多くの営業組織をみてきた営業のスペシャリストによる連載第16回です。

前回は最も効率のよい営業手法「フォローの大切さ」について「営業現場でどのように営業していくか」をお伝えしました。今回からは現場を離れて、営業管理について解説していきます。

合理的な案件管理がなぜ必要なのか

営業は現場では熱く、情熱をもって行わなければならないということは今までの記事でお伝えしたが、実際、受注に至るかどうか、どれくらいの数字が見込めるかは冷静に判断しなければならない。10の案件があったとして、全てに全力で取り組んだとしてもその全てを受注に至らせることは難しい。多くの商材で受注率は20%~30%程度であろう。

したがって色々案件がある中でどれくらい受注が上がるのかを冷静に見極めなければならない。

どの案件が受注し、どの案件が失注するのかを予測することはほぼ不可能である。

もちろん、可能性の高低は案件によってあるが、確度の高いと思われた案件も失注することがあり、逆もまた然りである。だから、個別案件ベースで売上予測を立てることはリスクが高いし、人は往々にして甘い予測を立てがちである。できるだけ実数に近い予測値をだすためには合理的な案件管理が必要である。

それがこれからご紹介する方法である。

売上にはわかりやすい方程式がある

「単価×受注数」である。

受注数をもう少し因数分解すると、「受注確率×案件数」となる。

相手が知人であろうが、紹介先であろうが、出会い方が違うだけでこの方程式であることに変わりがない。これを一覧で整理して売上見込を立てる。下図のように整理した上で案件ステータスが変わる度に受注確率と見込受注額を更新していく。

見込受注額×受注確率=見込売上となる。全案件の見込売上を合計すれば月末の売上予測が立つ。業種によっては売上でなく、粗利で管理しても良い。ただし、両方を同時に管理するのは図が煩雑になり、手間ばかりかかるのでオススメしない。

営業の流れは前述のとおりアプローチ→商談→再訪→クロージング→納品であり、進捗するにしたがって案件の確度が上がる。最初は想定でそれぞれのステータスでの受注率を設定するが、これは統計をとっておき正確なデータを元に確度を予測できるようにしておきたい。受注した顧客数をアプローチした全顧客で割ればアプローチ受注率が出てくるという具合である。

また、案件ステータスについては合理的・客観的に判断できる基準を作らないと正しく評価できない。例えば「商談」の定義は「訪問した際に価格を提示した上で結論日が顧客と共有できている」などである。この場合、見積もりは出したが、いつまでに発注の可否をもらえるかが決まっていなかったり、導入時期は決まっているが価格を提示していなかったりといったケースは「商談」にはならない。受注確度はアプローチのままである。またこの受注基準が適切であるかは定期的に見直したい。一度定義した後、運用してみると様々な基準の過不足が見つかるのが常である。

現場では熱く、オフィスでは冷静に

なぜ、このように厳密に運用するかというと感覚でやっているとその人の思考の癖にしたがって予測が甘すぎたり、辛すぎたりするからである。

実際、運用していくと上記のような定義をしても人によって甘かったり、辛かったりする。

私はどちらかと言えば慎重に案件ステータスを認識するタイプだったが、メンバーの中には「期限が決まっていれば商談だから、とりあえず期限を決めてしまえ」とばかりに一方的に「~円です。~までに結論をください」と言い放って「商談」として報告してくるメンバーがいた。当然、私とメンバーでは「商談受注率」が大きく異なることになる。

上記は極端な例だが、判断が含まれる問題であるがゆえに人による、またその人のコンディションによる判断のブレは生じてしまう。これを最小にする試みは十分に行われるべきだと考える。

現場では熱く、オフィスでは冷静に営業していただきたい。

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。
ノマドジャーナル編集部
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