さて、働き方変遷の概要もいよいよ現代に入りました。現代の最も大きな出来事は、アナログがデジタル化し、工場やオフィスの働き方が大きく変わったことです。その変化に伴い働き方にも多様性がでてきました。今回は、デジタル化になったことで仕事がどのように変化し、その結果、働き方がどのように多様化していったのかを見ていきたいと思います。

浸透するのが難しかったアナログからデジタルへの変化

20代~40代前半の人には、「デジタル」という言葉は生まれた時から、または子供のころから存在し、何の違和感もなく受け止められると思います。ですが、それ以前の世代にとって、アナログからデジタルへの変化は大きな出来事で、浸透するまでにかなりの時間がかかりました。それを示す笑い話があります。

海外に滞在していたある文科系の女性が電子辞書を購入したく、日本にいる両親に「電子辞書を買って送ってほしい」と連絡しました。その連絡を受けた父親は次のような質問をしました。「文科系なのになぜ電子関係の辞書が必要なのか?」
その父親にとって、一台の小さな機器に何冊もの辞書が投入された「電子辞書」は想像をはるかに超える物だったのです。

もう一つの笑い話は、デジタルカメラが市販されるようになった頃のことです。初めて買ったデジタルカメラを自慢げに友人たちに見せている人がいました。その友人の中の一人が質問しました。「フィルムはどこに入れるの?」と。
「フィルムのないカメラ」。そんなものが可能などとは想像できなかったのです。デジタルカメラが一般的な現在では、かえってフィルムがどんなものか知らない人も多いかもしれませんね。

デジタル化で大きく変わったコミュニケーション

デジタル化で最も大きな影響を受けたのはコミュニケーションの分野でしょう。一般に情報革命と呼ばれているものです。次の表は、1980年代と今日の情報処理の違いを比べたものです。

情報伝達・処理の変化により働き方に選択肢が生まれる

上記の表で一番はっきりしていることは、近年になると情報の伝達や情報処理が「世界中、ほどんどどこででもできる」ようになったことです。そして伝達をも一瞬のうちにできるという驚異的なスピードが、仕事の仕方までも変えました。

また、それまでは紙を媒体としてコミュニケーションを図っていましたが、電子化し、画面上で見たり共用したりできるようになったため、紙の使用が減りました。
情報革命により、世界のどこにいようが、電源とインターネットへのアクセスさえあれば、ほとんどの事務処理ができるようになったわけです。この情報革命から、これまでとは違った働き方の選択肢が生まれました。

会社に縛られないという選択

情報革命による最も顕著な働き方の変化は、「会社に行かない」という選択肢が生まれたことです。会社に行かなくても良い選択の中には2つのタイプがあります。一つは会社に雇われているが、自宅で仕事をし、連絡にはメールやビデオ会議を利用し、成果を会社に報告するタイプ。もう一つは、完全に独立し、自分のビジネスを持ち、在宅で仕事をするタイプです。

1つ目のタイプでは、会社との契約が成り立ち、雇用形態はそのままで、働く場所だけが変わったので、働き方全体としてはそれほど変わっていません。一方、2つ目のタイプは、起業ということになり、情報革命が生み出した全く新しい働き方と言えます。この働き方はフリーランス、ノマドワーカー、ネオニートなどと呼ばれています。職種で見ると、コンサルタント、ライター、デザイナー、プログラマー、インフォプレナー(情報提供業)、営業代行(トラベル、ショップなど)などが当てはまります。

まとめ

データのデジタル化ともない起こった情報革命。そして、そこから生まれた「会社に縛られない」という新しい働き方。これまでの日本型雇用形態を覆(くつがえ)す多様化した選択肢のある働き方ができる時代になりました。より自由に、より柔軟性を持って仕事を選択し、働ける時代になったのです。
次回からは、江戸の末期から今日までの働き方の変遷の中で、特に大きな意味を持った様々な事象についてテーマ別に探ってみたいと思います。

記事制作/setsukotruong

ノマドジャーナル編集部
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