首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのような事業展開を進めるべきなのか、北海道札幌市に住む筆者が北海道で開催された「地方創生」に関するイベントのレポートを行っていきます。
今回は、元内閣総理大臣・小泉純一郎さんが8月24日・水曜日に札幌市内のホテルで行った講演会をレポート。
この講演会は、北海道で雪・氷といった自然エネルギーの利用促進の活動をしているNPO法人雪氷環境プロジェクト設立10周年記念特別講演会として開催されたもので、イベント名が「雪氷エネルギーこそ北海道の力」、演目名は「日本の歩むべき道」でした。
元内閣総理大臣である小泉さんが一般社団法人自然エネルギー推進会議の発起人代表である縁から、今回の講演会が実現。後編では、北海道ならではの雪・氷をどのようにエネルギーとして生かしていくか、そのためには日本・北海道はどのような方向に進むべきかについてお話がありましたので、要点をまとめてレポートします。
原発で発電してきた分は自然エネルギーで賄える
1970年代の石油ショックの大混乱と比較しても、原発ゼロの期間はほとんど混乱が起こっていないという小泉さん。これから自然エネルギーを利用する動きが活発化することで、自然エネルギーの競争が起こり、クリーンでコストの安いエネルギーがどんどん出てくるのではと話します。
「これだけ原発が安全じゃない、クリーンじゃないと言い続けているのに、関係者は誰も文句を言ってこない(笑)。『総理経験者がそんなこと言ってはいけません』と言われるかなと思っていたのですが、関係者もうすうす気づいているんじゃないですかね。自然エネルギーで、原発で発電してきた分は賄えます。政府も電力会社も、優秀な人がそろっているのになぜそれに気づかないのかと思います」(小泉さん)
人々を惹きつける話しぶりは今も健在
北海道ではすでに雪冷房が導入されている
日本は自然がたくさんあり、そのエネルギーを活用するという夢のある事業ができるのに、なぜその方向に舵を切らないのか。しかし、民間からすでに自然エネルギーの有効利用が始まっています。
「日本が自然エネルギーの活用をうまく推進すれば、外国が真似しますよ。日本から、自然エネルギーを広めていくんです。私が今日、講演会前に見学してきた場所……円山動物園(札幌市中央区)のレッサーパンダ館などでは、すでに雪を使った冷房も実践されていますから」(小泉さん)
講演会が行われたホテルのホワイエには、北海道で開発された雪氷貯蔵を利用した簡易式雪冷房装置も展示されていました。その隣のパネルによると「雪1トンの冷熱利用で、石油を10リットル節約し二酸化炭素を30kg抑制する」とのこと。また空気が雪の隙間を通り抜けることで冷やされる仕組みのため、雪がフィルターの役割を果たし清浄効果も得られるとのこと。
この雪冷房は、小泉さんの話にも出てきた円山動物園のほか、2008(平成20)年に開催された北海道洞爺湖サミットの国際メディアセンターや世界的彫刻家イサム・ノグチ氏が設計したことでも知られるモエレ沼公園(札幌市東区)の『ガラスのピラミッド』にも導入されています。
「私が政治家になったときには、まさか引退後もこのようなエネルギーに関する活動をしているとは想像していなかったのですが(笑)、自然エネルギーの大切さをこれからも説いていきたいと思います。私の尊敬する政治家に尾崎行雄という人がいます。連続当選25回。議員生活60年。その方が95歳で亡くなる直前に残した言葉が『人生の本舞台は常に将来にあり』。私もその言葉を胸に、活動を続けていきたいと思います」(小泉さん)
取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)
1942(昭和17)年、神奈川県生まれ。1972(昭和47)年に衆議院議員に初当選、以後要職を歴任し、
2001(平成13)年から5年間に渡り内閣総理大臣を務める。
2009(平成21)年に政界を引退するも、積極的な政治活動を行っている。
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。
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