• 成長企業が求める「今日から欲しい戦力」
  • ビジネスノマドが備えている「キャリアの強み」

どちらもプロフェッショナルであるがゆえに、パートナーの見極めは互いに細心です。

このコラムでは、サーキュレーションがパズルの一片がピタリはまるように支援したことによって起きたそれぞれの出会いが動き出し、力強いプロセスを辿っていく実例をご紹介いたします。

ディスカッションパートナーから案件の具体化まで、数多くの新規事業経験を活かしたビジネスノマド(プロ人材としてのフリーランス)ならではの実働支援の高い付加価値が垣間見えます。

初めての面談から、双方ともにエンジンがかかった。

Q:株式会社イノベイジの新規立ち上げ企画支援という提案について、どのような印象をお持ちになりましたか?

守屋:

イノベイジさんの新規事業は、ヘルスケア、医療、介護、アクティブシニア領域の事業開発、その領域への投資や企業支援などでした。これから展開するそれら事業の企画を手がけてほしいということです。

私がサーキュレーションに登録した時点で、キャリアや現在の仕事はもちろんのこと、おそらく性格や、興味の対象まで把握してくださっていた上での提案だと、すぐに分かりました。

20代の当初から、私の新規事業開発の中心は、病院向け事業、診療所向け事業、動物病院向け事業などでしたし、現在の仕事の中には、ワンコインで健康診断が出来る予防医療サービスや24時間365日の訪問看護、そしてゲノム解析などの事業があったからです。

ですから、支援先としてのイノベイジさんは「よくここまで私にぴったりな案件を探してきてくれたな」と前のめりになってしまうようなクライアントさんでしたし、お役に立てそうだと感じました。

Q:支援先のイノベイジの高山社長に実際に会われた時の印象や感想はいかがでしたか?

守屋:

初対面でしたが、その日から目指す事業への話が盛り上がって、高山社長とは面白い仕事が出来そうだなと予感がありました。

高山社長は、「これから日本は超少子高齢化に突入していき、すでに現在でも65歳以上が人口の25%を占めている。2050年にはその比率が40%まで上がるという試算があります」と前置きして、「高度成長期に出来上がったシステムは、この状況を見据えてどんどん変えていかなくてはならない」と熱を込めておっしゃっていました。その過程で発生する社会的な問題や課題を解決していく事業のためにイノベイジ社を創設したのだと。

私の新規事業立ち上げのキャリアには、ヘルスケアや医療関連という共通のビジネス・フィールドが多くあり、その分野への使命感も抱いていましたから、高山社長への信頼感も強くなりました。

私の仕事内容は、「イノベイジ社の自社事業を開発するディスカッションパートナーになってほしい」というものでした。すぐ契約となり、翌週には週1回の密度の高いブレーンストーミングが始まりました。

加速がつくと止まらない。ディスカッションの日々

Q:半年の契約で始まったわけですが、仕事内容のスケジュールや目標のゴールなどはお決めになりましたか?

守屋: 

いえ、いえ、もう最初から毎週毎週、飛ばしていくブレーンストーミングの連続でした (笑) 。高山社長は、高齢化社会の問題を、国が行う施策と平行して民間でどのように進められるかと考えている方です。大変な勉強家でアイディアも豊富で、溢れてくる発想を「これはどうかな」「あんなことをしてみるのはどうだ」と私に次々とぶつけていらっしゃいました。それも、時間をかけて情報収集をしたデータや資料をベースにしていることが多い。

最初のテーマに上がったのは「在宅医療」でした。高山社長は、こう問題提起します。

「2020年には、年間で140万人が亡くなるという多死時代を迎え、誰にも末期の介護をしてもらえない<看とり難民>が30万人にも上る、という予想が算出されている。在宅医療の生産性をどう考慮していくか。国は懸命に訪問介護ステーションを増やそうとしていて、医療系の中で唯一、民間の株式会社参加を認めたが、うちはどのように事業が可能だろうか」

私も、すでに、在宅医療事業や予防医療事業を手がけるケアプロ株式会社の立ち上げに関わっていたので、経験からの学びや、得ていた業界知識をもとに、ブレストをさせていただきました。

例えば、訪問看護の成功事例である、オランダの「Buurtzorg」の事例をご紹介させていただいたりした時は、高山社長は、1週間後のブレストまでにはもうそのオランダの事例を調べあげてきています(笑) 。IT投資をテコに伸びていたことを捉え「では、我が社でやるなら、最先端のテクノロジーを活用し、徹底的にIT化したステーションを運営するための支援事業が出来るのではないか」と構想が具体的に次々と生まれてくるのです。

こちらから球を投げれば、何本でもノックを返してくるんですね。

高山社長が考えたさまざまな事業構想も、毎週何かしら投げられてきますから、二人のディスカッションはエンドレスで続きました。週に1回といいつつ、いけそうな案だと週に2回話し込んだり(笑) 。本当に何十という数のアイディアを検討したと思います。

それでも3ヶ月をすぎる頃には、おおよそ5分野ほどに絞られていき、その後さらに各分野を具体的に動かす方法を絞り込んでいきましたね。

ディスカッションにとどまらない数多くの失敗・成功経験を活かし、アイディアを具体化へ

Q:守屋さんのご経験が活きた実例をご紹介くださいますか?

守屋:

私が企業内起業として関わった17のプロジェクトや、独立起業として複数の会社の経営に携わっている経験が、いくぶん役立ちました。

例えば、高山社長がやってみたいとアイディアを出される案件の中には、すでに私が試みて失敗し、頓挫した事業もありましたので、「そのアイディアには過去チャレンジしたことがあり、ある段階で行き詰りました」と経験談を話すことが出来たのです。

「いいと思うんだけどな」と検討が始まっても、過去の失敗経験から、同じ失敗の繰り返しを回避できるわけです。 しかも、17のプロジェクトに関わっただけでなく、じつはその何倍も失敗しているので(笑) 、ここまでは形になってもその先は無理だとか、収益を出せないとか、時期尚早とか、「危険察知能力」が作動するんです。結果、高山社長に無駄な投資をしていただかなくてすみました。

また、20年以上も起業に専念していると、一緒に仕事をしてきた信頼できる仲間とか、先輩、後輩とか、新規事業の生態系と呼べるような人の繋がりを創ることが出来、お陰様で、必要な時に必要な伝手を高山社長にご紹介することが出来ました。これは、先行きどうなるか分からず、また、今週と来週では、違う仮説で動いていることもままある新規事業の初期の初期においては、非常に大事なことであったように思います。

ともかく、最初の一日目から6ヶ月間、本当に濃くて面白い仕事をさせていただきました。

守屋実さんが支援した案件〜株式会社イノベイジ高山社長への新規事業支援〜

インターネットマーケティング会社の株式会社アイレップを創業ならびに上場後、シリアルアントレプレナーとして株式会社イノベイジを創業した高山社長。少子高齢化で生じる社会課題をイノベイティブな事業で解決したいという思いから、予防医療・ヘルスケア領域を中心に投資や事業インキュベートを志す。しかし「取り組むべき課題は何か?それを解決する策は?事業としてスケール可能か?法的なリスクや検討すべき課題は何か?」を必要としていた。

この案件についての株式会社イノベイジ高山社長のインタビューは「新規事業の方向性はディスカッションで定まる:株式会社イノベイジ 高山社長」をご覧下さい。

【専門家】守屋実
株式会社 守屋実事務所代表、ラクスル株式会社執行役員、ケアプロ株式会社取締役、メディバンクス株式会社取締役、ジーンクエスト株式会社取締役、株式会社サウンドファン取締役。92年に株式会社ミスミ入社、10年間、新市場開発室で業績を上げる。2002年 ミスミ創業オーナー田口弘氏と新規事業専門会社エムアウト創業、2010年守屋実事務所を設立し現在に至る。

ノマドジャーナル編集部
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