訪日外国人300万人がAirbnbを利用!
2017年1月10日、石井啓一国土交通省大臣は閣議後の記者会見で、2016年の訪日外国人観光客数が推計で前年比21.7%増の2403万9000人となったことを発表しました。
民泊のAirbnb(本社:米国カリフォルニア州)Japanが2016年11月に発表したところによると、昨年の日本での外国人利用者は300万人を突破。この数字は世界の旅行客の1割が日本を訪れたということを示しています。また同時に、観光庁の目標である2020年の訪日観光客4000万人に向けてその達成のために重要な役割を果たしつつあるということを物語っています。この事実は、ホームシェアリングによる経済効果への好影響も示すとともに、地域経済の活性化、利益配分にも貢献しているといえるでしょう。
ここで少し、Airbnbについて見ておきましょう。2014年5月にAirbnb日本法人が誕生し、2015年11月段階でリスティング(物件)数は21000件になり、2015年1年間の外国人利用者数は130万人となっています。2016年11月時点で300万人という業績は拡大する訪日観光客のニーズにしっかり応えた結果といえます。ちなみに発表後の12月だけでも、予想の15.6%(30万人)増の約205万人のインバウンドがあったと言われ、オリンピックイヤーに向けてこの傾向は続きそうです。
訪日客数の大幅増に合わせ、国内ホストも急増中
Airbnbのデータ分析サービス会社BnB Insightでは、Airbnbの国内で掲載されている40000件以上のリスティング(物件)データを分析報告しています。この報告で、すでに国内ホストの数が2015年より倍増していることが分かります。国内には、Airbnbをはじめ、MINPAKU.Biz、民泊.com など、ホストのための情報提供を行い、さらなるホスト獲得と育成に力を注いでいます。
なお最近では、ホスト候補者も多様化してきています。子供たちが巣立ったためにできた空き部屋を活用したり、旅行に出かけている期間だけ空き部屋を活用したりなど、それぞれの事情があります。そこで民泊ホストの育成側としても、収入面をあまり追求せず人間同士のつながりを大事にしたいという部屋貸タイプのホストから、維持管理費だけでも稼げればいいという家主タイプ、さらには新たに中古住宅を買い取って貸し出し大きな売り上げを見込むオーナータイプというふうに、目的にあったホストのあり方の提案がなされるようになりました。
民泊を始める人が増える。その課題とは?
民泊を始めたいという人が増加する一方で、その具体的な方法や手続き面ではどのような体制ができているのでしょうか。民泊を始めたい人は、たとえばAirbnbのような検索サイトから入っていけば道筋が分かっていくでしょうが、日本ではまだ少し課題というべきものが存在しています。
その最大のものが法的な問題です。貸し手が事業として住宅を貸し、料金を受け取るには旅館業法の営業許可が必要になります。法律上は「ホテル」「旅館」「簡易宿所」「下宿」の4種に分けられていますが、民泊では営業許可を取っていないものもあるようです。個人が空き部屋を一時的に貸すのは営業とはいえないため営業許可がなくてもかまわないのですが、どの程度までならいいのかがわかりません。実際に住んでいる家を貸す場合はグレーゾーンですが、民泊用に確保した住居は旅館業法に触れると解釈されているようです。
基準をはっきりさせるため、新たに民泊営業を加えた旅館業法の改正が今年3月に閣議決定されました。この「住宅宿泊事業法」いわゆる「民泊新法」が実際に施行されるのは来年になってからのようです。
また、民泊新法以外でも、実際に民泊が稼働してからの騒音や差別の問題が世界で起きている現状は、日本でも他人事ではなく、現実的な問題になる可能性を秘めています。
新法施行後の市場の拡大と経済効果
新法の特徴としては、年間の営業日数は180日まで可能、家主の自治体への届け出が義務化される、標識の掲示や名簿作成の義務化などがあります。また、自治体が条例で営業日数の制限ができるという点が、立地による営業の仕方に影響を及ぼす可能性が出てきそうです。いずれにしても、都道府県の基準に合わせて登録を行い、営業制限を守れば、堂々と民泊ホストとしてやっていけるようになるわけですが、それによってまたさらなる経済波及効果が生まれるでしょう。
たとえば、180日ルール以外の稼働日を、新たに賃貸業と連携して運営するビジネスができるのも遠い話ではなさそうです。その流れでいけば、民泊施設の清掃事業など、既存の事業が民泊にからむことで市場規模を広げていくのは明らかです。日本国内で最も市場を作り出している民泊ビジネスひとつ取り上げてみても、シェアリングエコノミーに関係するシェアエコ・アラウンドの市場拡大の可能性は、ますます広がっていくように思えます。
取材・記事制作/ナカツカサ ミチユキ
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