これまで、採用活動に関して、どのようなHR Techの活用が可能なのか、どのようなサービスがあるのかをご紹介してきました。今回は、実際に企業がどうやってHR Techを活用しているのかにフォーカスしたいと思います。まずは、アメリカでの導入事例です。
Zappos.com社 × jobvite
SNSを活用したソーシャルリクルーティングをいち早く導入し、多くの企業に活用されているjobvite。FacebookやTwitterなどを活用して、素早くきめ細かな採用活動を可能にしています。
Zappos.comは、日本でもすでに有名な靴のオンライン通販会社です。現在はAmazon.comの傘下に入っています。Zappos.comを一躍有名にしたのは、顧客の立場に立った徹底的なサービスでした。マニュアル通りの接客ではなく、各社員に判断を委ね、よりふさわしいサービスを素早く提供しているのが特徴です。ザッポスは自分たちの企業文化や価値観を非常に大切にする会社で、報酬のためにいやいや働く人が退職しやすくする「採用辞退ボーナス(The Offer)」という制度があることでも知られています。
事業の急速な拡大に伴い、採用活動も活発に行われています。ただし、社員に大きな裁量を与えてサービスを行うザッポスでは、人材の採用には非常にシビアで、採用率はハーバード大学に入学するよりも難しいと言われるほどでした。求人の中心は社員による紹介というのが特徴的で、まずSNSを活用した求人が可能なjobviteを導入し、企業文化にフィットする人材を効率的に採用し始めました。ザッポスでは、jobviteは、「求人活動に全社員を関わらせることができる唯一の求人アプリケーション」であると評価されています。
なお、ザッポスは2014年に公募廃止を決め、現在では、「Zappos Insider(ザッポス・インサイダー)」という社員と求職者のサイトで求人活動を行っています。社員リソースを最大限活用して、企業にフィットする人材を募集する仕組みは、リファーラル採用がメジャーになってきた日本でも、とても参考になるでしょう。
jobvite:http://www.jobvite.com/
参考:http://www.jobvite.com/press-releases/2008/zappos-com-selects-jobvite-cost-effectively-power-talent-acquisition/
Van Andel Institute × SilkRoad Technology
SilkRoad Technology は、世界50カ国にわたり、さまざまな企業に導入されているクラウドHRサービスです。「人財管理(Talent management)からタレント活用(Talent Activation)へ」を掲げ、採用から研修まで効率的かつ効果的な人事を可能にし、大手の企業を顧客としています。
SilkRoadのサービスを導入した組織のひとつに、アメリカの医療研究機関「Van Andel Institute(ヴァンアンデル研究所)」があります。こうした研究機関では、employment brand(雇用ブランド、職場としての魅力)を高め、トップエリートを採用することが重要です。世界各国の名だたる大学から就職先として注目されているにも関わらず、申込者追跡システム(ATS)など古いシステムを長年つかっていたため、敏捷に採用活動が行えない難点がありました。
そこで、SilkRoad Technologyはまず採用活動システムをアップデートし、ユーザーフレンドリーで使いやすい最新のシステムを活用します。これによりヴァンアンデル研究所は、Web上に空きポジションをいち早く掲載したり、応募者や候補者の鮮明な画像を見ることができるようになりました。
SilkRoad Technology:http://www.silkroad.com/
参考:http://www.silkroad.com/hr-resource-center/van-andel-institute-case-study/
Robbins Brothers社 × POMELLO
Company Culture(企業文化)を数値化し、最適なマッチングを実現するサービスを提供するのがPOMELLOの特徴です。採用活動では、応募者に簡単なアンケートを取って資質や適正をチャート化し、希望する人材に近い人を選ぶこともできます。採用活動の効率化と適正化を同時に図ることができる点にメリットがあります。
小売りチェーン店のRobbins Brothersは、販売部長が適切な採用判断を下しているかどうかについて悩みを抱えていました。採用した人材が将来どんな仕事をしてくれるのか、チームと合うのかといったことについて、事前にもっと予想できればと考えていたのです。そこで、POMELLOのサービスを導入したところ、POMELLOが独自の方法で分析抽出した志願者のスコアと、入社後のセールスパフォーマンス(売上)とが比例していると判明。トップセールスパーソンとそうでない人との違いは、コアバリュー(価値観)にあるという結論に至ったということです。
採用企業と人材とがベストマッチングを果たすには、近年注目されているコア・バリュー経営が一つのポイントになることを示した例といえます。
POMELLO:https://www.pomello.com/
参考:https://s3-us-west-2.amazonaws.com/pomello-production-us-west-2/Robbins+Brothers+Case+Study_May2016.pdf
まとめ
人材不足が深刻化している現在では、ハイパフォーマンスな人材かつ企業風土やチームの雰囲気にフィットする人材を素早く見つけることが重要になります。その点で、採用をスピーディーに適正化できるHR Techを導入した企業は、確実に効果を上げているといえるでしょう。
次回は、採用活動におけるHR Techの日本での導入事例を取りあげてみたいと思います。
記事制作/神尾 マキ
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