現代型クラウドファンディングの誕生のきっかけとして挙げられるのは、情報通信技術の発達、インターネット利用の普及です。ただ、これはあくまで実施のための前提条件が揃ったということに過ぎず、その実効性や資金調達の成功率を高めるためには、資金の受け手と出し手を繋ぐプラットフォームが必要となります。今回は、このプラットフォームの状況を紹介していきます。

プラットフォームの存在意義

総務省が公表した平成28年版情報通信白書によると、日本国内のインターネット利用人口は2015年末で1億46万人、パソコンやスマートフォンといった情報通信端末の世帯保有率は9割を超えています。
今では簡単なウェブサイトであればスマートフォンから作成できますし、twitter等のSNSを使った情報の発信と拡散も盛んになっています。誰でも全世界に向けて情報発信が出来る時代であり、これが現代型クラウドファンディングの素地にもなっているわけですが、無名の個人が徒手空拳から資金を集められるかというと話が別です。

個人で作成したウェブサイト上で資金を募ったとして、何人が閲覧するか、そのうち何人が資金を提供しようとまで思うか、有名人でもない限りクラウドファンディングを成功させることは難しいでしょう。
つまり、クラウドファンディングは情報を発信するだけで成立するものではなく、その情報を多くの人に目にしてもらうことが必要不可欠なのです。このためには、案件によっては資金を提供しても良いと考えている人がここを見れば自分が好む案件の情報が掲載されているという場を用意しておくことが効率的です。

資金提供を望む人と提供しても良いと考える人を繋ぐ場(プラットフォーム)があることによって、無名の個人でも実効性のある情報発信、資金調達ができるようになるのです。

プラットフォームの選び方

現代型のクラウドファンディングが広がっていく中で、国内でも多くのプラットフォームが誕生しています。それぞれに特徴がありますので、自身が考えるビジネスモデルに適したプラットフォーム上で資金を募っていくことが効果的です。

たとえば、日々の食事なんてカロリーさえ摂取できれば良い、毎日同じ内容の食事でも構わないと考えている人達に対して、美味しく体にも優しい料理を出す飲食店開業に向けた資金提供を募っても、なしのつぶて、暖簾に腕押しの結果に終わることは目に見えています。資金提供を募っていくならば、食生活にこだわりのある人、美味しい料理には目がないという人にアプローチしていく方が良いでしょう。プラットフォーム選びにも同じことが言えるのです。

・飲食に焦点を当てたプラットフォーム

先ほど例にした飲食店開業だと、「kitchenstarter」という飲食業界特化を謳ったプラットフォームがあります。
ここでは飲食店を開業したい創業者予備軍、新しいメニューや商品を開発したいと考えている経営者が自身のアイディアを掲載して資金提供を募っています。資金提供者に対してはお店の割引券、新商品の先行販売といったリターンがありますので、購入型のクラウドファンディングと言えます。
2015年の運営開始以降、順調に案件を積み重ねており、100万円規模の資金調達成功案件も現れてきています。また、食材を生産する側の農家による案件もあり、「飲食」の考え方が広いことも特徴的です。

・モノづくりに焦点を当てたプラットフォーム

食品の他、雑貨やコンテンツといった広い範囲のモノづくりに焦点を当てたプラットフォームでは「Makuake」が有名です。運営主体がIT業界大手のサイバーエージェントという信用力と認知度も相まって、1,000万円以上の資金調達に成功した案件もあります。
モノづくりの中でも新しいアイディアの実現を応援していくという色合いが強く、従来の投資の世界では埋没していたような案件、既存の大手企業が取り組んでこなかったニッチな案件が多いのも特徴的です。日本アカデミー賞の最優秀アニメーション作品賞の栄冠に輝いた『この世界の片隅に』の制作費もここで募られました。

・地域に焦点を当てたプラットフォーム

個別の業界や分野ではなく、「地域」という空間に焦点を当てたプラットフォームもあります。
 一例をあげると、北海道では「ACT NOW」が存在感を強めつつあります。こちらは、株式上場まで果たしていくような成長企業を北海道から生み出していくことをコンセプトにしたプラットフォームです。北海道産の米を原料にした日本酒の展開プロジェクト等、地域色の強い案件が多いのが特徴的です。

また、このような地域に焦点を当てたプラットフォームを全国展開したものとして、「FAVVO」があります。こちらは、株式会社サーチフィールドが運営主体となっていますが、地場の団体と提携することによって地域色を強めています。静岡県では静岡新聞がオーナー団体となった「FAVVO静岡」、奈良県では奈良信用金庫がオーナー団体となった「FAVVO奈良」といった具合です。

プラットフォームの差別化

インターネットを活用した現代型クラウドファンディングが普及して以降、国内でも多くのプラットフォームが誕生しましたが、その一方で早くも姿を消したものもあります。また、2015年に金融商品取引法の改正法が施行されたことで、諸外国に比べて遅れがちだった金融型クラウドファンディングに着手するプラットフォームも現れてきています。
今後は、特定の分野に焦点を当てた特化型、ベンチャー企業への投資を重視する金融型とプラットフォーム間での差別化が一層進んでいくのではないでしょうか。

記事制作/ミハルリサーチ 水野春市

ノマドジャーナル編集部
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