今回、ビジネスノマドとして取り上げるのは、株式会社CADENA(カデナ)代表取締役の川那辺保伸さん。2016年6月に法人設立したばかりではありますが、すでに複数社でコンサルティング活動を行っています。新卒で入社した前職での営業経験しかないにもかかわらず、どのようにさまざまなスキルを身に付けていったのでしょうか。川那辺さんのこれまでを振り返っていただきながら、コンサルタントに必要な考え方や専門家を活用することの意義についても、お伺いしました。

200名のメンバーをマネジメントすることで養われた現場の最前線をイメージする力

Q:株式会社ビジネスコンサルタントで営業として活躍されていましたが、そのような職についたきっかけは?もともとコンサルタントになりたかったのでしょうか。

川那辺保伸さん(以下、川那辺):

学生時代はコンサルタントになりたいとは考えていませんでした。当時は和太鼓・民俗芸能のインカレサークルに所属していました。その団体からのプロ団体立ち上げにも参画した経験の中で人と人の関係性が集団のパフォーマンスに与える影響について非常に興味が強くなった事もそうなんですが、学部名が政策科学部だったので、行動科学という言葉を謳っていた前職に、ただただ語感が似ているという安直な理由で興味をもちました(笑)。それで入社したのがきっかけですね。

Q:もともと、営業でトップになろうとか、そういう気持ちがあったのでしょうか。

川那辺:

そうですね、やるからにはトップになるつもりでしたね。前職では口だけが達者なコンサルタントでは、経営者と対峙した際に何の影響力も信用も生まない。だから営業時代に現場の苦労やビジネスの流れを実体験する必要があるという事で全員が営業に配属されるんです。より高みを目指している組織とお付き合いするのですから、自らもそのようにならなければと思いました。なので、各社の経営者・経営幹部が日々頭を悩ましている事を大局的に捉えて、どうすれば経営コンサルティング、教育研修、組織診断などを複合的に活用してお客様のイノベーションを起こせるかを日夜考えていました。

Q:かなり広範囲に渡るお仕事をされていたんですね。マネジャーになってからは、どのような役割があったのでしょうか。

川那辺:

「人をつくる、顧客をつくる、数字をつくる」がマネジャーとしての責務であると前職では常々意識されていたので、マネジャーとなった後は「人、顧客、数字」に責任を負い、人を通じて生産性をあげる事が求められるようになりました。最終的に直下では25名でしたが、営業部の責任者として全社プロジェクト(戦略業種攻略・新卒採用・営業成長ステージ策定など)を牽引していた頃は約200名をマネジメントしながら、課題達成のための働きかけを行っていました。そのように200名に対して営業施策を展開する中で、ひとり一人のメンバーが日々何を思い、どう行動しているか現場の最前線をイメージする力が養われたと感じています。

仮説設定力や構想力が、コンサルタントにとって重要な資質

Q:現在は、ご自身で会社を経営されているとのことですが、主にどのような事業を展開されているのでしょうか。

川那辺:

2016年6月に株式会社CADENA(カデナ)という会社をつくりました。自分の強みは営業とマネジメントの領域だと考えているので、各社が抱える営業部隊の業績向上や仕組みづくりなどの課題解決を中心に事業展開しています。今後は新規事業も展開していく予定です。

Q:営業部隊の業績向上支援など、営業に特化したサービスを展開しているのですね。

川那辺:

はい。ただ、お客様に営業部隊がないこともありますので、そういった際には組織の上位概念の確認からはじまり、事業を上手く展開するためにどう業務設計し、実行に移すかといったこともコンサルティングしています。

Q:コンサルティングを行う際に、なにか心がけていることはありますか。

川那辺:

多くの企業では業績向上のための成功要因を考えずに、目の間の仕事に追われていることが多いので、ヒアリングをしっかり行った上でそのポイントを掴むことですね。例えば業績が向上する要因や阻害する要因はなんなのか、行動レベルにブレイクダウンにするとどういった指標が重要になるか。「仮説→実践→検証」のサイクルを素早く繰り返して、そのような要因を見つけ出し、現場で実践できることを仕組み化していくようにしています。

このプロセスの中で何よりも大事だと考えるのが、先ほどの現場の最前線が動いている姿をイメージすること。結局どんな良いビジネスモデルや戦略をつくったとしても、現場が動かなければ絵に描いた餅に終わります。そのイメージできた姿によって、何を提供するのかも変えています。これに加えて、仮説設定力や構想力が、コンサルタントにとって重要な資質だと私は考えています。

Q:そういったスキルやご自身の強みは、どこで身に付けられたのでしょうか。

川那辺:

初期に関わってきた案件自体が構想力や仮説設定力を求められるような合併、内部統制、業務改革、拠点開発など組織レベルの課題解決案件が多く、そこで関わったお客様やコンサルタントに鍛えていただいたと思っています。その後はお陰さまで自身でもそのような案件を創出する事ができるようになりましたね。ほかにはコミットする徹底力や営業力も身に付けさせてもらいましたね。

クライアントにどんな価値を提供したいと考えていますか。

川那辺:

お客様よりオーダーを頂いている以上、その目的を達成することは当たり前ですね。その上で、社長など経営陣から現場の社員まで、みんなが幸せになれるといいな、と。幸せというと抽象的に聞こえますけど、業績向上に対する主観的確率があがって「なんかやれそうだ」、「目標を達成できる」と思えることや、「力が身に付いている」と実感することも、仕事をしている上で感じる幸せのひとつですよね。こうしたことを日々実感していただけるようにするのも、私の仕事だと思っています。

営業のプロフェッショナルに寄せられる相談とは?

Q:専門家への1時間相談ができる「Open Research」経由では、どのような課題を解決されましたか?

川那辺:

ITベンチャー企業の営業部隊に対して営業ノウハウを提供したり、コンサルティング会社に対して顧客基盤構築のためのフレームワーク提供や実際にミーティングに参加して事業計画策定やその後の実行について支援を行ってきました。

Q:現在、携わっている具体的なご相談内容についてお聞かせください。

川那辺:

先程お伝えした企業が現在進行形で動いています。「ホームページシステム」「サイト作成サービス」などを手掛けるアイ・モバイル株式会社で、主に営業担当者向けの営業ノウハウに関するレクチャーやワークショップを実施しています。例えば、業績向上仮説の構築、セールスフローの考え方、クライアント価値提供の観点などを提供しました。

また、あるコンサルティング会社では、経営を安定化させるために顧客基盤構築がそもそものオーダーで、事業の上位概念から企業別、サービス別の売上構成を検討し、どのような顧客カテゴリーに対して注力して事業推進するかを初回のミーティングで実施しました。ただその過程で経営理念や事業展開のあり方にまで議論する事となり、初回ミーティングの中で経営理念や事業の方向性を変更する事になり、当初の趣旨とは異なりますが今では新たな理念をベースに事業計画策定やその後の実行に関して支援しています。

Q:今後、ご自身の知見や経験をどのような業界、企業に活かしていきたいですか。

川那辺:

特定はしていませんね。私自身は業界に特化するタイプではないので組織と名がつくものであれば、どこでも貢献できると思っています。現在多いのはBtoBのIT関連企業。組織のトップというのは意外と孤独なので、経営者の壁打ちというか、相談役になるような役割を担ったりもしていますね。現場の意見を経営者に代弁したり、逆に経営者の考えを現場に翻訳したり、という観点でも役に立てていると感じています。

一人ひとりが持つスキルやノウハウを、一社だけに留めておくのはもったいない

Q:外部の専門家を活用するサービスについて、専門家のメリットとはどんなものなのでしょうか。

川那辺:

単純に、仕事の流入経路が増えるのはメリットですよね。特に、独立直後などの初期段階では収益基盤を形成する上ですごく良いサービスだと思います。自分のスケジュールに合わせて仕事の量を設計できることもメリットです。一方で、その専門家がある一定のレベルになって、請負が必要なくなり自分だけで仕事が回るようになると、サービスから離れていく可能性もあるのではと考えています。

Q:フリーランスや複数社で働くビジネスノマドという新しい働き方が注目を集めていますが、今後、こういった働き方が増えていくとお考えですか。

川那辺:

増えると思います。「すでに起こった未来」として日本全体の人口減少が分かっているので、それに対処するため労働力の総量を確保しなければいけない。国も女性活躍推進や定年延長などの施策により取り組んでいます。

各社でスキル・ノウハウを保有しているにも関わらず、様々な理由で既に一線を退いている方が世の中に大勢いらっしゃいます。その中でも実は仕事を継続したいと考えている方がいらっしゃるはずです。その方々に向けたインフラを整えることで、彼ら彼女らが活躍できる場を整えることができると考えています。

Q:では、外部専門家を活用することによって、社会全体にとってどのような価値が生まれるのでしょうか。

川那辺:

スキルやノウハウは、各業界によって習得できるものが違います。一社だけであればそこで終わる可能性が高いですが、他社に貢献できる機会があれば新しい出会いや人脈が広がり、思ってもいない方向に仕事が発展するかもしれない。その組み合わせは無限大で、今よりもっと多くの新しい商品やサービス、そして価値が生み出されるのでは、と期待しています。

取材・記事作成:山田 貴大

【専門家】川那辺 保伸
株式会社ビジネスコンサルタントにて、顧客のイノベーションプロデューサーとして10年間で200社以上担当し、
各社へ業務改革、HRM構築、営業部門改革、次世代リーダー養成、階層別研修などの導入支援に従事。
年間売上営業トップを3年連続達成する傍ら、全国200名の営業部隊に戦略戦術の浸透および戦略プロジェクト運営を通じて組織業績に貢献。
独立後は、営業コンサルティングのほか、バッテリー関連・メディカル関連の事業に携わる。2016年6月に株式会社CADENA創業。
ノマドジャーナル編集部
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