少子高齢化やテクノロジーの革新などを背景として、「働き方」の変革が進んでいると言われています。個人のスキルや特徴、志向性を活かした多様な働き方を実現するにはどのような仕組みが必要なのでしょうか?働き方の多様化が進むことによって、個人が自分の潜在価値を最大限に発揮し、キャリアを戦略的に構築していく機会が増えていくことが期待されます。

これまでの連載で、働き方が変わっていく中での個人の戦略的なキャリア設計の重要性や、能力開発の考え方についてお話してきました。今回は、個人の中の自分の能力開発についての考え方の変化について考えてみたいと思います。例えば大企業は研修が充実していますが、だからといって自分の能力開発を会社任せにするのではなく、自分で主体的に考えてい捉えている人が増えているようです。

社員の能力開発は、企業が主導する時代から、個人が自発的に取り組む時代に

厚生労働省の能力開発基本調査(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/104-27b.pdf)によると、社員の教育訓練に関して、徐々に労働者の責任とする考え方が強くなっていることがわかります。(前回と比べて、企業の責任が0.2%減少、労働者の責任が0.5%増加)

こうした傾向からも、個人が自分の発達的支援を獲得する環境は、企業内に限定して論じることはもはや、限界にきている感があります。また背景には、個人と雇用者の心理的契約関係の変化もあるようです。つまり、会社に雇用されているという意識よりも、企業から独立して自分のキャリアを考えることに意識が向いているようです。特に最近は、大企業の就職について「企業研修が充実しているから、自分の成長にプラスに違いない」と多くを期待するような人は、ほとんどいないでしょう。自分の成長を会社の研修任せにするのではなく、教育訓練は労働者個人の責任であるという考え方の人も増えているのかもしれません。

なお、本メディアのインタビューでも、A.T.カーニーの梅澤会長が、「人生三毛作・二足のわらじ」の実現によって、「非連続のキャリアチェンジ」と「連続するスキル拡張」について語っています。(【”人生三毛作・二足のわらじ”を生きる】中編―「60年間存続し、飽きずに続けられる職業」は存在するのか? A.T.カーニー日本法人会長 梅澤高明氏 https://nomad-journal.jp/archives/1354

企業に任せるか、自分で考えるか。これからのキャリア設計について

ここでもう一度、厚生労働省の調査結果を見てみましょう。自分自身のキャリア設計についての考えとして、正社員では「自分で職業生活設計を考えていきたい」と「どちらかといえば、自分で職業生活設計を考えていきたい」を合わせると60%超(66.7%)。つまり過半数が、会社側に決められるのではなく、主体的に職業生活設計を考えたいとしています。

この結果からもわかるように、今後、自分の職業生活設計や能力開発については企業任せにするのではなく、個人が主体的に考えていくことが当たり前になっていくことでしょう。

※厚生労働省 能力開発基本調査(平成27年度)

記事作成:川口 荘史

ノマドジャーナル編集部
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