに出会いビジネスノマドを活用した新規事業開発の提案をうけました。

こちらから出した要望は、「予防医療・ヘルスケア領域での事業経験が豊富で、私のディスカッションパートナーになってくれるビジネスノマド」。

そもそも当社が取り組むべき課題は何か?それを解決する策は?事業としてスケール可能か?法的なリスクや検討すべき課題は何か?私の思考のパートナーであり、業界の水先案内人にもなってくれる人が必要だったのです。

Q:新規事業立ち上げ支援、しかもヘルスケアや医療事業に明るい人材。サーキュレーションからのご提案は、いかがでしたか?

高山:

そんなプロフェッショナルは、日本に何人もいないだろうと思いましたが、守屋 実さんを紹介してもらえました。様々な事業を50近く立ち上げた、日本には他にほぼいない新規事業立ち上げのプロです。

しかも予防医療・ヘルスケア領域は、数々手がけてきた得意分野。まさに当社のニーズに非常にマッチした方でした。初の面談で私の思いをお話したところ予防医療に対して同じ使命感を持ち、しかも当社の今後の展開にワクワクしてくれる様子が伝わってきて、守屋さんとは良いパートナーになれると直感し契約をほぼ即決しました。

会議室でのブレストを超え業界人脈が広がり続けた

Q:6ヶ月のご契約の間に、イノベイジ様にはどのような変化が起きていったのでしょうか?

高山:

想定どおり私のアイデアに対し的確に打ち返しポジティブな方向に引っ張ってくれています。

このあたりはいわゆる「できない理由を探す」評論家ではなく実戦で成功も失敗も積み重ねてきた「事業立ち上げのプロ」ならではですね。

あとはこの領域におけるネットワークが半端なく広い!次々にキーになる方をご紹介いただき様々な知見を得たり成果を得ることができています。

具体的に例をあげると。少子高齢社会の課題として医療の在宅化が進む一方在宅の看護体制が遅れ看取り難民が2020年に30万人発生するという問題があり最初は訪問看護業界にITを活用したイノベーションを起こす方策について議論していました。

守屋さんが経営に参画しているケアプロ株式会社は ワンコイン健康診断事業を「簡易検体測定室」事業として国からのお墨付きを勝ち取った日本を代表するソーシャルベンチャーです。そのケアプロさんが訪問看護事業も行っていて。現場の取材をしたかったとき、守屋さんがケアプロさんで訪問看護事業に携わる若いみなさんとお会いする機会をつくってくれたんです。

その後何度か志高く優秀でITリテラシーも高いみなさんと様々な議論をしていく中で訪問看護のイノベーションは自社事業ではなくケアプロさんを支援する形で実現させた方が早いと思うに至り、結局エンジェル投資させていただくことになりました。

次に着手した課題が「認知症の予防・脳の健康」です。そもそも高齢社会といっても多くの高齢者が脳も体も元気で生涯現役で稼ぐ側、あわよくばイノベーションを起こす側にまわってくれればそう恐れることもないはずです。

しかしながら日本は「認知症大国」で現在でも約850万人、2025年には高齢者3人に1人が認知症もしくはその予備軍と試算されています。認知症1人につき×3人が疲弊するともいわれ、この問題はまさに高齢社会課題の一丁目一番地。当社として避けて通れないと思いました。

この話を守屋さんにしたところ「高山さん、実は前職で脳に関する新規事業を提案し最後の最後で事業化を断念したことがあるんです」と。そこにも経験値がありましたか、と(笑)

守屋さんに様々な知見でアドバイスをもらいつつ当時培ったネットワークの中から紹介していただいた医師の方にも参加してもらって認知症予防事業開発プロジェクトは現在進行中です。

そして6ヶ月間ビジネスノマドとして依頼してきましたが、今後は当社と直接契約していただいて、一緒にこの事業を進めていくことになりました。「少子高齢社会の課題解決カンパニー」である当社に守屋さんは欠かせません。

新規事業開発はビジネスノマド活用に適した分野

Q:業務委託として、「ビジネスノマド」を活用する良さを教えて下さい。

高山:

企業の課題がある範囲内ではっきりしていて、その解決に必要な、明確な強みを持っているビジネスノマドがいれば、とても有効に機能すると思います。社内に知見のない、全く新しい分野の新規事業開発などは適している分野でしょう。

ただ新規事業開発においては スキルやネットワークに加えて守屋さんのように、クライアントが実現したい世界観を共有し同じ使命感を持ち、自らワクワクしてポジティブな空気を創り出していくヒューマンスキルも重要だと思います。両方を兼ね備えたノマドはまだ少数でしょうね。

サーキュレーションさんにはノマドの分母を大きくしてもらい、企業の課題解決のあり方と働き方、両方にイノベーションをおこしてもらいたい。期待しています。

この新規事業支援を担当したプロ人材〜守屋実さんのプロフィール〜

株式会社 守屋実事務所代表、ラクスル株式会社執行役員、ケアプロ株式会社取締役、メディバンクス株式会社取締役、ジーンクエスト株式会社取締役、株式会社サウンドファン取締役。92年に株式会社ミスミ入社、10年間、新市場開発室で業績を上げる。2002年 ミスミ創業オーナー田口弘氏と新規事業専門会社エムアウト創業、2010年守屋実事務所を設立し現在に至る。

この案件についての守屋実さんのインタビューは「豊富な新規事業経験により、経営者のアイディアを形に。守屋実さん」をご覧下さい。

【支援先】株式会社イノベイジ 代表取締役 高山 雅行
1989年神戸大学経済学部卒業。株式会社リクルート人材センター(現リクルートキャリア)入社。
97年 株式会社アスパイア(現アイレップ)創業、代表取締役に就任。2006年 ヘラクレス上場(現東証ジャスダック市場)上場、09年代表取締役会長CEO、11年デジタルアドバタイジングコンソーシアム(博報堂DYグループ)に売却、連結子会社となり、12年同社退職。13年に株式会社イノベイジを創業し現在に至る。

ノマドジャーナル編集部
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