既存のビジネスモデルや価値観が通じなくなってきた時代。
大手企業であっても経営再建に追い込まれたり、老舗企業であってものれんを畳まざるを得なくなったりしています。

そんな中、新規事業などに取り組む企業が、独自であったり、ベンチャー企業と提携したりして、様々なプロジェクトを興しています。
しかし、プロジェクトとは多くの場合、「未知」のものであり、リソースが限られており、複数のステークホルダーと共創・協働しなければならず、計画段階で描いた理想的なゴールを実現できるのはごく僅かです。
そのため、大半のプロジェクトは途中で挫折したり、計画とはかけ離れた成果しか出せなかったりしています。

このように変化を起こさなければならない状況下では、今勤務している会社がこの先も同じビジネスモデル、同じ体制・部署、同じ職種であり続けているとは言えないのではないでしょうか。

ここで少し、筆者が何者かについてご紹介させていただきます。
私はこれまで、自動車メーカーの販売店支援兼グリーンツーリズム事業、映画会社のeチケッティング事業、自治体の防災アプリ、保育園検索システム開発、育児情報と育児アイテムをひもづけたリサーチ事業、カメラメーカーとの写真整理アプリの研究プロジェクト、魚の離乳食的通販事業、テレビCM制作会社の動画制作アプリ事業などのプロジェクトマネジメントを行ってきました。

こうした業務を、時に受託、時に自ら起業して行う中、なぜプロジェクトはかくも失敗していくのか? という問いについて考えてきましたが、プロジェクトを予め与えられたゴールや立てた計画・施策、決めたルール通りに「マネージ=管理」していくことに限界を感じていました。

そこで、プロジェクトを進めていく中で高頻度に記録と振り返りを行い、戦略・施策に反映していく「エディット=編集」を行うことで、どうにかこうにかプロジェクトを進めていく方法論―『プロジェクト・エディティング』を考え、実践してきました。
(その結果、すべて大成功したと言いたいところですが、うまくいったプロジェクトもあれば、自ら起業して大失敗したプロジェクトもあります)

私は中学校卒業後、中国に留学し、大検を経て中国の大学に入学した後(専攻は歴史学)、就職活動という行為を知らないまま帰国し、出版社のアルバイト、日本語学校の事務局員、求人広告会社の営業、フリーランスのプランナーなどの職を転々としながら、いつしかプロジェクトマネジメントを生業とするようになりました。

まだインターネットも今ほどには普及していない時代、中国に留学した後のキャリア形成など、就職活動すら知らなかった私にとって、自分がどのように生きていくのかということは、まったくの「未知」でありました。

現在は様々なキャリア形成の事例・ロールモデルがあると思いますが、前述したように社会や人々の価値観が大きく変わる中にあっては、これからの仕事の内容、働き方もまた「未知」であると言えます。

こう考えると、プロジェクトの特徴である「未知」、「限られたリソース」、「共創、協働」は、そのまま今後のキャリア形成にも当てはまるのではないでしょうか。
『プロジェクト・エディティング』の考え方や方法論を、未知なるキャリア形成に活かせるのではないかという仮説のもと、まずはプロジェクト・エディティングとは何か? ということと、その活用アイデアを紹介していきます。

プロジェクト・エディティングとは

プロジェクト・エディティングとは、
「プロジェクトの進行中に遭遇した事象・情報・実施した施策などを素材、機会として捉え、記録し、編集することでプロジェクトを進めるための施策を創出していく方法」
です。
そして、そこからプロジェクト進行に有効なコンテンツを生み出したり、アライアンスを展開したりします。

特徴としては、「編集」という言葉を書籍や雑誌の編集という狭義の意味ではなく、広く下記のようにとらえています。

・プロジェクトは単線的に進むとは限らないと心がける
・遭遇、発見した事象や情報を素材として活用する(安易に見逃さず記録しておく。違和感を疎かにしない。)
・発見したものの背後に、それ以上のものが潜んでいないか考える
・事象や情報の間、それらとCSF(プロジェクトの主要成功要因)との間にひそむ関係がないか考える(関係線をひけないか考える)
・施策と事象や情報、CSFは、時間軸を持ち込んだマップでプロジェクト可視化し、進行確認、振り返るとやり易い
・CSFに至るための問題の階段を下げる(階段を一段追加する。補助問題をつくる)
・問題はバラす。問題の表現を変える。言い換えてみる
・事例の振り返りは、特殊値と普遍値で考える
・振り返りの際は、うまくいった事例は脱学習をかける(抽象化して、他の問題、提案に役立てられないか考える)

これはプロジェクト・エディティングの基本となる考え方でありますが、これをキャリア形成に当てはめて考えると、以下のような活用方法があると考えます。

(1)キャリアを棚卸して、自らの可能性について考える

・・・と書くと、よくあるキャリアコンサルタントのセリフのようですが、そんな決まりきったセリフで、webフォームに決められた情報を書き込むのではなく、より「編集的」な方法で行いましょう。

A.「年間振り返りシート」
体験した仕事、出会った人々、学んだモノゴトなどを可視化して、一年を振り返るシートです。

B.「Re歴書」
就職した会社の履歴を主軸で表現するのではなく、プライベートで関わってきたモノゴトもパラレルに表現する履歴書です。

(2)マイコンテンツをつくる

仕事でもプライベートでも自ら体験したモノゴトで、深く考え、実践したものをコンテンツ化する。コンテンツの姿がブログでも、プレゼン資料でも、イベントやワークショップのプログラムでも何でも構いません。他者(外部)に対して公開・発表できるものをつくります。
(私はこれで、カメラメーカーの仕事や、宣伝会議の講師の仕事をゲットしてきました)

この(1)と(2)のつくり方については次回以降の記事で詳しくご紹介していきます。
どうぞお楽しみに!

記事制作/前田 考歩

プロジェクトエディター(PE):前田 考歩
BtoB、BtoCを問わず、新規事業、サービスの企画立案から開始後の事務局運営が主要領域。
主な業務:PMの他、チームマネジメント、ナレッジマネジメント、アライアンス提案、営業、代理店開拓、イベント・ワークショップ、企画運営、リサーチ、ブログやホワイトペーパーの執筆、マニュアル作成など。
近年は「わかるの素、できるの型」をテーマに、様々な企業の自社商品の見込客発掘と育成を目的としたワークショップの企画設計を行う。
web動画、展示会、マーケティングオートメーション、メールマーケティングなどの分野で、宣伝会議、ドコモイノベーションビレッジ、中小企業基盤整備機構など数々の場で講座を開催中。

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。