首都圏への人口・商業施設の集中からの脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、地方の企業はどのような事業展開を進めるべきなのか、北海道札幌市に住む筆者が北海道で開催された「地方創生」に関するイベントのレポートを行っていきます。

今回は1月17日・火曜日に開催された「北海道 経済・観光イノベーションフォーラム2017 ~観光と他産業による新たなビジネスチャンスを探る~」(主催/経済産業省北海道経済産業局、日本経済新聞社札幌支社、株式会社JTB北海道)のレポートを、登壇者ごと5回に渡ってお送りします。

最後の登壇者は、パナソニック株式会社東京オリンピック・パラリンピック推進本部の田中晴美さん。「観光×ICT 訪日外国人客への新たなソリューション・サービス」と題した講演を行いました。

ソリューション力を地方創生のためにフル活用する

現在パナソニックでは、1988年のカルガリーオリンピックから16大会に渡ってトップスポンサーとしてワールドワイドパートナー契約を結んできました。現時点で2020年の東京オリンピックまでスポンサードすることが決まっています。特徴としては、日本企業としては初めてパラリンピックのワールドワイドパートナー契約を結んでいることです。

パナソニックが貢献しているのは、大型映像とAVソリューションシステム。LEDを採用した大型映像表示装置の提供と、オリンピック開会式時のプロジェクションマッピングなどが挙げられます。

また、オリンピックは都市力を大きく向上させる可能性があると考え、パナソニックが持つソリューション力をフル活用することで地方創生に役立たせようとするものです。ICT技術によるソリューションで、パナソニック流の「おもてなしソリューション」を展開していきたいと考えています。

他業種とのコラボレーションでもICTを活用

東京オリンピックに関しては、交通利便性・アクセシビリティ・環境への配慮・コミュニーション・決済・安全・防災などの課題が挙げられています。そしてその課題を解決し、障碍者や超高齢化に対応した社会を築かなければなりません。そのために、パナソニックでは「5スマート・ネクスト3」という提案活動を行っています。

具体的には、さまざまなシーンで自動翻訳を提供するメガホン型多言語音声翻訳サービス「メガホンヤク」、カメラを活用して母国語へ情報を変換するスマートフォンアプリ「光ID」(2月に開催されるさっぽろ雪まつりで実証実験を行う予定)などを検討中です。すでに導入された事例としては、観光案内用デジタルサイネージ(東京都)があります。

また、JTBとの共同で訪日外国人観光客がストレスなく快適な旅を満喫できる環境整備を通じ、継続可能な新たなビジネス機会の創出を行っています。訪日外国人観光客の二大課題といわれているのが、「多言語コミュニケーション」と「大型荷物の持ち運び」です。この課題を解決するためのサービスとして、「LUGGAGE-FREE TRAVEL」というサービスを立ち上げました。海外で事前申し込み(JTBのサイト内で)をし、空港やホテルの端末で伝票を発行(クラウドサービスをパナソニックが開発)、手ぶらで日本観光が楽しめるというものです。

今後はモビリティ・シェアリングや保険・検疫などにもソリューションを展開し、ICTを活用した地域サービス提供のプラットフォームを確立していきたいと考えています。

取材・撮影/橋場了吾(株式会社アールアンドアール)

【専門家】橋場 了吾
同志社大学法学部政治学科卒業後、札幌テレビ放送株式会社へ入社。
STVラジオのディレクターを経て株式会社アールアンドアールを創立、SAPPORO MUSIC NAKED(現 REAL MUSIC NAKED)を開設。
現在までに500組以上のミュージシャンにインタビューを実施。
北海道観光マスター資格保持者、ニュース・観光サイトやコンテンツマーケティングのライティングも行う。

ノマドジャーナル編集部
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