働き方が多様化する中で重要となってくるのが、報酬の問題です。そこで今回からは、政府の働き方改革会議でも取り上げられていた、同一労働同一賃金について見ていきましょう。

2016年12月、政府は正社員と非正社員の待遇格差を是正するための「同一労働同一賃金」の実現に向け「同一労働同一賃金ガイドライン案」を公表しました(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai5/siryou3.pdf)。「同一労働同一賃金」とは、労働者に対して、職務内容が同一または同等であれば同じ賃金を支払うべきという考え方のことです。本ガイドラインでは、「同一労働同一賃金」の実現に向けた具体的方策について検討するため、正社員と非正規社員で待遇差の妥当性について、具体的な例でどのような待遇差が不合理かそうでないかが示されています。

「非正規にもボーナスを」同一労働同一賃金ガイドラインの内容

今後、多様な働き方を実現するためには、これまでとは違う報酬体系の設計が必要となってきます。成果や業務内容、提供する知見やノウハウに応じた報酬を払うようにならないと、独立したり複数社で働くメリットはないでしょう。正社員かどうか、ではなく、労働者の職業経験・能力や成果、スキルアップ、責任の範囲・程度に応じて適切な報酬が支払われなければなりません。そこで、同一労働同一賃金といったテーマでの議論が重要となってくるのです。

今回公表されたガイドラインでは、例えば、労働者の業績・成果に応じて支給する基本給について、同じ成果を出しているのであれば、無期雇用の労働者と同じ報酬を有期雇用やパートタイムの労働者に対しても支払わなければならない、という記載もあります。

※以下、引用(同一労働同一賃金ガイドライン案 平成28年12月20日)
基本給について、労働者の業績・成果に応じて支給しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同一の業績・成果を出している有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、業績・成果に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。また、業績・成果に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。
また、会社の業績への貢献として支給されるボーナスについても、同一の貢献であれば有期雇用やパートタイムでも同一の支給をするべき、とあります。

※以下、引用(同一労働同一賃金ガイドライン案 平成28年12月20日)
賞与について、会社の業績等への貢献に応じて支給しようとする場合、無期雇用フルタイム労働者と同一の貢献である有期雇用労働者又はパートタイム労働者には、貢献に応じた部分につき、同一の支給をしなければならない。また、貢献に一定の違いがある場合においては、その相違に応じた支給をしなければならない。

適切かそうでないかを具体的に、わかりやすく提示してあるという意味で、今回のガイドラインは働き方の多様化を実現するための、大きな一歩であるといえるでしょう。

「正社員だから」というだけでは高い報酬の理由とはならない

契約期間などに関係なく、同一の職務やスキル、貢献度であれば同一の報酬を払うということは、ある意味当たり前のことです。しかし、今回のように具体的な事例にまで踏み込んだガイドラインの公表はこれまで前例がなく、「非正規にもボーナスを」などメディアでも取り上げられ、非常に世間の関心も集めました。

一方で、産業界では、例えば人件費の拡大を懸念し、警戒感が高まっているようです。今後、同一労働同一賃金の原則に則っているとはいえないような賃金制度をとっている場合は、その適切な理由づけや説明が必要になってくるでしょう。例えば年功序列の賃金体系は、正当な理由がなければなくなっていくかもしれません。

記事作成:川口 荘史

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。