多くの営業組織をみてきた営業のスペシャリストによる連載第15回です。

前回は具体的なクロージングの手法についてお伝えしました。今回は最も効率のよい営業手法についてです。

「フォロー」が営業プロセスの最後のステップ

お客様に商品を購入していただいた後は、活用方法を案内したり、細かな疑問に応えたりという「フォロー」が営業プロセスの最後のステップである。

が、営業をしている人に「受注後のフォローはどんなことをしていますか?」と聞くとたいていは「何もしていない」かそれに近しい回答が返ってくる。

その度に私は「なんてもったいないことをしているんだ!」と半ば憤りに近い気持ちになる。

「受注したらお客様のフォローをするのが当たり前」という倫理的な意味ももちろんあるが、それ以上にフォローは極めて効率的な営業活動だからである。

特に設立間もないスタートアップであれば営業に割ける工数は少なく、効率的に営業しなくてはならない。そうなれば通常は受注後はどんどん次の営業先を開拓したくなるものだが、そうすればするほど効率的な営業からは遠ざかっていく。

逆にフォローに力をいれることによって顧客の自社商品の活用度は上がり、より有効に利用していただくことができる。そうなれば「もっと使おう」ということになりリピートや関連商品の発注に繋がる。当然、その際競合他社からではなく自社から購入していただけることになる可能性は非常に高いだろう。また、顧客に成果を残せた営業であれば紹介をもらえる可能性も高まる。これはリピートが多い商材であっても単発受注が多い商材であっても同様である。

顧客満足も向上し、紹介での新規受注も増えるポイントとは

例えば、私の関わった会社で売り切りの営業をしている会社があった。受注後は納品で1度顧客を訪れた後、まず顧客とコンタクトを取ることはないという営業スタイルだった。

基本的にリピート受注がないような商材だったこともあり、同一顧客から二つ以上購入いただくことは極めて稀であった。そこで、フォローアップを定期的に行うスタイルに変更したところ、同社が扱う別商材の購入率が爆発的に伸びた。

それまで1社複数受注は全顧客の5%以下だったが、上記取り組みを初めて1年で30%まで伸びた。顧客満足も向上し、紹介での新規受注も増えることになった。

営業は信用が大事であると何度も述べているが、最も信用が高まっているのは受注~納品の間である。そこから何もしなければ信用は下がっていく。そこをフォローで維持・向上させるのだ。残念ながら大抵の顧客は営業のフォローに期待していない。単発受注系の商材であれば、受注前はさんざん「フォローします!」「なんでも聞いてください」と言うが、いざ発注してみると音沙汰なしで連絡してもなかなかつながらないという営業の方が多い。

競合よりも一歩進んだフォロー

また、ルートセールスであれば言ったことはやってくれるが、実際成果に繋がりそうな提案であったりアドバイスはしていない営業が多い。どんな商材でも最終的には経営課題と結びついているのであり、どれだけ川下の商材をあつかっていたとしても今より大きな課題に対してアドバイスや情報提供をすることで顧客は喜んでくれるし、喜んでくれるような情報提供をしなければならない。競合よりも一歩進んだフォローをすることが営業にとっての差別化なのである。

「フォローといっても何をしたらいいかわからない」という方もいるだろう。

フォローの一例を挙げておくので参考にしていただけたら幸いである。簡単なものから順に上げていくのでご自身の環境に合ったものをえらんでいただきたい。

購入後の顧客に「使い勝手」を聞く。きちんと使いこなせているかを聞く。使っていなければ「使えると思ってかったのに使っていない」理由、使っているのであれば「より使いやすくなるにはどうしたら良いか」を聞く。

→改善点が見つかるのであれば出来る範囲で改善案の情報を提供する。(自社商品で解決できるのであればそれこそ提案のチャンスだ)

・購入目的を踏まえた上でより使こなすための情報(マニュアルだったり、事例だったり)を提供する。

・使用目的を踏まえて1段階上の課題について情報提供をする。

→(例)商品POPのデザイン営業であれば売上を上げるための商品レイアウト案を(根拠情報を添えて)提供する。

・使用目的を踏まえて1段階上の課題について実際に提案する。

→(例)商品POPのデザイン営業であれば売上をあげるための商品レイアウト案をGOが出れば実行可能な段取りをしたうえで提案する。

※事前に上記フォローを通して担当者・会社の課題をヒアリングしておかないといけない。

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。
ノマドジャーナル編集部
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