さらなる成長の加速化のため、新規事業のために外部人材活用を進める企業が増えています。

今回ご紹介する企業は、そのような外部人材を活用したオープンイノベーションの事例です。印刷物や販促ツールの企画・制作、オリジナル情報誌の企画・編集・出版などを手掛ける株式会社アイアンドエフ。新規事業開発にあたり、外部専門家を活用しました。

 

活用した外部専門家は、過去30年で200社以上の新規事業展開をサポートした実績を持つ、元コンサルティングファームのパートナー、畠中一浩さんです。

 

この記事では、外部専門家を活用した狙いや取り組み内容、成果について、企業と専門家、それぞれの視点からお伝えします。前編ではアイアンドエフ・代表取締役の福島優さんにお話を伺いました。

新規事業開発を通じて若手メンバーの育成を

Q:新規事業に社外の力を活用するに至った経緯は何だったのでしょうか?

福島優さん(以下、福島):

当社には新規事業の専門部署があるわけではないので、何らかの形で社外の力を借りたいと考えていました。また、今回だけでなく継続して新規事業を起案していくために、やり方やプロセスを現場の社員が学べる場としても期待できると感じたんです。新規事業のノウハウが豊富な外部の方とともに動くことで、事業立ち上げに加えて教育効果もあるのではないか、と。

 

当社はハウスメーカーなど不動産関係のクライアントが多いのですが、業界に精通していたり、人的なコネクションを持っていたりというよりは、幅広く新規事業を推進されてきた経験を持つ方と出会いたいと考えていました。

そうした中、全国の広告業ネットワークの会合でサーキュレーションさんの外部専門家紹介サービスについて知る機会があり、興味を持ち、問い合わせたという経緯です。

Q:新規事業の専門家のノウハウを獲得する、社員の育成の場としても興味をもったということだと思いますが、今回の新規事業を進める目的は何だったのでしょうか?

福島:

既存事業だけでは、事業の中で築いてきた当社ならではのリソースを、なかなか生かしきれていないと感じていたんです。「将来の柱となる新たなビジネスを見つける」ということを第一の目的に置いていました。

もう一つは、新規事業開発の考え方や進め方、ノウハウを学び、社内に情報共有していくことです。人材育成によって、一過性のものではなく継続的に新規事業の種が生まれる組織を作っていきたいという思いがありました。

Q:社内の、どんなポジションの方に参加してほしいとお考えだったのですか?

福島:

30代後半の営業トップと、20代、30代の若手メンバーですね。新規事業を考える際のプロセスを学ぶことは、日常業務でお客さまと向き合う際にも生かされるのではないかと。

3つの事業アイデアが形に。翌年以降の新規事業提案にも期待

Q:今回お手伝いした新規事業の専門家、畠中さんの印象はいかがでしたか?

福島:

とてもストレートにモノを言ってくださるので、刺激的でしたよ。社内で選出した20代、30代中心の5名のプロジェクトメンバーは、経験が浅く、当初はミーティングでも良いアイデアを出せませんでした。畠中さんからは「そんなレベルか」とグサリ(笑)。最初は皆、心が折れかけていたかもしれません。

しかしプロジェクトの中盤頃からは各メンバーに成長が見られました。本人たちも手応えを感じたようです。半年間のプロジェクトで人材を育成するという目的に向けて、ぴったりの方でしたね。

 

また畠中さんは広い人脈を持っていて、プロジェクトの中で「こんな力を借りたい」と思ったときに、外部とつないで実際にご紹介していただくこともありました。期待していた以上に動いてくださった。「フレームを教える」「進め方を教える」だけではなく、実際に物事を前に進めるためのお手伝いをしていただきました。

Q:現状、プロジェクトはどのように進んでいるのですか?

福島:

畠中さんに手伝っていただいた半年間が過ぎ、私たちにとってはこれからが本番だと思っています。具体的に3つの案件が形になりつつあり、事業家に向けて動いている段階です。この中には商標登録を新たに申請したものもあります。本格的にマーケットに挑んでいきたいですね。

新規事業の考え方や進め方を社内共有できたので、来年、再来年も、継続的にアイデアを募っていく予定です。今回のプロジェクトに参加したメンバーを中心に、新たなメンバーを加えていきます。

Q:社員の皆さまを見ていて、変化を感じる部分はありますか?

福島:

参加した若手メンバーにとっては、自分で考え、アイデアの裏付けをし、実行するというプロセスは初めての経験でした。今回はアイデア出しから関わり、非現実的な案も含めてブラッシュアップしてもらうことができたので、成長につながったのではないでしょうか。

既存事業の中だけで働いていると、どうしても上からの指示を完遂することだけに力を注ぎがちです。そうした状況からの変化を感じることができたと思います。今回参加したメンバーは今後、学んだことを生かしてさらに若い世代に対してアプローチできるでしょうし、通常業務だけでは得られない知見が社内に広がっていくことを期待しています。

「採用ではなく、外部専門家を活用する」という手段の意義

Q:外部専門家を活用する際には、「社員と同じレベルで成果を求められない」ことを懸念する企業も多いようです。
福島さんは同様の懸念を感じることはありますか?

福島:

いえ、それは感じません。当社では数年前から、人事制度やシステム環境構築などスポットで必要になるときに外部人材を活用しているんです。社内のリソースだけではどうしても難しい部分がありますからね。

「外部の知見を借りること」そのものに意味があるのであって、社員に求めるのと同様に成果を要望するのは間違っているように思います。今回の新規事業にしても、「売上や利益をどれぐらいまで上げるか」ということを目的にしていたわけではありません。売上や利益が最優先であれば、優秀な営業をヘッドハンティングしたり、経理のプロフェッショナルを採用したりすることが先決でしょうね。

 

畠中さんには当社のことをしっかり理解していただき、「ともに正解を考える」というスタイルでプロジェクトを支えていただきました。参加したメンバーにノウハウが提供され、今後も活用できる資産となった。外部専門家に入っていただいたからこその成果だと思います。

取材・記事作成:多田 慎介・畠山 和也

相談者:福島 優

株式会社アイアンドエフ代表取締役。
1988年、地元・岡山市でアイアンドエフを設立。1997年に東京オフィスを開設する。
各種印刷物や販促ツールの企画・制作をはじめ、住宅関連情報誌『新居日和』『タテタラ。』、健康医療情報誌『病院だより』などオリジナル媒体の企画・編集・出版を手掛ける。

専門家:畠中 一浩

ネクストコンサルティング株式会社代表取締約CEO。
アーサーアンダーセン(現アクセンチュア)マネジャー、コーポレイトディレクション(CDI)取締役パートナー、CDIソリューションズ代表取締役CEOを経て現職。
新規事業展開のコンサルティングを中心に、経営戦略の立案、事業計画の策定、企業再生・再成長支援、M&A戦略など幅広い分野のプロジェクトを推進。
著書に『IT投資は3年で回収できる』(PHP研究所)、『人を減らさず、ムダを減らせ』(NTT出版)。