少子高齢化やテクノロジーの革新などを背景として、「働き方」の変革が進んでいると言われています。個人のスキルや特徴、志向性を活かした多様な働き方を実現するにはどのような仕組みが必要なのでしょうか?働き方の多様化が進むことによって、個人が自分の潜在価値を最大限に発揮し、キャリアを戦略的に構築していく機会が増えていくことが期待されます。

多様な働き方が実現した社会では、自分のキャリアは会社が用意してくれるものではなく、自分で主体的に、戦略的にキャリアを構築していく必要があります。そうした中で、自分のスキルや能力開発の在り方についても、自分で主体的に選択し、伸ばしていくことが重要になってきます。

企業の研修だけでは役に立たない。複数社でスキルを活用する前提で能力開発を考える

実際のところ、副業や兼業など複数社で働くような人材として、専門性を磨く、もしくは複数の専門性を獲得するには、通常の企業の研修の枠組みだけでは実現が難しいかもしれません。だからこそ、どのように個人の能力開発や育成をしていくかを、改めて考えていく必要があるのです。

例えば健康寿命が延びていくことで、今後は定年の延長や、定年を超えても働き続けるような長いキャリアを想定することができます。その長いキャリアの中では、一つではなくいくつかの専門性を身につけ、複数社で複数のスキルを活かして価値発揮していくことが当たり前になるかもしれません。
少なくとも、一社でキャリアを終えるような可能性は低い。つまり、勤労寿命が延びていく中では、単一のスキル、単一の組織のみでキャリアを終えることは難しくなっていくと考えられます。こうした前提で、自分の能力開発をとらえていく必要があるのです。

また働く目的を考えた時に、キャッシュのためだけではなく「能力開発のため」として稼働するプロジェクトのポートフォリオを組む必要があるといえます。どの仕事にどれだけ自分自身のリソースを割くかについては、単純に報酬のみで決めるのではなく、中長期的な能力開発やスキルの獲得を考慮に入れてプロジェクトを選択していくのです。

なお、元シスコの戦略ソリューション・事業開発ディレクターで、現在はウフル社の上級執行役員の八子氏は本メディアで、20代からのパラレルキャリアのススメとして、以下のように答えています。(【2026年のワークスタイル】第1回:研究職からコンサルタントへ―「20代からのパラレルキャリア」のススメ 八子知礼氏 https://nomad-journal.jp/archives/956

私は結果的にさまざまな経験を短期間で積むことができ、コンサルタントとしても応用が効きました。コンサルタントだけでなく、ビジネスパーソン全般にも同じことが言えると思うんです。できるだけ若いうちに、ちょっと毛色の違う業務・業界を経験しておくほうが良い。
それは必ずしも転職という手段だけではなく、1社の中で、5年程度のスパンでいろいろなことを経験させてもらうという方法でも良いと思います。自分の専門性というものはほとんど20代のうちに決まってしまうんじゃないでしょうか。

社外ネットワークの構築も、中長期的には重要な資産に

また、そのスキルや能力開発の一環で重要なものが、社外ネットワークの構築や社外プロジェクトへの参画です。個人が企業の枠を超えて、自分自身の成長を促す機会や環境を作るため、社外のネットワークを積極的に構築していく。そうすることで、多様なスキルや考え方、バックグラウンドの人材から刺激を得ることができます。

特に、長い間一社で働いている会社員にありがちな、属している会社のやり方を当たり前ととらえてしまったり、一社の中でのやり方に最適化してしまっている状況に対しては、このような社外のやり方に触れる機会を作ることは非常に効果的です。社外の人材と今までとは違うやり方や自分の知らない方法でプロジェクトを進めることが、複数社で働いたり、年齢も立場もバックボーンも違う多様な人材とプロジェクトを組成したり、連携して働いていく上でも重要になってくるといえるでしょう。

つまり、社外のプロジェクトなどで、一緒に働いていく機会をみつけていくことが、自分の能力開発の観点でも必要であると考えられます。このような取り組みの一つとして、本メディアでも紹介しているNPO法人の「二枚目の名刺」など、すでにいくつか社外プロジェクトで経験を積む機会を提供する取り組みが生まれています。

同法人が推進している「サポートプロジェクト」は、職種も業界も違う社会人がチームを組み、新しい社会を創ることを目指す団体(NPO法人等)と共に、戦略策定や新規事業開発、マーケティングなどといった団体の事業推進に取り組むための有期のプロジェクトです。(【パラレルキャリア】「二枚目の名刺」で社会を変える。 企業、NPO、社会人を結ぶプラットフォームづくり。NPO法人「二枚目の名刺」 https://nomad-journal.jp/archives/1052)こうしたプロジェクトに積極的に参加することで、キャリアを自らの力で切り拓いていくことが、今後、求められるようになってきます。

記事作成:川口 荘史

ノマドジャーナル編集部
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