マーケティングのプロ人材として企業の支援を行う南坊泰司さん(以下:南坊)が、今回は日本たばこ産業株式会社(以下:JT)の若きデジタルマーケティング担当者である山本悠佳さん(以下:山本)のメンター的立場としてジョイン。たばこ事業において、二人三脚でOMO施策のローンチまで行いました。「専門家が有望なメンバーを1on1で指導する」という外部人材の活用方法にはどのようなメリットがあるのか、お二人にじっくりお伺いしています。

マーケティングについて対等に相談できる「先輩」が欲しかった

「JTならではのブランド」展開を目指し、マーケティング分野でPoCを繰り返してきた

日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 事業企画室 課長代理 山本 悠佳様

山本:JTは1985年に設立され、たばこ事業を中心に 70 以上の国と地域で事業を展開し、130 以上の国と地域で製品を販売しているグローバル企業です。その中で当社は「ひとのときを、想う。」をコミュニケーションワードとして掲げ、お客様に信頼される「JTならではのブランド」を生み出し、育て、高め続けることをミッションに事業を展開してきました。

私自身は、もともとマーケティング部署で広告表現の開発などを行っていました。若手がアサインされたプロジェクトでデジタルコンテンツを企画し、PoCを繰り返すような案件などにも取り組んでいましたね。

新規コンテンツ制作をスタート。一人の推進では限界を感じ、専門家のアドバイスを求めた

山本:業務を通して一定の成果が出るようになってきたので、私が広告表現からコンテンツ制作の専任担当になったのが、今回のプロジェクトの始まりです。

担当は私だけだったので、一人で情報をインプットし、企画を考え、何か新しいものを作るというサイクルを回していく中で、「外からのアドバイスが欲しい」と思いました。もちろん一緒に仕事をする仲間はいましたが、それとは別に、同じ目線を持ちつつ壁打ち相手になってもらえるようなマーケティングの先輩が欲しかったんです。そのときご相談させていただいたのが、社内でつながりのあったサーキュレーションさんでした。

ハイクラスなマーケティング人材を「壁打ち相手」として活用する手法に、上司も前向きに共感してくれた

山本:南坊さんへのご依頼を決めたのは、ざっくばらんにマーケティングのご相談ができそうな方だと感じたからです。常日頃コンサルタントの方から課題整理やソリューションのご提案をいただくことは多いのですが、南坊さんはその手前にあるふんわりしたゴール設定の段階から、一緒に楽しんで考えていただけそうだと思いました。

もちろん、南坊さんのような素晴らしいキャリアを持つ方を壁打ち相手としてお迎えするのは、プロ人材の活用方法としては非常に贅沢です。一方で私の上司は、今回の支援に対してとても前向きでした。上司としては「どうすれば部下により自由に動いてもらえるか」という点を重視していたので、壁打ち相手が欲しいという私の課題感にも共感してくれたんです。

研究熱心な担当者に負けないよう幅広い情報収集を意識

OMOマーケティング戦略のプロ人材 南坊 泰司氏

南坊:私は新卒で電通に入社して、ブランドコンサルティングやデジタルマーケティングなどの専門領域を経た後、「マーケティングを通じて社会に提供できる価値を最大化すること」を目指してメルカリに転職。マーケティング・マネージャーとしての業務やOMO戦略チーム立ち上げを行い、2020年に独立しました。現在はマーケティングやクリエイティブ領域を中心に、さまざまな企業の支援をさせていただいています。

私自身はたばこを吸わないのですが、文化的側面から嗜好品としての価値を感じています。JTさんの支援をするにあたっては、この「たばこ」という特定の分野に対して、多様な事例やユースケースを収集する必要があると感じていました。また、山本さんご自身も研究肌な方だったので、プロとして負けないように、価値を感じていただくことを意識していますね。

一つひとつの施策を線としてつなぎ、長期的目線で展開する手法をレクチャー

事業の特性を理解した上で、一緒にどんなコンテンツ制作ができるかを前向きに検討してくれる

山本:今回のプロジェクトは、目的の再定義から企画検討、実施、分析といったサイクルを繰り返す中で、南坊さんにいろいろとサポートいただく形で進めていきました。本当にふわっとした構想段階から、新しい情報やご意見を教えてくれましたね。

当社のコンテンツ制作における難しさは、やはりたばこ業界ならではの制限があることです。他社ならできることも、当社の事業ではNGというケースが多いんです。ですから、プロジェクトを進めるにあたってはいかに粘り強く、諦めずに知恵出しをできるのかが大事になります。南坊さんはこの点、業界的にできないことを踏まえた上でできることを一緒に前向きに考えてくださるのが、とてもありがたかったです。

自分だけでは気付けない「施策同士の有機的なつなげ方」や「効果的な資料作り」に対するアドバイスがうれしい

山本:私自身も複数の施策を考えていましたが、南坊さんはこれらを「点と点」ではなく、どのように線としてつなげていくべきなのか、有機的に見てくれます。例えばリアルとデジタルでそれぞれどのような体験の流れがあるのか、プロジェクト全体を一歩引いた視点からアドバイスをいただけることが、いつも推進の指針になっていました。

南坊:「一歩引いて見る」というのは、私としても気を付けていた点です。山本さんはとても感性が豊かで、自分の信条やスタイル、そして独自の切り口を持っている方です。プロジェクトを進める上では、これらを基本的に伸ばして広げ、阻害しないことを大前提にしていました。一方で、その感性が壁にぶつかることもありますから、ここをどう乗り越えるべきなのかを随時伝えられるようにしているという感じですね。こちらからガンガンご提案するというよりも、山本さんのやりたいことをいかにしてエフェクティブに実現するのかという視点でサポートするのが、私の役割だと思っています。

山本:資料の作り方についても、他社の事例も含めていろいろ教えていただきましたね。

南坊:企画が通らなければ始まりませんからね。ドキュメンテーションは試行錯誤しました。新しいことをやるにしても、新しすぎる感じに見えると上手く通りませんし、同じ内容でも説明の仕方を変えればわかってもらえるというケースもあります。

山本:本当に、同じ目線に立っていただいているなと感じます。代理店さんからご提案をいただくときは、その内容を自分でどう言い換えようかと考えることがあるのですが、南坊さんはそこも一緒に考えてくれるのがとても心強いです。

デジタルコンテンツ制作を飛び越え、Webとリアルを絡めたOMOの切り口で新たな施策をローンチ

山本:もともとプロジェクトのお題は「デジタルコンテンツの制作」だったのですが、南坊さんと取り組んでいくうちにデジタルだけでは限界があると感じ、現在はリアルとの接点も含めたOMOも切り口で企画を進めています。

南坊:そもそもたばこは物理的に吸うものですし、お店で購入しますよね。ですから、オフラインは活用したほうがいいだろうという話になったんです。

山本:その中で11月15日にようやくローンチに至ったのが、「ザ・テイストセッション」です。たばこの「味わい」をテーマにしたコンテンツで、オフライン・オンラインで複数の施策を展開します。ショップ施策としては、例えばたばこのブランド情報を隠した状態でテイストを味わってもらうようなリアルな体験づくりを行います。お店に来られない方向けには、ECで購入できるさまざまなフレーバーが一式になったトライアルセットと一緒に体験できるデジタルコンテンツを公開し、その人におすすめのフレーバーがわかる、Webの診断コンテンツなんかも用意していますよ。

今回の施策にはデータ収集のトライアルという意味合いもあり、一部施策では顧客のID連携を行います。集まったデータを分析して次の体験につなげていく予定なので、実際にはここからプロジェクトが始まるのだと感じています。

単発ではなく長期目線で施策をローンチできたことは会社として大きな一歩

山本:プロジェクトのリリースというのはひとつの起点であり、本当に見るべきはその先の展開です。これまでは単発でリリースをしてそれから次を考えることが多かったのですが、今回南坊さんと取り組みをする中で、次の展開を解像度高く描いた状態で施策をローンチできたのは、大きな前進だと思います。

南坊:新規の取り組みが単発の打ち上げ花火で終わってしまうというのは、ありがちなことですよね。でも個人的にはその先へのつながりや、長期的な意図を持たずに実施するのはもったいないなと思うんです。それはご支援当初から、ずっと山本さんにお伝えしていました。プロジェクトがいつ終わるかわからないにしても、短期的・中期的に目指す内容を明言すること。そして、施策同士につながりを持たせるといったことですね。

特にJTのようなガッツのある大企業では、長期的な積み上げが期待されています。今回は、その第一歩が見えてきたのではないでしょうか。

今後も同じマーケターとして楽しみながら話し合える関係性を続けたい

左:日本たばこ産業株式会社 たばこ事業本部 事業企画室 課長代理 山本 悠佳様
右:OMOマーケティング戦略のプロ人材 南坊 泰司氏

山本:マーケティングの大先輩として話をしていただけるような関係性は、なかなか得難く貴重なものです。ですから今回の支援は、私にとって本当にありがたいものでした。 私は南坊さんにお仕事を依頼している立場ではあるのですが、「たばこ」というカルチャー、ひいては嗜好品全般について、今後もマーケターとしてご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

南坊:こちらこそよろしくお願いします。私も毎回刺激をもらっているので、山本さんと仕事をさせてもらえるのは端的に言って楽しいです。すでに山本さんはマーケティングの経験も知見も十分持っていらっしゃいますが、今後はその戦闘力をより高めていけるような指導ができればと思います。

普通の支援ではPMやアドバイザー、コンサルタント的な立ち位置として入ることが多いのですが、今回はメンタリングやコーチングに近かったのかなと思います。この使い分けは面白いですし、「プロ人材と企業にはこういう関わり方もあるのだ」と、自分としても新しい発見ができました。

山本:サーキュレーションさんにも感謝しています。プロ人材の選定段階から、私の曖昧な状態の相談に対して的確なアドバイスをいただけました。私自身、外部の方を活用するのは今回が初めてだったので、どんなふうにお付き合いをしていけばいいのかなど、本当にきめ細やかにサポートいただけたと思います。最初のほうはコンサルタントの方が毎回打ち合わせに参加してくださっていて、「こんなにサポートしてもらっていいのか」と逆に心配になるくらいでした(笑)。本当にありがとうございます。

若手社員に経験豊富な外部人材をメンターとして付けるというのは、上司からすると勇気が必要な決断です。しかし今回の支援は、事業に情熱を持って取り組む山本さんという「後輩」と、その熱意に応えられるだけの知見を持った南坊さんという「先輩」が見事に噛み合ったことが、素晴らしい成果へとつながったのだと感じました。

本日はお忙しい中、ありがとうございました!

企画編集:花園絵梨香

写真撮影:樋口隆宏(TOKYO TRAIN)

取材協力:日本たばこ産業株式会社

※ 本記事はサーキュレーションのプロシェアリングサービスにおけるプロジェクト成功事例です。