第三者割当増資とは、株式譲渡とは異なる手法で株式を取得する方法です。
株式譲渡が「株式を売却」して主に創業者やオーナー社長が利益を得るのに対し、第三者割当増資では「新しく株式を発行」して資金調達を行うことで、財務基盤を強化し、事業を成長させることができます。
今回は、この第三者割当増資を行うことのメリットと、実際の手続きについて見ていきましょう。
第三者割当増資で、自社の信頼度を高める
Q:ニュースで第三者割当増資という言葉を聞いたのですが、どのような行為を指しているのでしょうか。
A:第三者割当増資とは新しく株式を発行する増資のことで、M&Aでも用いられる手法の一つです。
企業を買収するには、当該企業の意思決定権を取得する必要があります。株式会社では議決権を過半数取得することで、当該企業の意思決定をコントロールすることができます。
この株式ですが、新たに新株を発行する方法もあります。株式の発行には「第三者割当増資」「株主割当増資」「公募増資」の3種類があります。なお、株主になるに当たっては、金銭での払い込みの他、現物出資で株式を引き受けることも可能です。
新株発行の種類 | 内容 |
第三者割当増資 | 新株を特定の第三者に発行する場合 |
株主割当増資 | 新株を特定の者に発行する場合 |
公募増資 | 新株を不特定多数の者に発行する場合 |
なお、新株を発行するには、下記の事項を決めておく必要があります。
新株式の募集事項 |
①募集株式の数 |
②募集株式の払込金額またはその算定方法 |
③現物出資の場合は、その旨と出資する財産の内容及び評価 |
④払込期日または払込期間 |
⑤増加する資本金及び資本準備金に関する事項 |
新株発行の中でもっともよく耳にするのは第三者割当増資ではないでしょうか。
第三者割当増資はベンチャー企業が資金調達や上場を目指す過程において、ベンチャーキャピタルなどから出資を受ける際にもよく実施される増資です。発行会社が特定の第三者に対して株式を割り当てることができることから、信頼できる方に株主になってもらうことができます。
第三者割当増資のメリットとは
Q:第三者割当増資には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
A:増資の一種なので、会社に資金が注入されることで財務基盤が強化されます。また、株式譲渡と違って株式を売却するわけではないので、希薄化はするものの既存の株主も株式は保有したまま一定の経営権を維持することができます。
ベンチャー企業の第三者割当増資での資金調達については、最近は耳にすることが多くなっていますが、その他の例としては、家電量販店のラオックス社が中国の蘇寧電器グループの傘下に入る際に、第三者割当増資(新株予約権の行使を含みます)を選択しています。
Q:増資を実施するには、どのような手続きが必要なのでしょうか。
A:オーナー社長や社内だけでなく、株主総会で合意を得ることが必要です。
第三者割当増資の発行に際しては、非上場会社であれば株主総会の特別決議を経て誰に割り当てるのか、株式数はどれくらい割当るのか、株価はどうするのかを決議します。ただ実務上は発行をスムーズにするため取締役会へ委任をしているケースが多いです。
なお、上場会社が第三者割当増資を実施するには取締役会決議が必要です。また、その発行する株価が有利な株価での発行と捉えられると、株主総会の特別決議を経る必要があります。
増資の手続きは、募集事項や発行決議の議事録など細かい手続きが多いので、ぜひ専門家に相談をして実施していきましょう。
大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。