多くの営業組織をみてきた営業のスペシャリストによる連載第11回です。

今回はリストアップとアプローチの具体的な手法についてお伝えします。

アップセル・クロスセルをまず考える

前回はターゲット設定について書いた。

(この記事では基本的に法人への営業を人が行うことを想定して書いている。近年のスタートアップがWEB集客以外の方法で個人向けに営業することはまずないだろうと思っている。)

「どんな相手にアプローチ」するのかおおよそ決まると次はリストアップとアプローチ方法を決めるステップだ。既存顧客がいる場合は既存顧客に対してアップセル・クロスセルをまず考えるとよい。

理由は簡単で「取引がある=信用がある=すぐに商談ができる」からだ。

なお、アップセルとは既に購入いただいている商品・サービスの上位版やオプションをご購入いただくこと、クロスセルとは既に購入いただいている商品・サービスの関連商品・サービスを販売することだ。もう少し広げて既存顧客に追加で商品を購入いただくことといっても良い。

スタートアップであればそんなに顧客数は多くないだろうからCRMなど使わなくても管理できるだろうが、既存顧客については定期的にアップセル・クロスセルができないか検討する時間を持ったほうが良い。社会的信用が決して豊富とはいえない自分たちが提案した商品・サービスを購入していただけた顧客である。サービスさえ良ければ導入してもらえる可能性は高い。

既存顧客に対する検討が終わったところからがリストアップ本番

ターゲット設定した顧客が「どこにいて何をしている人か?(業種と職種)」「連絡先は取得できるか」「どのようにしたら接触できるか?」「ターゲットは十分な数存在するのか?」を考慮する。

ここで2つ留意していただきたいことがある。

①「最初にやった方法は失敗する前提で計画を立てる」

営業戦略は「ターゲット設定・リストアップ・アプローチ手法・商談構築・クロージング・フォロー」という一連の流れからできている。そして最小は全て「想定」でしかない。

どれだけ「確からしい」情報でも確定した事実ではない。

であるから、この全てがうまくいくように最初から想定することは不可能であるといって良い。よく言われるように、PDCAサイクルを回す前提でどれだけ早く想定違いを見つけられるか、どれだけ早く修正できるかということを意識していただきたい。

②アプローチ可能かどうかまで考えてリストアップしないと失敗する

存在はするがアプローチする方法が限られる、連絡先は取得できるが数が少ないといった状態ではいざ営業を始めてもすぐに頓挫してしまう。

例えば「業種問わず従業員数1000名以上の会社の総務部長」といったターゲット設定すると「1000名以上の会社の総務部長の名前と連絡先」を取得しないとアプローチできない。セミナーを開く、テレアポで聞き出すなど方法はあるが、このリストを取得することはなかなかに困難である。

通常の商品であればターゲットにするのは避けるべきという結論になる。

「リストアップとアプローチ方法を決める」作業とは?

ただし、例外もある。次の項で解説する「行動指標」の設定とも密接に関わってくることでもあるが、得られる見込リターンが困難を克服するコストより高ければ実行する価値はある。

例えば1000人以上の会社の総務部長の情報を10社分集めるのに200時間・人かかるが、全件アポはとれる見込で半分は2ヶ月以内に受注でき、受注時平均粗利は100万円だ。ということであればやればいよい。この場合、一人の営業が動いたとしてリストアップに1ヶ月、営業に2ヶ月、粗利が500万円である。あくまでも見込の話だが、3ヶ月で500万円の粗利ならまずまずだろう。

また、アプローチ方法もスタートアップの場合はWEBや紹介に頼ることが多いかも知れないが、テレアポ・飛込・DM・折込・広告といった方法もある。

こうした手法の中でターゲットに対して「最も効率的にリストを獲得でき」「最も効率的に接触できる」手法を選ぶことが「リストアップとアプローチ方法を決める」作業である。

できる限りの手法を試し、効率を数値で測定し、最効率的な手段を選ぶ努力は決して楽な作業ではないが、丁寧にやることで大きな成果となって返ってくるだろう。

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。
ノマドジャーナル編集部
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