多くの営業組織をみてきた営業のスペシャリストによる連載第14回です。

前回はクロージングの考え方についてお伝えしました。今回は具体的なクロージングの手法についてです。

決断できない理由を取り除くには2つのステップが必要

クロージングとは「顧客が決断できない理由」を取り除くことだと前回、述べた。

では、具体的にはどのようなコミュニケーションをとると良いのだろうか?

顧客が決断できない理由を取り除くには2つのステップが必要だ。まずはその理由を見つけること、次にその理由となることを解消すること。

この2つのステップがあるということを認識してコミュニケーションをとっていただきたい。そして、「決断できない理由」は1つしか無いケースは稀で大抵の場合は複数あるということも重要だ。したがってクロージングのタイミングだと営業自身が感じた時、まずは全ての「決断できない理由」を引き出すことに注力しなければならない。

なぜ、「決断できない理由」を一つ一つ解消してはならないのか?

「決断できない理由」を引き出した後はそれを解消する作業となるが、ここは細心の注意が必要となる場面である。前述のとおり、クロージングが必要となる時点でスムーズに受注することには失敗しているから、受注には何らかの顧客との摩擦が必要である。

例えば、「決済者を説得する自信がない」「その商品が本当にメリットをもたらすか確信がもてない」「メリットは理解しているが、できれば先延ばししたい」など心理的な問題もあれば、「他社の条件の方が良かった」といった現実的な問題もある。

また、起業したばかりであれば会社としての信頼が薄く不安に思われているというケースは多いだろう。クロージングの際にはこういった顧客の言葉を否定しなければならないシーンが多々ある。

「自信がない」という顧客に対して「大丈夫ですよ」と励ましの言葉をかけることも顧客の言葉の否定である。これも前述の通り、顧客の言葉の否定は顧客の敵対心を煽ってしまうリスクがある。そうすると「決断できない理由」を引き出しにくくなってしまうからだ。

以前に述べた「ラポール」が崩れてしまうのである。当然、クロージングの際にはラポールが崩れるリスクや反感を買うリスクを負うべきタイミングはあるが、むやみやたらに反論して感情的な議論になってしまっては本来の「顧客に役立つ商品・サービスを適切に判断し、導入してもらう」という目的から遠ざかってしまう。

「決断出来ない理由」を引き出すためによく使う言葉とは?

営業であれば「決断出来ない理由」を聞くと反論したくなってしまうのは仕方ないが、そこを我慢して「決断出来ない理由」が出尽くすまで引き出し続けることが肝要である。

私がクロージングにおいて「決断出来ない理由」を引き出すためによく使う言葉は
「御社の意思決定はどのようにされますか?」である。

クロージングのトークはいくつもあり、ケースバイケースで使い分けなければならいないがこの意思決定のフローを聞くというのは関係性を破壊するリスクが少ない割に「決断出来ない理由」を引き出す効果が高い。

クロージングをかけているということは、会社として、担当者として意思決定していないということである。意思決定までの流れを想定することで、ネックに感じていることや検討しなければならない項目が浮かび上がってくる。

顧客が悩んでいる時は「決断できない理由を顧客自身が自覚している場合」「自覚していない場合」があるが、この質問はそのいずれでも対応可能である。

自覚しているケースであれば、率直に「ネック」を聞き出すことができるし、自覚していないのであれば「その理由を一緒に考える」ことができる。簡単に現在の顧客の状況と提案内容をまとめたうえで、判断軸を一緒に決めていく。判断軸に沿って再度、提案内容を見返すと判断できるという流れである。

その場で考える事自体に難色を示されることもあるが、その場合は前提として「判断は早いほうが良い」「検討事項が多いと他の仕事に差し支える」という点を伝える。判断が遅れれば、その分他社に遅れをとることになるので、その場で判断できることを判断せずに置いておくことは業務怠慢であると私は考える。

こうして、ネックになる点・検討しなければならない点が洗い出されたら、後はそのネックになる点を解消し、検討しなければならない点を明確化するだけである。この段階で「どうしても解消できない事由」が発生することもあるが、解消に最善を尽くしてなお、残るようであれば無理をせず、提案を引き下げた方が良い。

前述のとおり、「顧客のためになる」という確信なくして提案することは営業として最低限の作法であるが、確信して進めた結果、解消できないネックがあり、自分が誤っていたことが判明すれば、真っ先に改めるべきである。

今回は商談の最終ステップであるクロージングについて説明させていただいた。次回は営業フローの最終ステップであり、最初のステップでもある「フォロー」についてお伝えしようと思う。

特にスタートアップなど売上をとにかく上げないといけない状況下では、フォローを怠る営業が非常に多いが、フォローこそが最効率の営業であることは知っておいた方が良いと思われる。

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。
ノマドジャーナル編集部
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